ホーム > 砂糖 > 調査報告 > さとうきび > 与論島のさとうきびの生産を支える作業受託の取り組み
最終更新日:2017年2月10日
与論島の町繁一氏は、与論町ハーベスター連絡協議会会長として、島のさとうきびの生産を支える重要な役割を担っている。島の作業受託の先駆けとなるとともに、オペレーターの人材育成や継続可能な受託体制の整備など親子2代にわたりさとうきび生産への多様な取り組みを行っている。
(3)ハーベスタの導入へ
繁一氏は、収穫体系が手刈り中心からハーベスタに移行しつつある状況を踏まえ、平成17年に生産者組合「ユンヌ結さとうきび生産組合」(以下「組合」という)を設立し、ハーベスタ導入に踏み切った。島の言葉で「ユンヌ」とは与論島のこと、「結(ゆい)」とは、地域で集まって助け合うという意味であり、「与論島のみんなで助け合ってさとうきびを生産していこう」という願いを込めてこのような組合名とした。
ハーベスタを導入した当初、生産者から「ハーベスタによる土壌踏圧の影響で単収が下がるのではないか」といった不安の声が寄せられたというが、繁一氏の丁寧な仕事ぶりが生産者の信頼を得て、次第にハーベスタによる収穫が定着し、10年が経過した今では生産者から応えきれないほどの依頼が来るようになっている。
生産者からの依頼の中には、手刈り用で畦立てした圃場(注)であっても収穫時にハーベスタでの収穫に変更する場合もあることから、ハーベスタでも圃場に入りやすいよう生産者ごとに畦立てを工夫するなど細やかな対応をしている。現在の組合員数は18名、収穫受託面積は53ヘクタール(26年産実績)、保有機械はハーベスタ2台(うち組合1台、個人1台)、トラクター4台(組合1台、個人3台)、耕転機1台(個人)である。
(注)一般的に、手刈り用の畦幅は120センチメートル、ハーベスタ収穫用の畦幅は130センチメートルである。
(4)労働力確保と人材育成
繁一氏の受託概要は図6の通りであるが、1月から3月にかけて収穫作業と春植えの耕起・整地・畦立ての作業が重なり多忙を極める。特にハーベスタの作業においては、オペレーター1名、補助員2名の3名体制で実施する必要があることから、人材確保が課題となる。そのため、補助員の勤務時間を午前・午後と短く時間を区切ることで短時間でも手伝ってもらえるよう人材確保に努めている。
現在の労働力は、常時雇用として平成28年からUターンで戻ってきた同級生1名の常時雇用者と約20名(うち3名がハーベスタのオペレーター)の臨時雇用者である。
今回の取材を通じて、さとうきびの生産への関わり方は多種多様であることが改めて理解できた。トラクターによる受託専門業者として起業した繁栄氏、その父の背中を追ってハーベスタ導入に踏み切った繁一氏の取り組みの背景や情熱を知るにつれ、さとうきびの生産が与論島の人々にとって、いかに重要であり、いかに大切にされてきたものであるかを肌で感じた。「結」により関係者の皆さまが協力し合い、新たに始めた人材確保や調苗班の取り組みに今後も注目をしていきたい。
そして、いつの日か、繁一氏が生産者として十二分に取り組める環境が整った暁には、その話を伺える機会を持てることを楽しみに待ちたい。
今回の取材にあたり、ご協力いただきました町繁栄様、繁一様、与論島製糖光事業所次長、与論町産業振興課山下主幹兼係長、あまみ農業協同組合(与論事業本部)吉井満秀係長、関係者のみなさまに感謝申し上げます。
【参考】
鹿児島事務所、那覇事務所「平成28年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要〜地域の実情に合致したさとうきび増産体制の取り組み〜」『砂糖類・でん粉情報』(2017年1月号)