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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年11月時点予測)

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最終更新日:2017年12月11日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年11月時点予測)

2017年12月




2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み

 英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する大手民間調査会社)の2017年11月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含まれたため、905万ヘクタール(前年度比4.6%増)とやや増加が見込まれている。しかし、生産量は、サトウキビの新植が進まず単収が減少したため、6億5718万トン(同1.3%減)とわずかな減少が見込まれている(表2)。

 一方、砂糖生産量は、国際砂糖価格の上昇により、製糖企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合を増やしたことや製糖歩留まりが向上したことなどから、4053万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同15.2%増)とかなりの増加が見込まれている。こうした増産見込みに伴い、輸出量も過去最高の2874万トン(同14.4%増)とかなりの増加が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、884万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少するものの、生産量は単収の増加から、6億4763万トン(同1.5%減)と見込まれている。

 砂糖生産量は、4080万トン(同0.7%増)と前年度並みが見込まれている。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、国際的な砂糖需要の緩やかな減少に伴い、2870万トン(同0.1%減)と見込まれている。

 なお、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)(注1)が8月24日に発表した2017/18年度生産見通しによると、サトウキビ栽培面積は877万ヘクタール(同3.1%減)とやや減少するものの、1ヘクタール当たりの収量が73.7トン(同1.5%増)と見込まれるため、サトウキビ生産量は、6億4634万トン(同1.7%減)とわずかな減少にとどまると見込まれている。しかし、一方で、砂糖生産量は、3939万トン(同1.8%増)と過去最高に達すると見込まれている。

 UNICAが発表した2017年4〜10月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は、多雨の影響から、5億2960万トン(前年同期比2.0%減)とわずかに減少したが、砂糖生産量は3310万トン(同2.8%増)とわずかに増加した。一方、エタノール生産量は、2260万キロリットル(同0.4%減)と前年度並みとなった。輸出量も含めたエタノールの販売量は、1527万キロリットル(同6.3%減)とかなり減少し、含水エタノール(注2)の国内販売量は、価格が上昇したため861万キロリットル(同8.1%減)とかなり減少した。

 しかし、UNICAによると、中南部地域では10月の含水エタノール国内販売量が150万キロリットル(前年同月比21.7%増)と大幅に増加しており、2015年9月以来の高水準となっている。これは、7月にブラジル国営石油公社ペトロブラスがガソリン卸売価格を引き上げたことで、ガソリン価格が上昇し、競合する含水エタノールの価格競争力が高まっているためである。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、8月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.42レアル(85円〈10月末日TTS:1レアル=35円〉)とガソリン小売価格の同3.56レアル(125円)の70%(注3)を下回った。これにより、今後もエタノール需要が高まると見込まれることから、製糖企業によるサトウキビのエタノール仕向け割合が増加するとの見方も強まっている。

(注1)主要作物の生産状況報告や予測などを行っているブラジル農牧食糧供給省直轄の機関。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2016/17年度の砂糖生産量、輸出量ともに大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は474万ヘクタール(前年度比6.2%減)、生産量は3億672万トン(同14.5%減)と、ともに干ばつの影響によりかなりの減少が見込まれている。また、砂糖生産量も2200万トン(同19.6%減)と製糖歩留まりの低下により大幅な減少が見込まれている(表3)。

 中央政府は、砂糖の減産により2015年末から国内の砂糖価格が高騰していることを受け、2016年6月中旬以降、砂糖の輸出(粗糖を輸入して6カ月以内に再輸出する精製糖や2500トンのオーガニックシュガーを除く)に対し、輸出関税(20%)を導入している。また、11月上旬には、10月末までに延長していた貿易業者に対する砂糖の保有在庫数量の上限の設定期限を、2カ月引き伸ばし、12月末までとすることを発表した。これらにより、砂糖輸出量は、215万トン(同47.5%減)と大幅な減少が見込まれている。

 一方、砂糖輸入量は、国際価格の下落や中央政府が先ごろ粗糖50万トンの無税輸入を許可した(注1)ことにより、輸入粗糖を原料とする精製糖生産の利益が増加するとみられていることなどから、255万トン(同33.8%増)と大幅に増加すると見込まれている。なお、砂糖の輸入関税は7月上旬、40%から50%に引き上げられている。

