2017/18年度の砂糖生産量は前年度並み、輸出量はわずかに減少の見込み
英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2018年2月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、874万ヘクタール(前年度比3.4%減)とやや減少し、生産量は、6億3560万トン(同3.3%減)と見込まれている(
表2)。
しかし、砂糖生産量は、4040万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同0.3%減)と前年度並みが見込まれている。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、世界的な輸入需要が弱まると見込まれ、2826万トン(同1.7%減)とわずかな減少が見込まれている。なお、11月からの輸出量の減少により、1月時点での中南部地域の砂糖在庫量は過去5年で最も高水準となっている。
ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)
(注1)が発表した2017年4月〜翌1月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は、多雨の影響から、5億8396万トン(前年同期比1.7%減)とわずかに減少したが、砂糖生産量は、3583万トン(同1.6%増)とわずかに増加した。エタノール生産量は、2533万キロリットル(同1.2%増)とわずかに増加した一方、輸出量も含めたエタノールの販売量は、2222万キロリットル(同0.1%減)と前年度並みとなった。含水エタノール
(注2)の国内販売量は、価格が上昇したものの、1292万キロリットル(同3.9%増)とやや増加した。
政府は1月、2017年9月に開始したエタノール輸入に対する20%の関税
(注3)について、撤廃する可能性を示唆した。この背景には、ブラジル国内でガソリン価格が上昇し、エタノール需要が高まる中、エタノール供給が
逼迫しつつあることがある。
現地報道によると、南米南部共同市場(メルコスール)とEUの自由貿易協定(FTA)の交渉妥結は、2019年へ持ち越される可能性が高まっている。これは、両者の政治的な事情によるもので、EUでは、議会選挙の結果、現政権の影響力が弱まるドイツに代わり、交渉に消極的なフランスが影響力を強める一方、南米でも、ブラジルとパラグアイが、大統領選挙を控えて4月以降内政に注力することが見込まれているため、双方の合意が早急に形成されなければ、交渉は一時的に休止されるとの見方がある。これに対し、2月下旬を目途に、同FTAは最終調整に向かうとの報道もある。同FTAでは、EUは、粗糖については、10万トンの関税割当(枠内税率は現行のCXL割当枠
(注4)と同率(1トン当たり98ユーロ〈1万3426円〈2018年1月末日TTS:1ユーロ=137円〉〉))を適用し、エタノールについては、6年以内に60万トンの関税割当を導入し、このうち40万トンは化学工業向けとなるとみられている。
また、新たな再生可能エネルギー法(RenovaBio)が2017年12月26日に成立し、2019/20年度までに施行するとみられている。同法は、現行27%のガソリンへの無水エタノールの最低混合率を、2022年までに30%、2030年までに40%へ引き上げることなどが盛り込まれている。政府は、国内のバイオ燃料生産および利用を促進し、パリ協定に基づく温室効果ガス排出量の削減を目指しており、こうした振興策やガソリンに対する価格優位性の高まりから、国内のエタノール需要は2030年には現在の2倍になると見込んでいる。2017年9月に発足したトウモロコシ由来のエタノール生産を振興する全国組織(UNEM)の幹部は、現在、国内で生産されるエタノールはほとんどがサトウキビ由来であるが、今後はトウモロコシ由来の需要が高まるとし、特に、マットグロッソ州では今後5年で年間30億〜40億リットルのトウモロコシ由来のエタノールが生産されると見込んでいる。
(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)政府は2017年8月23日、エタノール輸入に対し、年間60万キロリットル(四半期ごとに15万キロリットル)の無税の関税割当を設けるとともに、これを超過して輸入されるエタノールに対しては20%の関税を課すことを決定した。同関税は、エタノール在庫量の低下に伴い2010年に停止して以来の再導入で、2年間実施された後、見直しが予定されていた。同措置は、国内のエタノール生産量の減少やトウモロコシの国際価格の下落などにより米国からのトウモロコシ由来のエタノール輸入量が急増している状況を受け、UNICAや北東部の砂糖・エタノール製造企業などが、以前から政府へ実施を要請していたものである。
(注4)粗糖輸入国であったフィンランドなどのEU加盟に当たり協議、合意の下に設定された関税割当で、対象は、精製糖製造用の甘しゃ粗糖(ただし、インドはHSコード1701台のすべての品目)。