2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み
英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する大手民間調査会社)の2017年8月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含まれたため、905万ヘクタール(前年度比4.6%増)とやや増加が見込まれている。しかし、サトウキビの新植が進まず単収が低下したため、生産量は6億5718万トン(同1.3%減)とわずかな減少が見込まれている(
表2)。
一方、砂糖生産量は、国際砂糖価格の上昇により、製糖企業がサトウキビを砂糖へ仕向ける割合を増やしたことに加え、製糖歩留まりが向上していることなどから、4053万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同15.2%増)とかなりの増加が見込まれている。こうした増産見込みに伴い、輸出量は過去最高の2874万トン(同14.4%増)とかなりの増加が見込まれている。
2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、884万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少するものの、生産量は単収の向上から、6億4763万トン(同1.5%減)とわずかな減少にとどまると見込まれている。
砂糖生産量も、4080万トン(同0.7%増)と前年度並みと見込まれている。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、国際的な砂糖の輸入需要の緩やかな減少に伴い、2870万トン(同0.1%減)と見込まれている。
なお、UNICAが発表した2017年4〜7月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は2億9733万トン(前年同期比4.7%減)とやや減少したものの、砂糖生産量は1757万トン(同3.5%増)とやや増加した。同報告によると、エタノール生産量は、1157万キロリットル(同10.1%減)とかなり減少した。輸出量も含めたエタノールの販売量は、809万キロリットル(同13.4%減)となった。このうち、含水エタノール
(注)の国内販売量は、ブラジル国営石油公社ペトロブラスがガソリン平均卸売価格を引き下げ、含水エタノールのガソリンに対する優位性が低下していることから、436万キロリットル(同17.5%減)と大幅に減少した。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、7月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.24レアル(81円〈7月末日TTS:1レアル=36円〉)と前年同月と同水準であった一方、ガソリン小売価格は同3.33レアル(120円)と前年同月の3.44レアル(124円)に比べ、下落している。
国内のエタノール生産量の減少などにより、米国からのエタノール輸入量が急増している状況を受け、UNICAはエタノールの輸入関税の再導入を政府に要請しており、北東部の砂糖エタノール製造企業も国内産業の保護を政府に求めている。しかし、政府は、関税を再導入した場合、国内のエタノール価格が高騰し、世界のエタノール貿易に影響を与えることから、慎重に検討することとしている。
現地報道によると、政府は7月、燃料に対する社会負担税(PIS/Cofins)のうち、エタノールの税率を引き下げる一方で、ガソリンとディーゼル用燃料については税率を引き上げると発表した。これにより、ガソリンに対するエタノールの価格競争力が高まるとともに、製糖企業がサトウキビのエタノールへの仕向け割合を増加させることで、砂糖の需給バランスが調整され、砂糖価格の安定が期待されている。また、一部報道では、政府は、バイオ燃料の需要拡大のため、ガソリンに対する燃料税(CIDE)について、2017年から2年連続で引き上げるとされている。
(注)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。