2017/18年度の砂糖生産量は大幅に増加も、輸出量は大幅減の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は498万ヘクタール(前年度比5.0%増)とやや増加し、生産量は3億3769万トン(同10.1%増)とかなりの増加が見込まれている。砂糖生産量は、主要生産州で適度な降雨に恵まれ、製糖歩留まりの向上が見込まれていることから、2720万トン(同23.6%増)と3年ぶりの増加が見込まれている。主要生産州を見ると、ウッタルプラデシュ州は1020万トン(同16.3%増)、マハラシュトラ州は680万〜740万トン(同2.1〜2.3倍)と、ともに大幅な増加が見込まれている。現地報道によると、両州では10月中の多雨により、工場の稼働が例年よりも約半月遅れの11月から開始されたが、マハラシュトラ州では単収が向上している。

 砂糖輸出量は、生産量が増加するものの、期首在庫量が低水準と見込まれていることから、110万トン(同48.9%減)と大幅な減少が見込まれている。

 現地報道によると、タミルナド州サトウキビ生産者協会は10月中旬、州内の24工場で過去4年間に生産者に支払うべき合計138億4000万ルピー(264億3440万円〈10月末日TTS:1ルピー=1.91円〉)のサトウキビ代金が未払いとなっていることについて、州政府に対し、法的な措置を講じるよう要請している。

 一方、ウッタルプラデシュ州およびマハラシュトラ州の各州政府は11月7日、国内の砂糖価格の上昇に伴い、2017/18年度におけるサトウキビ取引価格を引き上げると公表した。ウッタルプラデシュ州では、1トン当たり前年度比100ルピー(191円)高の3150ルピー(6017円)、マハラシュトラ州では同275ルピー(525円)高の2750ルピー(5253円)(注2)が、製糖工場から生産者へ支払われることとなる。ウッタルプラデシュ州政府は、同措置により、生産者の収入が州全体で106億ルピー(202億4600万円)増加すると予想している。

(注1)砂糖生産量が、干ばつにより大幅に減少し、消費量を下回ると見込まれる中、マハラシュトラ州の製糖企業により再輸出用粗糖100万トンの輸入申請が行われたことなどを受けて実施された措置である。
(注2)マハラシュトラ州は、中央政府が毎年定める1トン当たりの公正取引価格を基に生産者への支払価格を設定している。2016/17年度は、公正取引価格の2300ルピー(4393円)に対し、同州の支払価格は同価格より175ルピー(334円)高い2475ルピー(4727円)であった。2017/18年度は、公正取引価格の2550ルピー(4871円)に対し、支払価格は、200ルピー(382円)高い2750ルピー(5253円)に設定された。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、 輸入量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、収穫面積が183万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量が1億2652万トン(同7.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている(表4)。これは、最大生産地域である広西チワン族自治区や海南省における栽培面積の増加と良好な生育に伴う単収の増加が要因である。

 てん菜についても、収穫面積は15万ヘクタール(同10.0%増)とかなり増加し、生産量は771万トン(同5.0%増)とやや増加が予想されている。地域別に見ると、特に、主要生産地である内モンゴル自治区で増加している。これらにより、砂糖生産量は、1010万トン(同6.7%増)とかなりの増加が見込まれている。

 中国砂糖協会(CSA)が発表した2016/17年度の生産実績報告によると、砂糖生産量は、サトウキビおよびてん菜の栽培面積拡大により、精製糖換算で929万トン(同6.8%増)とかなり増加した(図3)。このうち、甘しゃ糖は824万トン(同5.0%増)、てん菜糖は105万トン(同23.2%増)と、ともに増加している。

 中央政府は2016年10月以降、入札により備蓄砂糖を国内企業へ売り渡しており、2017年1月時点で合計約65万トンが市場に放出された。現地報道によると、2017年9月に広西チワン族自治区で33万トン、その他にも37万トンが売り渡されたとみられている。CSAは、2016/17年度に200万トン程度、2017/18年度も同程度の備蓄砂糖の放出を見込んでいた。

 砂糖輸入量は、364万トン(同41.2%減)と見込まれている。これは、2017年5月22日から2020年5月21日までの3年間、世界貿易機関(WTO)協定に基づく関税割当(194万トン、関税率15%)の枠外で輸入される砂糖の関税率を95%まで引き上げたことによる(注)。CSAの輸入実績報告によると、9月の輸入量は、16万トン(前年同月比67.5%減)と前年同月の3分の1程度へ大幅に減少した。枠外税率は、毎年度5%ずつ引き下げられる予定であるが、ミャンマーなどからの「非公式な」砂糖の流入および第三国経由での輸入量の増加が懸念されていることから、中央政府は、今後も国境での監視を強化するとしている。

