砂糖類の国内需給

　農林水産省は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」（昭和40年法律第109号）により、四半期ごとに砂糖および異性化糖の需給見通しを公表している。9月に「平成29砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し（第1回）」を公表した。

　平成28砂糖年度（10月〜翌9月）の砂糖の消費量は、193万9000トン（前年度比1.0％減）の見込みである（表1）。内訳を見ると、分みつ糖の消費量が190万2000トン（同1.1％減）、含みつ糖の消費量が3万7000トン（同5.7％増）の見込みである。

　29砂糖年度の砂糖の消費量は、194万6000ト ン（同0.4％増）と見通している。内訳を見ると、分みつ糖の消費量は、近年の消費動向を基に、景気は一部に改善の遅れがみられるが、緩やかな回復基調が続いていることなどを踏まえ、191万トン（同 0.4％増）と見通している。含みつ糖の消費量は、近年の消費動向などを勘案し、3万6000トン（同1.9％減）と見通している。

　平成28砂糖年度の砂糖供給量は、188万9000 トン（前年度比5.0％減）の見込みである。内訳を見ると、分みつ糖の供給量が186万8000トン（同 5.1％減）、含みつ糖の供給量が2万トン（同5.3％ 増）の見込みである。国内産糖の供給量は、28年産におけるてん菜の産糖量の大幅な減少などにより、68万8000トン（同15.4％減）と、かなり大 きく減少する見込みである。

　29砂糖年度の砂糖の供給量は、191万7000トン（同1.5％増）と見通している。内訳を見ると、分みつ糖が189万7000トン（同1.6％増）、含みつ糖が1万9000トン（同5.0％減）と見通している。国内産糖（分みつ糖）の供給量は、てん菜については、前年6月以降の全道的な長雨や8月中下旬の台風などの被害により不作となったことから作付面積は前年産に比べて2.1％（約1300ヘクタール）減少した。作柄については、一部地域で低温・多雨の影響により生育が停滞した地域があるものの、全体としておおむね順調に推移していることから、産糖量は61万5000トン（前年産比21.7％増）、供給量は61万4000トン（精製糖換算。前年度比21.6％増） と見通している。

　サトウキビについては、前年産の作柄が良好で株出し面積が増加したことから、収穫面積は前年産に比べて2.0％（約500ヘクタール）増加した。作柄については、台風による被害は平年の同時期よりは少ないものの、梅雨明け以降の降水量が少なく干ばつ気味であることから、産糖量は14万8000トン （前年産比18.7％減）、供給量は14万1000トン（精製糖換算。前年度比18.7％減）と見通している。

　平成29砂糖年度の異性化糖の消費量は、近年の消費動向などを踏まえ、81万4000トン（前年度 比1.8％減）と見通している。また、異性化糖の供給量は、消費量に見合った量が供給されると見通している（表2）。

前年産と比べて作付面積は減少したものの、生産量は上回る見込み
　北海道農政部生産振興局農産振興課は、9月26 日に「平成29年産てん菜の生産見込数量（平成29 年8月20日現在）」を公表した。

　作付面積は、5万8139ヘクタール（前年産比 2.1％減）と、前年産に比べて1251ヘクタール減少した（表3）。地域別に見ると、十勝地域が2万 5557ヘクタール（同1.9％減）、オホーツク地域が2万3892ヘクタール（同2.0％減）、道央地域 4237ヘクタール（同3.2％減）、道南地域4454ヘクタール（同2.7％減）となっており、全ての地域で前年産を下回った。

　1ヘクタール当たりの収量は、63.3トン（ 同 17.9％増）と、前年6月以降の長雨や8月中下旬の台風などの被害により収量が減少した28年産を大幅に上回る見込みである。この結果、29年産のてん菜の生産量は368万1000トンと前年産比 15.4％の増加が見込まれる。

　また、てん菜の糖分は、生育がおおむね順調に推移したことから、28年産（16.3度）を上回ると予 想される。

　関係者への聞き取りによると、公共事業などの需 要増加と相まって、原料搬入用トラックの確保が難しい状況が続いており、製糖工場では安定した生産体制を維持するため前年より早く操業を開始している。

9月の移出数量は前年同月からやや減少
　2017年9月の異性化糖の移出数量は、6万 5015トン（前年同月比3.5％減、前月比21.6％減） であった（図1）。
　9月の規格別の移出量は、次の通りであった （図2）。

