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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年9月時点予測)

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最終更新日:2017年10月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年9月時点予測)

2017年10月

ブラジル

2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み
 2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含まれたため、905万ヘクタール(前年度比4.6%増)とやや増加が見込まれている。しかし、サトウキビの新植が進まず単収が低下したため、生産量は6億5718万トン(同1.3%減)とわずかな減少が見込まれている(表2)。

 一方、砂糖生産量は、国際砂糖価格の上昇により、製糖企業がサトウキビを砂糖へ仕向ける割合を増やしたことに加え、製糖歩留まりが向上していることなどから、4053万トン(同15.2%増)とかなりの増加が見込まれている。こうした増産見込みに伴い、輸出量は過去最高の2874万トン(同14.4%増)とかなりの増加が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、884万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少するものの、生産量は単収の向上から、6億4763万トン(同1.5%減)とわずかな減少にとどまると見込まれている。

 砂糖生産量も、4080万トン(同0.7%増)と前年度並みと見込まれている。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、国際的な砂糖の輸入需要の緩やかな減少に伴い、2870万トン(同0.1%減)と見込まれている。

 なお、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)(注1)が8月24日に発表したサトウキビなどの2017/18年度生産見通しによると、サトウキビ栽培面積は877万ヘクタール(同3.1%減)とやや減少するものの、1ヘクタール当たりの収量が73.7トン(同1.5%増)と見込まれるため、サトウキビ生産量は、6億4634万トン(同1.7%減)とわずかな減少にとどまると見込まれる。これに対し、砂糖生産量は、3939万トン(同1.8%増)と過去最高に達すると見込まれている。

 UNICAが発表した2017年4〜8月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は3億8152万トン(前年同期比3.6%減)とやや減少したものの、砂糖生産量は2326万トン(同3.4%増)とやや増加した。同報告によると、エタノール生産量は、1529万キロリットル(同7.5%減)とかなり減少した。輸出量も含めたエタノールの販売量は、1048万キロリットル(同11.3%減)となった。このうち、含水エタノール(注2)の国内販売量は、ブラジル国営石油公社ペトロブラスがガソリン平均卸売価格を引き下げていたことから、573万キロリットル(同14.9%減)とかなり減少した。

 現地報道によると、政府は7月、燃料に対する社会負担税(PIS/Cofins)のうち、エタノールの税率を引き下げる一方で、ガソリンとディーゼル用燃料の税率を引き上げると発表した。これにより、ガソリンに対するエタノールの価格競争力が高まり、製糖企業がサトウキビのエタノールへの仕向け割合を増加させることから、砂糖の需給バランスが調整され、砂糖価格の安定が期待されている。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、8月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.42レアル(85円〈8月末日TTS:1レアル=35円〉)とガソリン小売価格の同3.56レアル(125円)の70%(注3)を下回っている。

 また、政府は8月23日、エタノール輸入に対し、年間60万キロリットル(四半期ごとに15万キロリットル)の無税の関税割当を設けるとともに、これを超過して輸入されるエタノールに対しては20%の関税を課すことを決定した。同関税は、エタノール在庫量の低下に伴い停止した2010年以来の再導入で、2年間実施された後、見直しが予定されている。同措置は、国内のエタノール生産量が減少し、米国からのトウモロコシ由来のエタノール輸入量が急増している状況を受け、UNICAや北東部の砂糖エタノール製造企業などが、以前から政府へ実施を要請していた。

(注1)主要作物の生産状況報告や予測などを行っているブラジル農牧食糧供給省直轄の機関。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2016/17年度の砂糖生産量、輸出量ともに大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は474万ヘクタール(前年度比6.2%減)、生産量は3億672万トン(同14.5%減)と、ともに干ばつの影響によりかなりの減少が見込まれている。さらに、砂糖生産量も、2210万トン(同19.3%減)と製糖歩留まりの低下により大幅な減少が見込まれている(表3)。インド砂糖製造協会(ISMA)が3月初旬に発表した見通しによると、1〜2月にかけてマハラシュトラ州やカルナタカ州などで当初の予想以上に単収が低下していることなどから、同年度の砂糖生産量は、精製糖換算で2030万トンと見込まれている。

