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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年5月時点予測)

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最終更新日:2017年6月9日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年5月時点予測)

2017年6月

ブラジル

2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み
 英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する大手民間調査会社)の2017年5月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含まれたため、905万ヘクタール(前年度比4.6%増)とやや増加が見込まれているものの、サトウキビの新植が進まず単収は低下するため、生産量は6億5718万トン(同1.3%減)とわずかな減少が見込まれている(表2)。

 一方、砂糖生産量は、国際砂糖価格の上昇により、企業がサトウキビを砂糖へ仕向ける割合が増加したことに加え、製糖歩留まりが向上していることなどから、4053万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同15.2%増)とかなりの増加が見込まれている。こうした砂糖の増産に伴い、輸出量は過去最高の2874万トン(同14.4%増)とかなりの増加が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、884万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少し、生産量は単収の増加から、6億4763万トン(同1.5%減)の減少にとどまると見込まれている。

 このため、砂糖生産量も、4070万トン(同0.4%増)と前年度並みにとどまると見込まれる。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、国際的な砂糖の輸入需要の緩やかな減少に伴い、2870万トン(同0.1%減)と見込んでいる。

 2017/18年度の生産見通しについては、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)が4月18日、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)が4月26日、それぞれ公表している。

 なお、UNICAが発表した2017年4月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は4171万トン(前年同月比39.7%減)、砂糖生産量は183万トン(同43.8%減)と大幅に減少している。これは、天候不順により収穫が遅れていたことに加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が43.8キログラム(同6.9%減)とやや減少しているためとみられる。同報告によると、エタノール生産量も、162万キロリットル(同41.9%減)と大幅に減少した。一方、輸出量も含めたエタノールの販売量は、173万キロリットル(同2.8%増)となった。このうち、含水エタノール(注)の国内販売量は、エタノール価格が下落してきたことから、前年度並みの96万キロリットルに回復した。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、同月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.44レアル(85円〈4月末日TTS:1レアル=35円〉)と前年同月の同2.56レアル(90円)に比べ、下落した。

 また、UNICAは5月22日、同日に中国政府が砂糖の輸入関税の引き上げを発表したことを受け、今後12カ月間のブラジル産砂糖の中国向け輸出量が、当初予測の300万トンから220万トンに減少するとの見通しを示した。今後、ブラジル政府は、中国政府との協議の進展によっては、WTOにパネル(小委員会)の設置を要求する可能性もある。

 現地報道によると、政府は5月上旬、6月までエタノールの輸入関税(20%)の2010年来の再導入を検討することを明らかにした。政府は、北東部の砂糖エタノール製造企業から、国内のエタノール生産量の減少などにより、米国からのエタノール輸入量が急増している状況を受け、国内産業の保護を要請されていた。しかし、再導入した場合、国内のエタノール価格が高騰するとともに、世界のエタノール貿易に影響を与え得ることから、慎重に検討することとしている。

(注)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの団体別生産見通し

(参考)ブラジルの団体別生産見通し

インド

2016/17年度の砂糖生産量、輸出量ともに大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は474万ヘクタール(前年度比6.2%減)、生産量は3億3193万トン(同7.5%減)と、ともに干ばつの影響によりかなりの減少が見込まれている。さらに、砂糖生産量も、2210万トン(同19.3%減)と製糖歩留まりの低下により大幅な減少が見込まれている(表3)。インド砂糖製造協会(ISMA)が3月初旬に発表した見通しによると、1〜2月にかけてマハラシュトラ州やカルナタカ州などで当初の予想以上に単収が低下していることなどから、同年度の砂糖生産量は、精製糖換算で2030万トンと見込まれている。

 中央政府は、砂糖の減産により2015年末から国内の砂糖価格が高騰していることを受け、国内市場での砂糖の流通量を増やし、価格の安定化を図るため、2016年6月中旬以降、砂糖の輸出(粗糖を輸入して6カ月以内に再輸出する精製糖や2500トンのオーガニックシュガーを除く)に対し、輸出関税(20%)を導入している。さらに、4月中旬には、貿易業者に対する砂糖在庫量の上限の設定期限を2017年4月末から同年10月末まで延長することを公表した。これらにより、砂糖輸出量は、165万トン(前年度比59.9%減)と大幅に減少し、砂糖輸入量は、212万トン(同11.1%増)とかなり増加すると見込まれている。