果糖含有率40％未満　　　　　384トン
　（前年同月比5.3％増、前月比1.6％増）
同40％以上50％未満 　　1万7125トン
　（同0.5％減、同12.4％減）
同50％以上60％未満 　　4万6524トン
　（同4.9％減、同25.0％減）
同60％以上　　　　　　　　　　　983トン
　（同5.6％増、同4.6％増）

【分みつ糖の輸入動向】
8月の輸入量は前年同月から大幅に減少
　財務省「貿易統計」によると、2017年8月の分みつ糖（HSコード 1701.14-110）の輸入量は、 8202トン（前年同月比86.9％減、前月比66.1％減） であった（図3）。
　輸入先国はフィリピン、タイおよび米国の3カ国で、輸入量は次の通りであった（図4）。

フィリピン　　7992トン
　（前年同月および前月輸入実績なし）
タイ　　　　　　200トン
　（前年同月比99.6％減、前月比99.2％減）
米国　　　　　　10トン
　（同44.4％減、同47.4％減）

　また、同月における豪州からの高糖度原料糖（糖度98.5度以上99.3度未満、HSコード1701.14- 200）の輸入量は、10万231トン（前年同月比2.9倍、前月比69.5％増）であった。

　2017年8月の1トン当たりの輸入価格は、4万 1023円（前年同月比21.8％安、前月比10.3％安） であった（図5）。

フィリピン 　　4万493円
　（前年同月および前月輸入実績なし）
タイ　　　　　5万3785円
　（前年同月比4.8％高、前月比17.8％高）
米国　　　　20万9600円
　（同16.2％高、同97.0％高）

　また、同月における豪州からの高糖度原料糖の1 トン当たりの輸入価格は、4万3656円（前年同月比7.4％安、前月比0.9％安）であった。

【含みつ糖の輸入動向】
8月の輸入量は前年同月から大幅に減少
　財務省「貿易統計」によると、2017年8月の 含みつ糖（HSコード 1701.13-000、1701.14- 190）の輸入量は、199トン（前年同月比29.4％減、前月比60.3％減）であった（図6）。
　輸入先国はフィリピン、タイおよび中国の3カ国で、国別の輸入量は次の通りであった（図7）。

フィリピン　84トン
　（前年同月比6.5倍、前月比4.5％減）
タイ　　　　61トン
　（同2.9倍、同3.1倍）
中国　　　54トン
　（同78.2％減、同85.5％減）

　2017年8月の1トン当たりの輸入価格は、12 万9332円（前年同月比15.3％高、前月比2.7％安） であった（図8）。
　国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

フィリピン　 13万1393円
　（前年同月比41.5％安、前月比10.4％安）
タイ　　　　　10万7311円
　（同24.2％高、同6.9％安）
中国 　　　　15万1000円
　（同39.2％高、同18.0％高）

【加糖調製品の輸入動向】
8月の加糖調製品の輸入量は前年同月からやや増加
　財務省「貿易統計」によると、2017年8月の加糖調製品の輸入量は、4万7971トン（前年同月比 5.0％増、前月比4.9％増）であった（図9）。
　品目別の輸入量は、次の通りであった。

ミルク調製品　　　　 1万5574トン
　（前年同月比36.5％増、前月比15.2％増）
ソルビトール調製品　　 9862トン
　（同10.8％減、同1.9％減）
ココア調製品 　　　　　　7716トン
　（同5.5％増、同0.6％減）
調製した豆（加糖あん） 4745トン
　（同4.1％減、同12.9％増）
穀粉調製品 　　　　　　　3502トン
　（同4.3％減、同7.7％増）
コーヒー調製品　　　　　　 11トン
　（同52.1％減、同27.0％減）

【市場価格】
砂糖、異性化糖ともに前月と同水準で推移
　9月の糖種別・地域別の砂糖価格（日経相場）は次の通りであった。

上白糖（大袋）
東京 1キログラム当たり189〜190円
大阪　　　　　　　　　　　　　　 同190円
名古屋　　　　　　　　　　　　　同193円
関門　　　　　　　　　　　　　　 同193円

