ホーム > 砂糖 > 各国の糖業事情報告 > ベトナムの伝統的な砂糖生産を訪ねて(その3)
最終更新日:2017年7月10日
(4)容器内側に沿って金属製のヘラを差し入れ、外側から中央に向かってゆっくりと数回かき混ぜる(写真12)。
(5)翌日、濃縮糖液が固化していることを確認後、工具で削って上部表面を平らにならし(写真13)、この日に煮詰めた濃縮糖液をさらに注ぐ。固化している表面との境目をなくすために、さらに表面部を削りながらかき混ぜる。 (濃縮糖液の温度119度、pH4.85、ブリックス79.0%)
(6)容器に濃縮糖液を入れ終えてから2日後、固化している砂糖を一旦取り出し(写真14)、底辺部を切り落とす。洗った素焼き容器に砂糖を戻し入れ、容器ごとかめの上に置く。この時、容器の穴をふさいでいるわらを取り除く。そして、重力によってモラセスを落下させる。
(7)砂糖が入った素焼き容器の上部を水田の泥(よくこねて水分を含んでいる状態のもの)を注いでふさぎ、軒先で保管する(写真15)。
(8)土をかぶせて7日経過後(素焼き容器に濃縮糖液を入れてから9日後)、土を取り除くと砂糖との接触面に若干色素の移行が認められる(写真16)。
(9)素焼き容器から砂糖を取り出して天日干しし、2日経過後 (容器に濃縮糖液を入れてから11日後)、工程のすべてが完了する。
他方、現在のクアンガイ市場に並ぶドン・ムンは、グラニュー糖に糖蜜を加えて作られたもので、1キログラム当たり2万1000ドン(105円)で売られていた(写真18、19)。グラニュー糖の価格(1万8000ドン〈90円〉)よりは高いが、氷砂糖の価格(2万3000ドン〈115円〉)よりは安かった。18年前にも、グラニュー糖から作られたドン・ムンがあったが、圧倒的にサトウキビから作られるドン・ムンが主流であった。しかし、サトウキビから作られるドン・ムンは11〜12年前に市場から姿を消したようである。
グラニュー糖から作られるドン・ムンは、砂糖を販売する業者の自宅で製造されているといい、完成するまでに1週間かかるという。その作り方は、(1)茶色いグラニュー糖と糖蜜に水を加えて約1時間煮詰めて、糖液をバケツ様の容器に入れる(2)約30分後、表面の泡を取り除き一晩置く(3)容器から取り出し、モラセスが落ちるようにして、1週間砂糖の塊を放置する(4)1週間後、天日干しして乾かす(5)二つに切り割って包装する−というものであった。
グラニュー糖から作るとはいえ、手間がかかっていると言えよう。クアンガイ省では確かなニーズがあり、ドン・ムンは「che」という豆を使ったデザートに欠かせない食材であるという。また、割り砕いてそのまま食べる食べ方も以前から変わらず根付いている(写真20)。実際に食したところ、簡単にかみ砕くことができ、蜜の風味が残っているため、氷砂糖とも全く違う食感であった。