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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年12月時点予測)

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最終更新日:2018年1月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年12月時点予測)

2018年1月

ブラジル

2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
 2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、884万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少するものの、生産量は単収の増加から、6億4763万トン(同1.5%減)と見込まれている(表2)。

 砂糖生産量は、4080万トン(同0.7%増)と前年度並みが見込まれている。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、国際的な砂糖需要が弱まると見込まれ、2870万トン(同0.1%減)と見込まれている。

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)が発表した2017年4〜11月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は、多雨の影響から、5億6818万トン(前年同期比2.3%減)とわずかに減少したが、砂糖生産量は、3509万トン(同1.1%増)とわずかに増加した。一方、エタノール生産量は、2446万キロリットル(同0.2%増)と前年度並みとなり、輸出量も含めたエタノールの販売量は、1760万キロリットル(同3.6%減)とやや減少した。含水エタノール(注2)の国内販売量は、価格の上昇により1007万キロリットル(同3.3%減)とやや減少したが、10月は150万キロリットル(前年同月比22.0%増)と大幅に増加し、2015年9月以来の高水準となった。これは、7 月にブラジル国営石油公社ペトロブラスがガソリン卸売価格を引き上げたことで、競合する含水エタノールの価格競争力が高まっているためである。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、11月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.65レアル(93円〈11月末日TTS:1レアル=35円〉)とガソリン小売価格の同3.82レアル(134円)の70%(注3)を下回った。これにより、今後もエタノール需要が高まると見込まれることから、製糖企業によるサトウキビのエタノール仕向け割合が増加するとの見方が強まっている。

 現地報道によると、南米南部共同市場(メルコスール)とEUの自由貿易協定(FTA)は、12月中を目途に大筋合意を目指していたが、2018年へ持ち越される可能性が高まっている。EUは、同FTAにおいて、粗糖については10万トンの関税割当(枠内税率は1トン当たり98ユーロ〈1万3132円〈11月末日TTS:1ユーロ=134円〉〉で、現行のCXL割当枠(注4)の枠内税率と同率)を導入し、エタノールについては6年以内に60万トンの関税割当を導入し、このうち40万トンは化学工業向けとするとみられている。これに対し、UNICAは、粗糖の市場アクセスが改善されない場合、ブラジル砂糖産業は十分な恩恵を受けることができないと非難している。

 また、パリ協定に基づく温室効果ガス排出量の抑制などを目的とする新たな再生可能エネルギー法(RenovaBio)案が12月中旬、議会上院で可決された。同法案は、現行27%のガソリンへの無水エタノールの最低混合率を、2022年までに30%、2030年までに40%へ引き上げることなどが盛り込まれており、2019/20年度までに施行されるとみられている。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。
(注4)粗糖輸入国であったフィンランドなどのEU加盟に当たり協議、合意の下に設定された関税割当で、対象は、精製糖製造用の甘しゃ粗糖(ただし、インドはHSコード1701台のすべての品目)。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2017/18年度の砂糖生産量は大幅増、輸入量は大幅減の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は498万ヘクタール(前年度比5.0%増)とやや増加し、生産量は3億3769万トン(同10.1%増)とかなりの増加が見込まれている(表3)。砂糖生産量は、主要生産州で適度な降雨に恵まれ、製糖歩留まりの向上が見込まれていることから、2720万トン(同23.1%増)と3年ぶりの増加が見込まれている。
 砂糖輸入量は、生産量が増加することから、200万トン(同21.5%減)と大幅な減少が見込まれている。

 インド製糖協会(ISMA)によると、10〜11月の砂糖生産量は、精製糖換算で 395万トン(前年同期比42.0%増)と大幅に増加した。このうち、マハラシュトラ州では149万トン(同58.2%増)、ウッタルプラデシュ州では136万トン(同60.3%増)、グジャラート州では18万トン(同26.8%増)と、いずれも大幅に増加した(図4)。一方、カルナタカ州では68万トン(同0.3%増)と前年度並みであった。

 ISMAが11月下旬に発表した2017/18年度の砂糖需給見通しによると、砂糖生産量は、精製糖換算で2510万トン、砂糖輸入量は29万トンと見込まれている。

 現地報道によると、中央政府は、貿易業者に対する砂糖の保有在庫数量の上限の設定について、12月末までで終了することを検討している。これは、2017/18年度の砂糖生産量が増加するとの見通しなどから国内砂糖価格が下落傾向で推移している中、貿易業者から早期の終了を要請されたことによる。また、同政府は7月上旬、砂糖の輸入関税について、40%から50%に引き上げたが、さらなる引き上げを検討している。

