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4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年11月時点予測)

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最終更新日:2017年12月11日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年11月時点予測)

2017年12月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2016年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が52.2%(前年比13.2ポイント増)、タイが47.7%(同8.3ポイント減)と、この2カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はフィリピンを報告する。

豪州

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量はやや減少の見込み
 2016/17砂糖年度(7月〜翌6月)のサトウキビ収穫面積は39万ヘクタール(前年度比3.2%増)とやや増加し、生産量は3650万トン(同4.8%増)とやや増加が見込まれている(表6)。しかし、砂糖生産量は、5〜6月に収穫されたサトウキビの製糖歩留まりが、3月に襲来したサイクロンの影響により低下したことから、494万トン(同2.2%減)とわずかな減少が見込まれている(注)。また、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、393万トン(同5.3%減)とやや減少が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量はやや減少の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は40万ヘクタール(前年度比1.8%増)とわずかな増加が見込まれているものの、サイクロンの影響による単収の減少から、生産量は3340万トン(同8.5%減)とかなりの減少が見込まれている。これにより、砂糖生産量は、489万トン(同1.0%減)とやや減少が見込まれており、10月にクイーンズランド州バンダバーグ地区を襲った豪雨被害の状況によっては、今後さらに下方修正される可能性がある。輸出量は、生産量の減少に伴い370万トン(同5.9%減)とやや減少が見込まれている。

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)が9月中旬に公表した2017/18年度の生産予測によると、サトウキビ栽培面積は38万ヘクタール(同2.3%増)とわずかに増加するものの、サイクロンの被害に伴い、1ヘクタール当たり収量が92トン(同6.8%減)とかなり減少すると見込まれている。砂糖生産量は、480万トン(同0.1%減)と前年度並みが見込まれており、輸出量も、前年度並みの405万トンと見込まれている。

 豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)は、11月中旬時点の2017/18年度のサトウキビ圧搾量見込みを3338万トンと、主産地の荒天を反映し、10月中旬時点の予測から1万6000トン下方修正している。

 現地報道によると、クイーンズランド州バンダバーグ地区は10月、度重なる豪雨に見舞われたことから、サトウキビ()(じょう)の浸水被害が発生し、強風で倒れた電柱や樹木などにより、収穫が当初予定よりも3週間ほど遅れると見込まれている。

 豪州政府は11月10日、ペルーとの自由貿易協定(FTA)に署名した。これにより、豪州産粗糖は、無税の関税割当の下でペルーへ輸出されることとなる。ペルーは現在、砂糖生産量120万トンに対し、消費量は150万トンと、需要が国内供給を上回っているため、外国産粗糖を原料とした精製糖により国内需要を補っている。同国の主な粗糖輸入先国は、コロンビア、グアテマラおよびブラジルで、2016年の粗糖輸入量は38万9100トン、2017年は9月までに既に50万6000トンを輸入している。豪州産粗糖の関税割当は初年度が3万トンであるが、今後5年で6万トン、18年で9万トンへ拡大されることとなっている。

(注)豪州の砂糖年度は7月〜翌6月とされているが、製糖が開始される5〜6月の数量は、例年前年度に含まれる。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに増加、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、141万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みが見込まれる一方、長引く干ばつの影響で単収が減少することから、生産量は9300万トン(同1.1%減)とわずかな減少が見込まれる(表7)。

 しかし、砂糖生産量は、製糖歩留まりの向上などから、1030万トン(同2.7%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、708万トン(同9.3%減)とかなりの減少が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量は大幅増、輸出量はやや減少の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、他作物からの転作の進展などにより154万ヘクタール(前年度比9.4%増)、生産量は1億500万トン(同12.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、天候に恵まれたことで、製糖歩留まりが向上し、1200万トン(同16.5%増)と大幅な増加が見込まれている。一方、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、680万トン(同3.9%減)とやや減少が見込まれている。

 タイ製糖協会が10月中旬に発表した見通しによると、2017/18年度のサトウキビ圧搾量は、一部の地域で洪水による影響が見られるものの、前年度から10%増の1億400万トンと見込まれている。

 政府は現在、砂糖産業関連法の改正(注1)に向けた手続きを行っている。この改正によって、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する現行の収益分配方式や販売割当(注2)、および政府が設定している国内砂糖価格は廃止されるとみられる。

 現地報道によると、法改正後の新制度の施行開始時期については、当初12月1日が予定されていたが、サトウキビ取引価格の算定方法に関する関係者との協議や国内砂糖小売価格の自由化に係る関連規程の改正などに時間を要しており、予定どおりの施行が危ぶまれている。生産者団体は、将来的にサトウキビおよび砂糖産業に深刻な影響が及ぶとして、運用方針が固まらない限り延期するよう求めている。菓子業界からは、施行後の価格の見通しや消費者への影響が不透明であるとして、政府に説明を求める声が出ている。

