2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み
英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する大手民間調査会社)の2017年5月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含まれたため、905万ヘクタール(前年度比4.6%増)とやや増加が見込まれているものの、サトウキビの新植が進まず単収は低下するため、生産量は6億5718万トン(同1.3%減)とわずかな減少が見込まれている
(表2)。
一方、砂糖生産量は、国際砂糖価格の上昇により、企業がサトウキビを砂糖へ仕向ける割合が増加したことに加え、製糖歩留まりが向上していることなどから、4053万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同15.2%増)とかなりの増加が見込まれている。こうした砂糖の増産に伴い、輸出量は過去最高の2874万トン(同14.4%増)とかなりの増加が見込まれている。
2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、884万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少し、生産量は単収の増加から、6億4763万トン(同1.5%減)の減少にとどまると見込まれている。
このため、砂糖生産量も、4070万トン(同0.4%増)と前年度並みにとどまると見込まれる。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、国際的な砂糖の輸入需要の緩やかな減少に伴い、2870万トン(同0.1%減)と見込んでいる。
2017/18年度の生産見通しについては、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)が4月18日、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)が4月26日、それぞれ公表している。
なお、UNICAが発表した2017年4月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は4171万トン(前年同月比39.7%減)、砂糖生産量は183万トン(同43.8%減)と大幅に減少している。これは、天候不順により収穫が遅れていたことに加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が43.8キログラム(同6.9%減)とやや減少しているためとみられる。同報告によると、エタノール生産量も、162万キロリットル(同41.9%減)と大幅に減少した。一方、輸出量も含めたエタノールの販売量は、173万キロリットル(同2.8%増)となった。このうち、含水エタノール
(注)の国内販売量は、エタノール価格が下落してきたことから、前年度並みの96万キロリットルに回復した。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、同月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.44レアル(85円〈4月末日TTS:1レアル=35円〉)と前年同月の同2.56レアル(90円)に比べ、下落した。
また、UNICAは5月22日、同日に中国政府が砂糖の輸入関税の引き上げを発表したことを受け、今後12カ月間のブラジル産砂糖の中国向け輸出量が、当初予測の300万トンから220万トンに減少するとの見通しを示した。今後、ブラジル政府は、中国政府との協議の進展によっては、WTOにパネル(小委員会)の設置を要求する可能性もある。
現地報道によると、政府は5月上旬、6月までエタノールの輸入関税(20%)の2010年来の再導入を検討することを明らかにした。政府は、北東部の砂糖エタノール製造企業から、国内のエタノール生産量の減少などにより、米国からのエタノール輸入量が急増している状況を受け、国内産業の保護を要請されていた。しかし、再導入した場合、国内のエタノール価格が高騰するとともに、世界のエタノール貿易に影響を与え得ることから、慎重に検討することとしている。
(注)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。