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4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年2月時点予測)

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最終更新日:2017年3月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年2月時点予測)

2017年3月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.14−110)および甘しゃ糖・その他(同1701.14−200)の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2016年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が52.2%(前年比13.2ポイント増)、タイが47.7%(同8.3ポイント減)と、この2カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。
 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はフィリピンを報告する。
 

豪州

2016/17年度の砂糖生産量はやや増加するも輸出量はやや減少の見込み
 2016/17砂糖年度(7月〜翌6月)は、サトウキビ収穫面積は39万ヘクタール(前年度比3.2%増)とやや増加し、生産量は3550万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれている(表6)。

 一方、豪州砂糖製造事業者協議会(ASMC)によると、例年10月で終了するサトウキビ圧搾作業が、年明け(1月8日)まで行われ、サトウキビ圧搾量は3651万トンとなった。これは、ニューサウスウェールズ州や主産地であるクイーンズランド(QLD)州の一部の地域で降雨が続いたことが影響したとみられる。現地報道によると、QLD州北部地域のマッカイでは、過度な降雨による生育不良などから約6万トンのサトウキビの収穫が来年度に持ち越されることとなり、サトウキビ圧搾量が当初計画の7%減となった工場があった。

 
サトウキビの増産に加え、製糖歩留まりの向上も見られることから、砂糖生産量は523万トン(前年度比5.8%増)と、やや増加が見込まれている。一方、中国の輸入減少などに伴い、輸出量は400万トン(同3.8%減)と、やや減少が見込まれている。

 
豪州農業資源経済科学局(ABARES)が201612月中旬に公表した2016/17年度の生産予測によると、サトウキビ栽培面積は39万ヘクタール(同3.1%増)とやや増加し、単収の増加により、砂糖生産量は510万トン(同3.7%増)とやや増加が見込まれる。輸出量も405万トン(同2.7%増)と、わずかな増加が見込まれる。

 現地報道によると、QLD州野党である自由国民党連合は2月初旬、
2017/18年度以降の新たな輸出契約について、QLD州砂糖公社(QSL
(注)と製糖企業1社に対し、2月中を目途に決着させるよう要請した。当事者間の協議が整わない場合にあっては、両者間の調停を強制的に執行できるよう砂糖産業法の改正案を提出する構えを見せている。これに対して、ASMCは、このような介入は、QLD州の砂糖産業への投資の停滞や製糖企業の経営の妨げにつながるとして懸念を示している。

(注)QLD州産砂糖の輸出を担う公社。同州産砂糖輸出の9割を扱っていたが、2015年の砂糖産業法改正により、2017/18年度以降、製糖企業を介してQSLが輸出する従来の形態に加え、砂糖を輸出する企業を生産者が選択できるようになった。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2016/17年度の砂糖生産量は前年度並み、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビ収穫面積は141万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みと見込まれる一方、サトウキビの単収の増加が見込まれることから、生産量は1億436万トン(同11.0%増)と、かなりの増加が見込まれている(表7)。

 しかし、長引く干ばつの影響により特に新植サトウキビの生育不良が見られることに加え、長雨により例年より約1カ月遅れの12月上旬からの収穫となったことから、製糖歩留まりの低下が予想され、砂糖生産量は、1000万トン(同0.2%減)と前年度並みと見込まれている。輸出量は、中国の輸入減少などに伴い、703万トン(同10.0%減)と、かなりの減少が見込まれている。

 一方、タイ農業協同組合省農業経済局が先ごろ発表した主要農産物の生産見通しの中で、2016/17年度のサトウキビ収穫面積は、政府による生産者への適地適作の奨励や製糖企業によるサトウキビ栽培への転作促進により、145万ヘクタール(同1.8%増)とわずかな増加が見込まれている。また、生産量は、1億515万トン(同11.7%増)とかなりの増加が見込まれている。これは、サトウキビ生産者の肥培管理などの技術の向上により、単収の増加が見込まれていることなどが要因とされる。砂糖生産量も1094万トン(同11.8%増)とかなりの増加が見込まれており、これに伴い、輸出量も844万トン(同17.4%増)と大幅な増加が見込まれている。

 政府は1月、民間企業と共同で、2017/18年度から今後10年かけて同国のバイオ産業を発展させる計画を発表した。同計画では、総額4000億バーツ(1兆3280万円(2017年1月末日TTS:1バーツ=3.32円))近くが投資され、3段階に分けて展開される。第1段階では、まずはバイオ燃料の生産拡大に向け、約510億バーツ(1693億円)が投資され、東部のラヨーン県や北東部のコーンケーン県に精製工場の新設などが予定されている。

 さらに、政府は、バイオ製品の原料となるサトウキビやキャッサバの確保のため、コメからの転作を引き続き積極的に奨励する意向を示しており、計画期間中にサトウキビ栽培面積を256万ヘクタールに拡大することを目標としている。

 また、政府は、2017/18年度からの適用を目指し、砂糖産業関連法の改正(注1)に向けた手続きを開始した。 この改正によって、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する現行の収益分配方式や販売割当(注2)を廃止するとともに、政府が設定している国内砂糖価格を固定制から変動制に移行するものとみられる。なお、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注3)によれば、変動制は、遅くとも2018年4月までに開始されるとしている。

(注1)タイ政府は2016年4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。これを受け、タイ政府は同年11月3日、ブラジルとの2国間協議の場に、同年10月中旬に閣議承認された砂糖政策の改革案を提出した。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当に基づき管理されている。
(注3)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省(製糖関係)、農業協同組合省(原料作物関係)、商務省(砂糖の売買関係))とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量は大幅減の見込み
 2016/17年砂糖年度(9月〜翌8月)は、サトウキビ収穫面積が42万ヘクタール(前年度比0.4%増)、生産量が3062万トン(同0.7%減)と、ともに前年度並みと見込まれている。しかし、製糖歩留まりの低下が見られることから、砂糖生産量は220万トン(同1.7%減)とわずかに減少が見込まれている(表8)。

 一方、砂糖統制委員会(SRA)(注)は、2016/17年度の砂糖生産量を225万トン(前年度比0.6%増)と見込んでいる。また、SRAは2月初旬、国内供給の安定化を図るため、同年度の国内供給向けの砂糖の割当数量を砂糖生産量の92%から同94%に引き上げることを決定した。これにより、砂糖の輸出は特恵的な関税枠を有する米国向けのみとなり、砂糖輸出量は、14万トン(同16.7%減)と大幅な減少が見込まれている。

 また、SRAは1月、国営のフィリピン土地銀行と連携し、サトウキビ産業振興法に基づくプログラムの一環として、総額3億フィリピンペソ(7億2900万円(2017年1月末日TTS:1フィリピンペソ=2.43円))をサトウキビの生産支援や機械の導入などへの融資の財源に充てることを決定した。近年、政府は、小規模生産者が集落単位で共同体を形成し、労働力や機械の共同化を図ることでサトウキビの生産性向上や収益確保を目指すブロックファーミングを推し進めている。SRAに登録されているサトウキビ生産者や大規模農園の協同組合などであれば、この融資の対象となる。

(注)砂糖の供給管理政策など国内砂糖産業の管理・監督などを実施する政府機関。

表8 フィリピンの砂糖需給の推移

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