クアンナム省ホイアンから車で1時間ほどのクエソン村にて18年前に採録した、現地で「ドン・バ」と呼ばれる半円球状の分蜜しない砂糖の製造法を紹介しよう。
伝統的な手工業的砂糖生産工房(以下「工房」という)のオーナーであるヌエン・ヴァン・トゥオングさんは、おじいさんの代からドン・バの製造を始めた。父親の代まで圧搾機の動力源は、牛を動力としていたが、現在はモーターを使用している。また、5年前に釜を三つから五つに増やした。
この工房では、同氏が所有する
圃場のサトウキビからドン・バを製造するだけではなく、近隣の農家に機材一式を貸し出して、ドン・バの製造が行われている。
同氏によると、1999年は、2月中旬からドン・バの製造を始め、4月下旬に終わる予定とのことであった。
[製造工程]
(1) モーターで圧搾機のローラーを約30分間回転させて、1回分(1鍋分)のサトウキビを圧搾する。
(2) 1列に五つの鍋が並んだ釜の一つ目の鍋に、サトウキビの搾り汁を入れて煮詰めていく。約10分すると一つ目の鍋が沸騰してくる。それを二つ目、三つ目、四つ目、五つ目の鍋に入れて約20分間加熱していく。
(3) 煮詰め上がった濃縮糖液を、三つの桶に分け入れ、3人がそれぞれの桶を抱え込むようにして、すり鉢にすりこ木を当てる要領で攪拌していく(
写真2)。結晶が析出し、冷めるにしたがって粘度が増してくる。かき混ぜている時間は5分強だった。