表3 インドの砂糖需給の推移

図4 インドの地域別甘しゃ糖生産量(10 〜 11月)

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

中国

2017/18年度の砂糖生産量はかなり増加、 輸入量は大幅増の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、収穫面積が193万ヘクタール(前年度比5.5%増)とやや増加し、生産量は単収の増加も伴い、1億3700万トン(同8.3%増)とかなりの増加が見込まれている(表4)。

 てん菜についても、収穫面積は20万ヘクタール(同30.9%増)、生産量は1100万トン(同42.8%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。地域別では、主要生産地である内モンゴル自治区の増加が見込まれている。これらにより、砂糖生産量は、1109万トン(同9.8%増)とかなりの増加が見込まれている。

 砂糖輸入量は、依然として生産量が消費量を下回ると見込まれる中、期首在庫量が低水準にあることもあり、577万トン(同58.3%増)と大幅な増加が見込まれている。砂糖輸入については、2017年5月22日から3年間、世界貿易機関(WTO)協定に基づく関税割当(枠内関税率15%)の枠外で輸入される砂糖の関税率が95%まで引き上げられている(注)。中央政府は10月12日、2018年の砂糖の輸入割当数量を前年と同水準の195万トンに設定した。

 現地報道によると、政府は、2022年までのサトウキビおよびてん菜生産の機械化目標を公表した。これは、国産砂糖の生産振興の一環であり、サトウキビの植え付けについては、現行の40%から70%へ、てん菜の()(しゅ)については、同80%から98%へ、また、収穫作業については、サトウキビが同4%から20%へ、てん菜が同60%から90%へそれぞれ増加させることを目標としている。政府は、機械化の推進により、生産の拡大とともに、優良品種の栽培の促進や施肥およびかんがいなどの技術向上も目指している。

 また、現地報道によると、政府は2020年までに、ガソリンに10%エタノールを混合した燃料を全国的に普及させることを計画している。現在、ガソリンへのエタノール混合率を設定している省・自治区は11にとどまるとされており、同計画を達成するには、1900万キロリットル以上のエタノール供給量が必要と見込まれている。

(注)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に影響が生じているとして、ブラジル、豪州および韓国などの砂糖輸入先国を対象に実施した調査結果を踏まえ、50%であった枠外税率が95%に引き上げられた。ただし、開発途上の約190の国や地域(フィリピンやパキスタンといった従来中国と関係の深い貿易相手国を含む)については、一定の条件を満たせば対象外とされている。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2017/18年度の砂糖生産量は大幅増、輸入量は大幅減の見込み
 生産割当廃止後初年度となる2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜の収穫面積が185万ヘクタール(前年度比16.0%増)、生産量は、好天による単収の増加もあり、1億4162万トン(同20.1%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている(表5)。これにより、砂糖生産量は2096万トン(同23.8%増)と大幅に増加する一方、砂糖輸入量は226万トン(同28.8%減)と大幅な減少が見込まれている。

 欧州委員会は10月6日、砂糖を含む農産物の短期需給見通しを公表した。これによると、2017/18年度のてん菜生産量は、生産割当の廃止に伴う栽培面積の拡大と単収の増加が見込まれることから、1億3111万トン(同17.3%増)となり、砂糖生産量も2013万トン(同19.5%増)と大幅に増加する一方、輸入量は150万トン(同34.9%減)と、前年度の3分の2程度と見込まれている。輸出量は、域内消費量が大きく変わらない中、域内供給量の増加に加え、WTOの裁定により設けられた輸出上限が生産割当の廃止に伴い撤廃されることから、280万トン(同2.2倍)と見込まれている。ただし、輸出量は、国際価格とEU域内価格の動向に左右されるとみられる。

 現地報道によると、EUとメルコスールのFTAは、12月中を目途に大筋合意を目指していたが、2018年へ持ち越される可能性が高まっている。EUは、同FTAにおいて、粗糖については10万トンの関税割当(枠内税率は1トン当たり98ユーロ〈1万3132 円〉で、現行のCXL割当枠の枠内税率と同率)を導入し、エタノールについては6年以内に60万トンの関税割当を導入し、このうち40万トンは化学工業向けとするとみられている。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見込みおよび生産割合

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