 現地報道によると、9月16日から実施されている糖類を含む飲料に対する税率は、糖類含有量に応じて設定され、2年ごとに引き上げられる(表8)。飲料製造者が徐々に糖類を減らした製品を製造できるよう、6年間の猶予期間が設けられ、高い税率が課される糖類含有量の上限値は段階的に引き下げられることとなっている。

(注1)タイ政府は2016年4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たりWTO協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。これを受け、タイ政府は同年11月3日、ブラジルとの2国間協議の場に、同年10月中旬に閣議承認された砂糖政策の改革案を提出した。サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)によると、改革案はその後また閣議レベルで吟味され、公聴会を実施してから再提出するよう、OCSBへ返却された。その後、OCSBは公聴会を実施したが、関連規程の改正などに時間を要し、現在に至る。改革案は近いうちに閣議へ再提出される予定となっている。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当に基づき管理されている。

表7 タイの砂糖需給の推移

表8 糖類を含む飲料に対する課税スケジュール

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸出量は大幅増の見込み
 2016/17砂糖年度(9月〜翌8月)のサトウキビ収穫面積は47万ha(前年度比11.7%増)、生産量は3404万トン(同10.3%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。製糖歩留まりの向上も見られることから、砂糖生産量は250万トン(同11.7%増)とかなりの増加が見込まれている(表9)。

 砂糖統制委員会(SRA)(注1)が発表した生産実績報告によると、サトウキビ圧搾量は2801万トン(同20.4%増)と大幅に増加し、粗糖生産量は250万トン(同11.7%増)とかなり増加した。

 また、SRAは3月下旬、2016/17年度の砂糖の割当数量のうち20%を国内供給向けから輸出向けに振り替えた(注2)。これは、清涼飲料水用の中国産異性化糖の輸入の増加により、砂糖在庫量の増加が見込まれ、国内価格の低下が予想されたためである。この結果、砂糖輸出量は20万トン(同18.4%増)と大幅な増加が見込まれている。SRAによると、8月末時点の輸出量は22万6891トンで、うち米国向けは19万2280トンとなっている。

2017/18年度の砂糖生産量は前年度並み、輸出量は大幅増の見込み
 2017/18年度は、サトウキビ収穫面積、生産量、砂糖生産量のいずれも前年度並みと見込まれている。

 一方、砂糖輸出量は、25万トン(前年度比25.6%増)と大幅な増加が見込まれている。これは、砂糖在庫量が高水準であることから、米国以外の国向けが増えると見込まれるためである。SRAは、国内砂糖価格を安定させるため、11月末までに14万トンを米国以外向けの輸出割当下で輸出するとしている。また、現地報道によると、既に中国への輸出が開始されており、米国以外の輸出先として、中国に大きな期待が寄せられている。

 フィリピン製糖事業者協会(PSMA)は、国内砂糖価格について、12月までに現在の50キログラム当たり1383ペソ(3250円〈10月末日TTS:1ペソ=2.35円〉)から同1500ペソ(3525円)まで上昇すると見込んでいる。これは業界実需者が最近、中国産異性化糖から国内産砂糖に切り替えているため、砂糖在庫量の減少が見込まれることによる。SRAは、2016年の中国産異性化糖は、国内精製糖販売量の30%に達しており、砂糖の工場卸売価格の低下を引き起こしたとしている。

 また、現地報道によれば、7月1日に可決された総合的な税制改革法案には、糖類を含む飲料への課税が盛り込まれている。税率は、国産糖が使用された清涼飲料水は、1リットル当たり10ペソ(24円)、輸入糖や輸入異性化糖が使用された清涼飲料水は、同20ペソ(47円)が課税されると報道されているが、前者は5ペソ(12円)へ引き下げられることが早くも検討されているとの情報もある。この場合、国産糖が使用された清涼飲料水から得られる税収は、当初見込まれた470億ペソ(1105億円)から半減すると見込まれている。同協会の試算によると、1リットル当たり10ペソが課税された場合、製糖事業者の収益は30%、コーヒー業界の収益も75%減少すると見込まれている(注3)

(注1)砂糖の供給管理政策など国内砂糖産業の管理・監督などを実施する政府機関。
(注2)2016/17年度の砂糖の割当数量は、国内生産量のうち、6%を米国向け(特恵的な関税枠を有す)▽74%を国内向け▽20%を輸出向けに設定している。
(注3)フィリピンをはじめとした東南アジア諸国では、コーヒー、粉乳、砂糖が混ざった「3−in−1」と呼ばれるインスタントコーヒーが日常的な嗜好品として消費されており、課税の影響はコーヒー業界にまで大きく波及すると見込まれている。

表9 フィリピンの砂糖需給の推移

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