 中央政府は、砂糖の減産により2015年末から国内の砂糖価格が高騰していることを受け、2016年6月中旬以降、砂糖の輸出(粗糖を輸入して6カ月以内に再輸出する精製糖や2500トンのオーガニックシュガーを除く)に対し、輸出関税(20%)を導入している。さらに、2017年4月中旬には、貿易業者に対する砂糖の保有在庫数量の上限の設定期限を2017年4月末から同年10月末まで延長することを公表した。背景には、国内で精製された砂糖を市場に放出することで、国内消費量を充足するとともに、砂糖価格の安定を図る目的がある。これらにより、砂糖輸出量は、217万トン(同47.2%減)と大幅な減少が見込まれている。

 一方、砂糖輸入量は、国際価格の下落や中央政府が先ごろ粗糖50万トンについて無税での輸入を許可(注)したことにより、輸入粗糖を原料とする精製糖生産の利益が増加するとみられていることなどから、317万トン(同66.7%増)と大幅に増加すると見込まれている。

 現地報道によると、政府は製糖企業に対し、9月および10月における砂糖の保有在庫数量の上限値を公表した。これによると、9月は、2016/17年度生産見込量の21%、10月は同8%が上限とされている。

 また、現地報道によると、中央政府は9月7日、新たに粗糖30万トンについて25%の低税率での追加輸入を許可することを明らかにした。これは、9〜10月にかけて、特に干ばつの被害が大きかった南部地域の砂糖の在庫不足を補うため、同地域の製糖企業を対象とするものとみられており、2016/17砂糖年度において2度目の輸入関税減免措置となる。同措置によって輸入された砂糖は、10月中旬までに精製され、販売されることが条件となっている。なお、ISMAは、砂糖の輸入増加による国産糖の需要の低下を懸念し、砂糖の輸入関税を現行の40%から60%まで引き上げるよう求めていたが、これに対し、中央政府は7月10日、ISMAの要求を下回る50%に引き上げることで応じている。

 ISMAは7月中旬、6月の観測結果を基にした2017/18年度の生産予測を公表した。これによると、砂糖生産量は精製糖換算で2510万トン(前年度比23.6%増)と大幅な増加が見込まれている。州別に見ると、ウッタルプラデシュ州は995万トンと全体の4割を占め、マハラシュトラ州は740万トンと見込まれている。

(注)当該措置は、砂糖生産量が、干ばつにより大幅に減少し、消費量を下回ると見込まれること、また、マハラシュトラ州の製糖企業による再輸出用粗糖100万トンの輸入申請が行われたことなどを受けて実施されたものである。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、 輸入量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、収穫面積が183万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量が1億2652万トン(同7.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている(表4)。これは、最大生産地域である広西チワン族自治区や海南省における栽培面積の増加と良好な生育状況が要因である。

 てん菜についても、収穫面積は15万ヘクタール(同10.0%増)とかなり増加し、生産量は771万トン(同5.0%増)とやや増加が予想されている。これは、主要生産地である内モンゴル自治区の増加などが要因である。これらにより、砂糖生産量は、1010万トン(同6.7%増)とかなりの増加が見込まれている。

 中国砂糖協会(CSA)が発表した2016/17年度の生産実績報告によると、砂糖生産量は精製糖換算で929万トン(同6.8%増)とかなり増加した(図4)。これは、サトウキビおよびてん菜の栽培面積拡大により、甘しゃ糖が824万トン(同5.0%増)、てん菜糖が105万トン(同23.2%増)と、ともに増加したことによる。

 さらに、中央政府は2016年10月以降、入札により備蓄砂糖を国内企業へ売り渡しており、1月時点で合計約65万トンが市場に放出された。現地報道によると、9月中に広西チワン族自治区で33万トン、その他にも37万トンが売り渡されるとみられている。CSAは、2016/17年度に200万トン程度、2017/18年度も同程度の備蓄砂糖の放出を見込んでいた。