上白糖（小袋）
東京 1キログラム当たり202〜203円
大阪　　　　　　　　　　　　　　 同204円

本グラニュー糖（大袋）
東京 1キログラム当たり194〜195円
大阪 　　　　　　　　　　　　　　同195円
名古屋　　　　　　　　　　　　　同198円

ビート・グラニュー糖（大袋）
東京 1キログラム当たり189〜190円
大阪 　　　　　　　　　　　　　　同190円
名古屋　　　　　　　　　　　　　同191円

　9月の異性化糖の価格（日経相場、大口需要家向け価格、東京、タンクローリーもの、JAS規格品、水分25％）は、次の通りであった。

果糖分42％もの
1キログラム当たり131〜132円

果糖分55％もの
　　　　　　　　　　同137〜138円

【小売価格】
9月の上白糖小袋の地域間の価格差は最大で28.8円
　KSP−POSデータ（全国535店舗）によると、スーパーにおける9月の上白糖小袋（1キログラム） の平均小売価格は、195.1円（前年同月差2.6円高 、前月差2.3円高）であった。
　同月の地域別^（注）の平均小売価格は次の通りであった。

北海道　　　　　 202.6円
　（前年同月差6.1円高、前月差0.5円高）
東北　　　　　　　197.8円
（同3.2円安、同0.4円高）
関東など　　　　178.4円
　（同1.3円高、同2.2円安）
首都圏　　　　　203.8円
　（同4.9円高、同8.8円高）
中部 　　　　　　179.5円
　（同1.3円高、同3.7円安）
関西　　　　　　 189.9円
　（同3.1円安、同1.4円安）
中国・四国　　 207.2円
　（同6.7円高、同6.5円高）
九州・沖縄　　 197.5円
　（同6.3円高、同5.6円高）

　最も高かったのは中国・四国で、最も安かった関東などとの価格差は28.8円であった。

（注）地域の内訳は次の通りである。以下、グラニュー糖および三温糖も同じである。
関東など：茨城県、栃木県、群馬県、長野県、山梨県、静岡県
首都圏：東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県
中 部：新潟県、富山県、石川県、福井県、岐阜県、三重県、愛知県
関 西：大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、和歌山県、奈良県

9月のグラニュー糖小袋の地域間の価格差は最大で78.5円
　KSP−POSデータ（全国535店舗）によると、スーパーにおける9月のグラニュー糖小袋（1キログラム）の平均小売価格は、242.9円（前年同月差5.0円高、前月差1.1円高）であった。
　同月の地域別の平均小売価格は次の通りであった。

北海道　　　　　 200.1円
　（前年同月差8.4円高、前月差0.3円安）
東北　　　　　　　278.6円
　（同4.9円高、同0.1円高）
関東など　　　　250.8円
　（同4.4円高、前月同）
首都圏　　　　　250.3円
　（同4.9円高、前月差0.1円安）
中部 　　　　　　252.3円
　（同3.6円高、同0.1円安）
関西 　　　　　　231.1円
　（同0.6円安、前月同）
中国・四国 　　254.6円
　（同8.9円高、前月差10.1円高）
九州・沖縄　　 223.4円
　（同5.5円高、同0.1円高）

　最も高かったのは東北で、最も安かった北海道との価格差は78.5円であった。

9月の三温糖小袋の地域間の価格差は最大で51.7円
　KSP−POSデータ（全国535店舗）によると、スーパーにおける9月の三温糖小袋（1キログラム） の平均小売価格は、239.0円（前年同月差5.4円高 、前月差2.5円高）であった。
　同月の地域別の平均小売価格は次の通りであった。

北海道　　　　　246.9円
　（前年同月差2.8円安、前月差10.9円高）
東北 　　　　　　263.3円
　（同5.6円高、同1.2円安）
関東など 　　　  243.4円
　（同7.0円高、同0.6円安）
首都圏　　　　　235.9円
　（同8.8円高、同0.2円高）
中部 　　　　　　227.2円
　（同1.5円高、同0.7円高）
関西 　　　　　　231.9円
　（同0.7円高、同0.3円高）
中国・四国　　 256.4円
　（同13.4円高、同8.6円高）
九州・沖縄　　 211.6円
　（同3.3円高、同1.2円高）

　最も高かったのは東北で、最も安かった九州・沖縄との価格差は51.7円であった。

【購入金額および購入量】
8月の砂糖の支出金額は前年同月並み
　総務省「家計調査」によると、2017年8月における100世帯当たりの砂糖の購入頻度は35で、1 世帯（2人以上）当たりの支出金額は、93円（前年同月比1.1％安、前月比10.6％安）であった（図10）。また、同月の1世帯当たりの砂糖の購入数量は、428グラム（同1.9％増、同1.2％増）であった（図11）。