 中央政府は4月、6月30日までに輸入される粗糖50万トンについて無税での輸入を許可することを公表した。当該措置は、干ばつにより砂糖生産量が大幅に減少し、消費量を下回ると見込まれること、また、マハラシュトラ州の製糖企業らによる再輸出用粗糖100万トンの輸入申請が行われたことなどを受けて実施されることとなった。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2016/17年度の砂糖生産量はやや増加、 輸入量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、収穫面積が183万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量が1億2652万トン(同7.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている(表4)。これは、最大生産地域である広西チワン族自治区や海南省における栽培面積の増加と良好な生育状況が要因である。

 てん菜についても、収穫面積は15万ヘクタール(同10.0%増)とかなり増加し、生産量は771万トン(同5.0%増)とやや増加が予想されている。これは、主要生産地である内モンゴル自治区の増加などが要因である。これらにより、砂糖生産量は、992万トン(同4.8%増)とやや増加が見込まれている。

 また、中国砂糖協会(CSA)が発表した2016年10月〜翌4月の生産実績報告によると、砂糖生産量は精製糖換算で915万トン(前年同期比7.0%増)とかなり増加した(図3)。これは、サトウキビおよびてん菜の栽培面積拡大により、甘しゃ糖が810万トン(同5.1%増)、てん菜糖が105万トン(同24.7%増)と、ともに増加したことによる。

 さらに、中央政府は1月、備蓄砂糖約25万トンを国内企業へ売り渡した。これにより、2016年10月から4回の入札が実施され、1月時点で合計約65万トンが売り渡されたこととなる。CSAは2016/17年度に200万トン程度、2017/18年度も同程度の備蓄砂糖の放出を見込んでいる。このため、砂糖輸入量は、452万トン(前年度比27.1%減)と大幅な減少が見込まれている。

 中央政府は5月22日、2016年9月から実施した砂糖の輸入先国によるダンピング疑惑の調査(注1)の結果を踏まえ、2016/17年度中に、WTO協定に基づく関税割当(194万トン、関税率15%)の枠外で輸入される砂糖の関税率を、現行の50%から95%まで引き上げることを公表した(注2)。 この引き上げられた枠外輸入関税率は、毎年度5%ずつ引き下げられる予定であるが、ブラジルなどの主要輸入先国に対する影響やミャンマーなどからの「非公式な」砂糖の流入および第三国経由での輸入増加が懸念されている。

(注1)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に影響が生じているとして実施した調査であり、対象は、輸入量が急増した2011年以降で、粗糖の上位輸入先国であるブラジルおよび豪州ならびに精製糖の主要輸入先国である韓国などが対象国となっていた。
(注2)フィリピンやパキスタンといった従来中国と関係の深い貿易相手国などは、対象外とみられている。

表4 中国の砂糖需給の推移

図3 中国の砂糖生産実績(10月〜翌4月の生産量)

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、 輸入量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜収穫面積が159万ヘクタール(前年度比10.8%増)、生産量は1億1218万トン(同6.7%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている(表5)。2017年10月以降の生産割当廃止を目前に、生産量上位国であるフランスやドイツでは、在庫増への懸念から栽培面積の拡大に慎重になっているとみられる一方、ポーランドやオランダなどでは栽培面積を前年度から約2割増加させるなど、積極的に増産する動きも見られている。記録的な生産量となった前々年度に比べ、春先の低温や降雨のため単収が低下すると見込まれているものの、前年度と比べて産糖量の増加が見込まれていることなどから、砂糖生産量は、1694万トン(同12.8%増)とかなりの増加が見込まれている。砂糖の増産や域内の砂糖価格の下落に伴い、砂糖輸入量は、272万トン(同27.5%減)と大幅な減少が見込まれている。

 欧州委員会は、EU市場の砂糖供給量不足を解消するための一時的な輸入関税引き下げ措置の実施に関する決議案について、砂糖業界の反対を受けて取り下げた。欧州砂糖製造者協会(CEFS)や欧州てん菜生産者協会(CIBE)など業界団体6者は4月24日、共同で声明を発表し、ブラジルなどからの砂糖輸入量の減少は、過年度にわたり域内の砂糖在庫量が高水準にあったことによる砂糖価格の低下が要因と考えられ、生産割当廃止以降も増産に伴う価格下落が予想されている中での一時的な措置の導入は、市場への影響を予測できない「無謀な賭け」であり、域内の砂糖産業が続けてきた長年の努力に対する「裏切り行為」になり得ると強く非難していた。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見込みおよび生産割合

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