鹿児島県における平成28年産さとうきびの生産状況および実績について
最終更新日:2017年7月10日
鹿児島県における平成28年産さとうきびの生産状況および実績について
2017年7月
【要約】
鹿児島県の平成28年産さとうきびは、収穫面積1万20ヘクタール(前年比98.5%)で、生産量63万6217トン(同126%)であった。
台風などの大きな気象災害もなく、天候にも恵まれたことから、6年ぶりに60万トンを超え、平均糖度が前年を0.12度上回る13.98度と量・質ともに充実した年となった。
1.さとうきびの位置付け
さとうきびは、他作物に比べて、台風や干ばつに強く、鹿児島県南西諸島の7割強の農家が生産している基幹作物であり、製糖会社とともに、地域経済を支える重要な役割を担っている。
さとうきびの平成27年農業産出額は、約110億円(前年比110%)で、耕種部門の第4位となっている(1位:米、2位:さつまいも、3位:茶〈生葉〉)。
鹿児島県では、18年6月に27年産を目標年とする「鹿児島県さとうきび増産計画」を策定し、生産者、製糖会社、関係機関・団体と連携しながら、栽培面積の確保や単収向上などの取り組みを進めてきた。
しかし、23年産以降、台風などの気象災害や病害虫被害などにより、同計画で定めた目標を達成できない状況が続き、早期の生産回復・増産に向けた取り組みが課題となっていたことから、各島ごとに、これまでの計画達成状況を検証・評価するとともに、現状における課題およびその解決方策などを整理し、27年12月に新たに37年産を目標年とする計画として改定し、各般の施策を推進しているところである。
2.平成28年産さとうきびの生育状況
(1) 種子島地域
ア 生育初期〜分けつ
生育初期は、比較的、気温・日照・降水条件に恵まれ、適期の植え付け(春植え)や萌芽が良い早期株出し管理圃場では、おおむね順調に生育した。6月初旬までは、生育は遅れ気味で、茎数も平年に比べて少なかった。
イ 伸長期
気温は高めで多照、少雨で経過し、茎伸長は平年を上回って推移した。
ウ 登熟期
10月の降雨による倒伏などにより受光態勢が悪くなるなど登熟が進まなかったが、11月下旬には平年並みまで登熟が進んだ。
翌1月には常霜地帯を中心に降霜が発生した。
(2) 奄美地域
ア 生育初期〜分けつ
生育初期は、比較的、気温・日照条件に恵まれ、おおむね順調に生育したものの、島ごと、栽培型ごとにばらつきが見られた。また、一部ではメイチュウなどの被害も散見された。
イ 伸長期
台風などの大きな気象災害もなく順調に生育し、茎伸長は平年を上回って推移した。
ウ 登熟期
生育は良好で登熟も順調に進み、島ごとにばらつきはあるものの、全体的に糖度は上昇した。
3.平成28年産さとうきびの生産実績
(1) 県全体
収穫面積は1万20ヘクタール(前年比98.5%)、生産量は63万6217トン(同126%)となり、10アール当たり収量は6349キログラム(平年比112.8%)であった(
図1)。
生産量、10アール当たり収量ともに、さとうきび増産計画の目標(平成28年産)を1割強上回った。
なお、生産量の99%(63万187トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場で集荷されている。
栽培型別の収穫面積は、春植えが1786ヘクタール(構成比18%)、株出しが6946ヘクタール(同69%)、夏植えが1288ヘクタール(同13%)であった。さとうきび増産計画における株出し割合の目標は66.2%で、実績が目標値を約3ポイント上回っている(
図2)。
品種別の収穫面積は、農林8号が43%を占め、次いで農林23号の22%、農林22号の15%、農林17号の3%の順であった。平成16年産で約7割を占めていた農林8号の比率が年々減少し、各地域の気象条件などに適した新しい品種への移行が進みつつある(
図3)。
(2) 各島の状況
ア 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)
収穫面積は2404ヘクタール(前年比96%)で、生産量は15万8580トン(同127%)となり、10アール当たり収量は6597キログラム(平年比98%)であった。
株出し比率は67%で、品種別では、農林8号が74%、早期高糖性の農林22号が16%を占める。
イ 奄美大島(奄美市外3町村)
収穫面積は589ヘクタール(前年比96%)、生産量は2万9302トン(同135%)で、10アール当たり収量は4971キログラム(平年比108%)と、島別では最も低い収量となった。
株出し比率は68%であり、品種別では、農林22号が33%、農林23号が24%、農林17号が16%を占める。
ウ 喜界島(喜界町)
収穫面積は1430ヘクタール(前年比107%)、生産量は9万6712トン(同129%)となり、10アール当たり収量は6763キログラム(平年比110%)であった。
株出し比率が63%を占める一方、夏植えの比率も27%と高い。品種別では、農林23号が35%、農林8号が25%を占める。
エ 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)
収穫面積は3587ヘクタール(前年比96%)で県全体の36%を占め、島別では最も多い。生産量は22万2539トン(同132%)と前年産から大きく増加した。10アール当たり収量は6204キログラム(平年比124%)であった。
株出し比率は73%で、品種別では、農林8号が38%、農林23号が34%を占める。
オ 沖永良部島(和泊町、知名町)
収穫面積は1587ヘクタール(前年比101%)、生産量は9万6525トン(同112%)で、10アール当たり収量は6084キログラム(平年比111%)であった。
株出し比率は67%を占める一方、夏植えの比率も24%と高い。品種別では、農林8号が45%、農林22号が41%を占める。
カ 与論島(与論町)
収穫面積は423ヘクタール(前年比102%)、生産量は3万2559トン(同122%)、10アール当たり収量は7697キログラム(平年比148%)と県内で最も高く、前年産に引き続き生産回復が続いている。
株出し比率は82%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が61%を占める。
(3) ハーベスタによる収穫の状況
さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用してハーベスタの導入が進められている。
また、県では平成23年度から、低コストで持続的な生産体制の確立を図るため、耐用年数を経過したハーベスタの機能向上(長寿命化)に向けた事業を実施しており、28年度までに42台の取り組みを支援した。(23年度:10台、24年度:14台、25年度:5台、26年度:8台、27年度:3台、28年度:2台)
この結果、28年産では、収穫面積全体の90%、約9000ヘクタールでハーベスタ収穫が行われており、島別に見ると、徳之島では最も高い96%となっている。
4.製糖工場の操業状況
分みつ糖製造は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。
分みつ糖工場における平成28/29年期の原料処理量は63万187トンで、前年から13万1269トン増加した。買入糖度は13.98度で、前年から0.12度高くなった(
表4)。
おわりに
鹿児島県では、関係機関・団体と一体となり、各種補助事業などを活用して、収穫面積の確保や基本技術の励行などによる単収向上対策を推進するとともに、農業機械の導入、製糖関連施設の整備などへの支援などの取り組みを積極的に推進しているところである。
今後とも、さとうきび生産農家の経営の安定と、製糖会社等関連産業の維持発展を図るため、さとうきび増産計画で定めた平成37年産の目標達成に向け、大規模経営体・農作業受託組織等担い手の育成や、農業共済制度への加入促進による「経営基盤の強化」、機械化一貫体系の普及・確立や地力増進による「生産基盤の強化」、病害虫防除対策および鳥獣被害対策の推進や優良品種の育成・普及による「技術対策」などに取り組むこととしている。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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