2017/18年度の砂糖生産量、輸入量ともに大幅増の見込み
 2017/18年度は、サトウキビについては、収穫面積が193万ヘクタール(前年度比5.5%増)とやや増加し、生産量は単収の増加に伴い、1億3700万トン(同8.3%増)とかなりの増加が見込まれている。

 てん菜についても、収穫面積は20万ヘクタール(同30.9%増)、生産量は1100万トン(同42.8%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。地域別では、主要生産地である内モンゴル自治区の増加が見込まれている。これらにより、砂糖生産量は、1210万トン(同19.8%増)と大幅な増加が見込まれている。

 砂糖輸入量は、依然として生産量が消費量を下回ると見込まれる中、期首在庫量が低水準にあることもあり、575万トン(同57.9%増)と大幅な増加が見込まれている。中央政府は10月12日、2018年の砂糖の輸入割当数量を前年と同じ195万トンに設定した。

(注)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に影響が生じているとして、ブラジル、豪州および韓国などの砂糖輸入先国を対象に実施した調査結果を踏まえ、50%であった枠外税率が95%に引き上げられた。ただし、開発途上の約190の国や地域(フィリピンやパキスタンといった従来中国と関係の深い貿易相手国を含む)については、一定の条件を満たせば対象外とされている。

表4 中国の砂糖需給の推移

図3 中国の砂糖生産実績

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜の収穫面積が159万ヘクタール(前年度比10.8%増)、生産量は1億1795万トン(同12.2%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている(表5)。2017年10月以降の生産割当廃止を目前に、生産量上位国であるフランスやドイツでは、在庫増への懸念から栽培面積の拡大に慎重になっていた一方、ポーランドやオランダなどでは栽培面積を前年度から約2割増加させるなど、積極的に増産する動きも見られていた。砂糖生産量は、製糖歩留まりの向上などから、1694万トン(同12.8%増)とかなりの増加が見込まれている。増産による域内の砂糖価格の下落に伴い、砂糖輸入量は、316万トン(同15.8%減)とかなりの減少が見込まれている。

 欧州委員会は10月6日、砂糖を含む農産物の短期需給見通しを公表した。これによると、2016/17年度のてん菜生産量は1億1182万トン(同9.8%増)と、直近10年間で最低水準となった前年度からかなり増加し、砂糖生産量は精製糖換算で1684万トン(同12.8%増)とかなりの増加が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量はわずかに減少の見込み
 生産割当が廃止された2017/18年度は、てん菜の収穫面積が185万ヘクタール(前年度比16.0%増)、生産量は、好天による単収の増加もあり、1億4162万トン(同20.1%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。これにより、砂糖生産量は1920万トン(同13.4%増)とかなり増加する一方、砂糖輸入量は313万トン(同1.0%減)とわずかな減少が見込まれている。ただし、EUで第3位の砂糖生産国であるポーランドでは、9月末から10月上旬にかけての多雨により、収穫作業が遅れた。これに加え、製糖歩留まりの低下も見込まれるため、当初増加が見込まれていた砂糖生産量は、前年度並みの210万トン程度にとどまると見込まれている。

 一方、前述の欧州委員会の短期需給見通しによると、2017/18年度のてん菜生産量は、生産割当の廃止に伴う栽培面積の拡大と単収の増加が見込まれることから、1億3111万トン(同17.3%増)となり、砂糖生産量も2013万トン(同19.5%増)と大幅に増加する一方、輸入量は150万トン(同34.9%減)と、前年度の3分の2程度と見込まれている。輸出量は、域内消費量が大きく変わらない中、域内供給量の増加に加え、WTOの裁定により設けられた輸出上限が生産割当の廃止に伴い撤廃されることから、280万トン(同2.2倍)と見込まれている。ただし、輸出量は、国際価格とEU域内価格の動向に左右されるとみられる。

 現地報道によると、ある大手飲料製造企業は、東欧市場向けの一部の商品に使用する甘味料について、異性化糖から砂糖へ切り替える方針を明らかにした。同企業は、既にチェコで販売する飲料の甘味料を異性化糖から砂糖へ切り替えており、2017年上半期における同国での売上高は前年同期比で4.5%以上伸長した。同社は、この切り替えについて、甘味料市場の価格変化によるものではなく、風味の追求によるものと強調している。商品全体の配合を見直したことにより、カロリーも従来より30%削減されており、同様の商品は、ポーランド、ハンガリーおよびスロバキアでも販売される予定である。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合

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