(2)広西における砂糖生産の現状
ア.製糖企業数の著しい減少と大規模化、生産能力向上の進展
1992年に中央政府が食用砂糖の生産・販売に対する制限を緩和して以来、広西の砂糖産業では空前の産業構造調整が行われ、製糖効率が低い企業の経営改善と合併が行われたため、製糖企業数は著しく減少し、優良企業の規模は拡大し続けた。現在、広西内の製糖工場数は104である。製糖工場の分布を見ると、製糖原料用サトウキビの主要栽培地域とおおむね一致している。例えば、製糖原料用サトウキビの栽培面積が最大の崇左市には17、来賓市には14、南寧市には17、柳州市には12の工場が立地している。
2013/14年度において、広西の製糖企業30社(104の製糖工場)のうち稼働した工場数は102(蒙山永安製糖と永凱黎塘分公司は生産中止)で、1日当たりのサトウキビ圧搾能力は69万1900トンと、前年度比1.0%の増となり、6700トン増加した。また、1工場1日当たりの平均サトウキビ圧搾能力は6783トンと、前年度比2.0%の増となり、131トン増加した。1日当たりのサトウキビ圧搾能力が1万トン以上の工場数は24であるが、そのうち、最大は東門南華糖業有限責任公司で、1日当たりのサトウキビ圧搾能力は2万3000トンであった。
イ.国有、外資系企業の資本および民営持ち株を主体とする製糖企業構造の形成
1992年に食用砂糖の生産・販売に対する制限が緩和されて以来、大量の海外資本と個人資本が参入し、かつて国有企業しかなかった広西の砂糖産業は大きく様変わりした。国有、民営、外資など、多種類の企業が共存し、多元的な資本が併存して企業を所有するようになった。大手基幹企業を中核とし、資本によりつながった大手製糖集団が急速に発展し、産業の集中度もかなり高まったことによって、広西の製糖企業の経営状況や業界の競争力は著しく向上した。2013/14年度において、広西の104の製糖工場のうち、国有および国有持ち株企業は5社20工場で、サトウキビ圧搾能力は1日当たり13万7000トンと、19.8%を占めた。外資系企業資本およびその持ち株企業は3社14工場で、サトウキビ圧搾能力は同15万4000トンと、全体の22.3%を占めた。民間資本およびその持ち株会社は22社70工場で、サトウキビ圧搾能力は同40万900トンと、地域全体の57.9%を占めた。
ウ.砂糖生産量は増加傾向だが、近年は小幅に減少し、地域差がかなり大きい
広西の砂糖生産量を見ると、総生産量は年々増加傾向にあるが、ここ数年来、小幅に減少し、市によってかなりの差がある。崇左市、来賓市、南寧市および柳州市といった製糖原料用サトウキビの栽培が盛んな四つの市の生産量の計は全体の約70%を占め、崇左市は絶対的に優勢な状態にあり、最大の生産地である。2013/14年度において、広西の食用砂糖の生産量は857万6000トンで、このうち前述の四つの市の生産量は広西全体の72.4%を占めた。そのうち、崇左市の砂糖生産量は246万9000トンで、28.8%を占めた。その他の市の砂糖生産量については、来賓市が147万4000トンで全体の17.2%、南寧市が142万5000トンで16.6%、柳州市が83万8000トンで9.8%を占めた。
エ.製糖コストと収益性のバランスは微妙であり、深刻な損失が出た年も
製糖工場の収益性は、砂糖の販売価格、サトウキビの購入コスト、サトウキビの糖分含有量および製糖コストなどの要因に左右される。そのうち、ここでの砂糖の販売価格とは、白糖の平均税込販売価格である。
2010/11年度から2013/14年度を見ると、製糖企業の利益総額は減少し続け、2012/13年度には損失が出はじめた(
表4)。
2010/11年度は、広西の砂糖産業史上、最高利益を上げた年度であった。砂糖の国際価格は、1ポンド当たり20セントから同36セントに上がった一方、国内の砂糖生産量は4年連続で減少し、市場への供給が需要に追い付かず、砂糖の平均販売価格は1トン当たり7078元(12万326円)で、最高は同7800元(13万2600円)であった。同砂糖年度中、製糖原料用サトウキビ取引価格は、圧搾開始初期の1トン当たり350元(5950円)から同482元(8194円)に上方修正され、最終精算価格は同498.86元(8481円)となった。広西全体の製糖企業の税込利益総額は117億5600万元(1998億5200万円)、利益を損失と相殺した後の利益総額は82億2700万元(1398億5900万円)であった。
2011/12年度になると、広西の製糖原料用サトウキビ取引に係る期首価格は1トン当たり500元(8500円)となり、砂糖価格は同7000元(11万9000円)となった。同年度中、国際砂糖価格は低迷し続けたが、製糖原料用サトウキビ取引価格はそれに連動して下がることはなかったため、企業収益は大幅に減少し、税込利益総額は48億5100万元(824億6700万円)となった。そのうちの純利益は19億2500万元(327億2500万円)にとどまった。
2012/13年度においても、国際砂糖価格は下落を続け、安価な輸入砂糖が大量に流入し、国内市場は供給が需要を上回り、国内砂糖価格は下がり続けた。広西では製糖原料用サトウキビ取引に係る期首価格が1トン当たり475元(8075円)に下がったが、企業収益の減少を食い止めることはできなかった。
2013/14年度も、国際砂糖市場の影響を受け、広西の砂糖産業は引き続き疲弊状態にあった。業界の利益はさらに圧縮され、32億元(544億円)の損失となった。砂糖製品に関して見ると、損失総額は44億3400万元(753億7800万円)に上り、損失を出した製糖工場数は88で、損失を出した企業の割合は86.3%と、前年度から7.6ポイント増加した。
また、製糖原料用サトウキビの糖分については、2010/11年度から2013/14年度にかけて13.93%から13.85%に減少した。このため、1トンの砂糖生産に対するサトウキビ使用量は、2010/11年度の8.25トンから2012/13年度の8.49トンに増加した。サトウキビの糖分の低下は製糖コストの上昇につながり、業界の利益をさらに圧迫した。ただし、2013/14年度の1トンの砂糖生産に対するサトウキビ使用量は8.28トンに下がった。