ホーム > 砂糖 > 海外現地調査報告 > 生産割当廃止を迎えたEUの砂糖および異性化糖産業の動向
最終更新日:2017年12月11日
コラム1 ブリュッセル(ベルギー)での砂糖の販売状況など1.スーパーマーケットでの販売状況(調査時点:2017年5月31日)(1)砂糖 てん菜糖(1キログラム)は1.29ユーロ(172円)、ブラウンシュガー(500グラム)は1.17ユーロ(156円)で販売されていた(コラム1−写真1左 下段)。ベルギー名物のワッフルに振り掛ける粉糖(250グラム、1.43ユーロ〈190円〉)や、製菓用の粒子の細かい粉糖(750グラム、1.59ユーロ〈211円〉)、製菓用の甘しゃ糖(750グラム、3.35ユーロ〈446円〉)などの多様な製品が販売されていた(コラム1−写真1右拡大写真)。
(2)菓子類
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コラム2 砂糖の輸出体制(アントワープ港)今回の現地調査では、EUのシュガーベルトの中心に位置するベルギーのアントワープ港で、砂糖輸出ターミナルを運営するEUROPORTS社を訪問したので紹介する。同ターミナルは、製糖企業から独立した輸出ターミナルとしては、域内最大規模である。1.業務概要 EUROPORTS社は、てん菜糖の搬入から、袋詰めおよび保管、船積みまで、従業員約40人(製糖期は約60人)で実施している。取り扱うてん菜糖の8割以上が域外輸出向けである。てん菜糖は、製糖工場からトラックまたは鉄道で搬入された後、品質検査が行われ、コンベアで倉庫へ積み込まれる。 同社は、2006年改革を契機に、現在の業務内容を確立した。同改革による生産割当数量の削減に伴い、域内のてん菜糖企業がおおむね九つの企業グループに集約され、ブラジルやタイなど域外の甘しゃ糖企業との合併や提携で戦略的にビジネスを拡大する企業も見られた。さらに、輸出上限の設定により、域内のターミナル運営にも変化が及び、てん菜糖の輸出から粗糖の輸入へ業務を変更したり廃業したりするターミナルもあった。アントワープ港でも二つのターミナルが廃業した中、同社は、フランスのル・アーブル港のターミナルにも投資し、輸出体制を強化した。また、衛生管理を徹底し、トレーサビリティーに対応した倉庫の整備や袋詰め作業の実施など、業務内容を拡充してきた。現在は、輸出後の品質保持に対応するため、ビッグバッグ(1トン)や袋(25または50キログラム)でのコンテナへの積載や、コンテナ内にインライナーと呼ばれるコンテナサイズの袋を入れた上での充てんも行う。各製糖企業が輸出先言語のロゴを付した自社袋を用意することもあるが、そのような要望にも細やかに対応している。 2.生産割当廃止後の見通しと対応状況 EUROPORTS社は、スペインやギリシャ、イタリアなどEU南部の国々には食品製造企業(清涼飲料水、トマトケチャップおよび菓子類など)が多いが、生産効率の低さから今後10年ほどで砂糖産業が衰退する可能性があるため、シュガーベルトからの供給が増加するとみている。また、異性化糖の増産分が域内市場に仕向けられ、その分、砂糖の輸出がさらに増えると期待している。なお、輸入粗糖を原料とする精製糖は、輸入制限が継続されることから、生産量の増加により生産コストの低下が見込まれるてん菜糖に比べ、優位性が低下するとみている。 同社は、割当廃止決定後、アントワープ港のてん菜糖の取扱量が3倍になると見込み、約3000万ユーロ(39億9000万円)を投資し、搬入容量を拡張(トラックの搬入スペースを3台分から7台分に、鉄道搬入時の地下の受け入れタンクを2車両分に、それぞれ増大)し、コンベアを増設するとともに、倉庫の保管能力を26万トンに増強した。 |