 こうした中、中央政府は5月22日、2016年9月から実施した砂糖の輸入先国によるダンピング疑惑の調査(注1)の結果を踏まえ、2017年5月22日から2020年5月21日までの3年間、世界貿易機関(WTO)協定に基づく関税割当(194万トン、関税率15%)の枠外で輸入される砂糖の関税率を、現行の50%から95%まで引き上げることを公表し た(注2)。このため、7月の砂糖輸入量は5万9533トン(同85.6%減)と、2013年6月以来の最低となり、2017/18年度全体では、392万トン(同36.8%減)と大幅な減少が見込まれている。枠外関税率は、毎年度5%ずつ引き下げられる予定であるが、ミャンマーなどからの「非公式な」砂糖の流入および第三国経由での輸入量の増加が懸念されている。中央政府は2〜5月、「非公式に」流入した砂糖を6500トン以上押収しており、今後も国境での監視を強化するとしている。こうした中央政府による砂糖流入の取り締まりにより、ミャンマーでは中国に輸出不可能となった砂糖80万トンが市中に出回り、国内の砂糖価格が3カ月前と比べて3割ほど下落する事態が生じている。

(注1)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に影響が生じているとして実施した調査であり、対象は、輸入量が急増した2011年以降で、粗糖の上位輸入先国であるブラジルおよび豪州ならびに精製糖の主要輸入先国である韓国などが対象国となっていた。
(注2)開発途上の約190の国や地域(フィリピンやパキスタンといった従来中国と関係の深い貿易相手国を含む)については、一定の条件を満たせば対象外とされている。

表4 中国の砂糖需給の推移

図4 中国の砂糖生産実績

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜の収穫面積が159万ヘクタール(前年度比10.8%増)、生産量は1億1843万トン(同12.6%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている(表5)。2017年10月以降の生産割当廃止を目前に、生産量上位国であるフランスやドイツでは、在庫増への懸念から栽培面積の拡大に慎重になっていた一方、ポーランドやオランダなどでは栽培面積を前年度から約2割増加させるなど、積極的に増産する動きも見られていた。記録的な生産量となった前々年度に比べ、春先の低温や降雨のため単収は低下すると見込まれているものの、歩留まりの向上などにより前年度と比べて産糖量の増加が見込まれていることなどから、砂糖生産量は、1694万トン(同12.8%増)とかなりの増加が見込まれている。砂糖の増産や域内の砂糖価格の下落に伴い、砂糖輸入量は、297万トン(同20.9%減)と大幅な減少が見込まれている。

 欧州委員会は7月12日、砂糖を含む農産物の短期需給見通しを公表した。これによると、2016/17年度のてん菜生産量は、1億700万トン(同5.2%増)と、直近10年間で最低水準となった前年度からやや増加し、砂糖生産量は精製糖換算で1680万トン(同13.3%増)とかなりの増加が見込まれている。

 また、これによると、生産割当制度の廃止に伴い、2017/18年度のてん菜生産量は、主にベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランドが栽培面積を大きく拡大していることから、1億2790万トン(同19.6%増)、砂糖生産量は2010万トン(同19.6%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。これに伴い、EU域内の価格が下落し、国際価格との差が拡大することから、輸入量は、150万トン(同49.0%減)と見込まれている。輸出量は、域内消費量が大きく変わらない中、域内供給量が増えるとともに、WTOの裁定により設けられた輸出上限が撤廃されることから、280万トン(同2倍)と見込まれている。ただし、輸出量は、国際価格に対するEU価格の動向に左右されるものとみられる。

 なお、現地報道によると、欧州清涼飲料水連盟(UNESDA)(注)は9月6日、域内の中学校への飲料の販売を、低糖分および無糖のものに限るよう、会員企業へ自主的な取り組みを呼び掛けた。これは2006年以降の小学校への清涼飲料水販売禁止に続く取り組みとなる。UNESDAによると、今回の対象規模は、中学校数5万校、生徒数4000万人以上と見込まれている。

(注)ヨーロッパの清涼飲料水製造企業および22の国単位の協会などが加入する非営利団体(アルコールやミネラルウォーターなどの部門は含まない)。欧州委員会に対する意見の申し入れなどを行う。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見込みおよび生産割合

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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