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幼児期の間食に関する現状と保護者の意識

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最終更新日:2018年4月10日

幼児期の間食に関する現状と保護者の意識

2018年4月

中村学園大学 教育学部 講師 桧垣 淳子

【要約】

 幼児期の子どもは、日常的に間食を摂取する習慣がある。実際に提供されているのは市販品であり、スナック菓子やアイスクリームなどの菓子類が多い。保護者は、子どもの好みを最優先に選んでいるが、同時に安全性や量の調節も重視している。間食は子どもの楽しみのためと考えており、栄養やエネルギー補給のためと認識している保護者は少ない。間食の意義を再認識する必要があると思われる。

はじめに

 現代の食をめぐる現状は多くの問題を含んでおり、望ましい食生活の実践が難しい状況にある1)2)。それは、子どもの「食」にも影響しており、栄養の偏りや食習慣の乱れ、肥満や痩身傾向の問題、1人で食事を取る「孤食」や家族が別々の料理を食べる「個食」、食べ方やマナーなどに対する教育力の低下など多くの問題が指摘されている1)2)3)。しかし、子どもは自分で「食」に留意することができないため、子どもの「食」の問題は大人の責任である。保護者をはじめとした大人自身が「食」に関心を持ち、望ましい食生活を実践する力を養わなければ改善しないと言えるだろう。「第3次食育推進基本計画」(2016)4)では、食品の大量破棄や日本の食文化継承などの課題の他に、20・30歳の若い世代に「食」に関する知識や意識、実践状況などの課題が多いことが指摘されている。この世代はこれから親になり子どもを育てていく世代であり、「食」への意識や実践力を高めていく必要がある。

 今回、「食」の中の「子どもの間食」に焦点を当てた理由は、同じく若い世代である大学生の「間食」に対する意識に危機感を持ったからである。大学生にとって、すでに間食はお菓子を意味しており、幼少期からスナック菓子やチョコレート、駄菓子などを食してきている。子どもの間食におにぎりやいりこ、チーズなどが出されることに驚き、お菓子が出されても驚かない世代である。しかし、大人とは異なり、子どもにとっての間食は、三度の食事では充足しきれないエネルギー・栄養・水分を補給する重要な役割がある。間食は、休息や気分転換、コミュニケーションの場、生活に潤いを与える「楽しみの時間」であるが、子どもにとっては「食事の一部」であることを大人が認識し間食を与えることが大切であろう。そこで、幼児期の子どもを持つ若い世代の保護者にアンケート調査を行い、子どもの間食に対する考え方、および実際に子どもに提供している間食の現状を把握し、今後、必要な取り組みについて検討する基礎資料を得ることとした。

【調査方法】
 対象者は、鹿児島市の私立幼稚園に通う未満児、年少、年中、年長クラスの子どもの保護者83人である。調査は平成27年7月に実施し、子どもの間食の現状(間食を与える頻度・時間・量・内容)▽保護者の間食に対する意識(間食を選ぶ際に重視すること、間食を与える際に優先すること、間食の捉え方、1日に必要な間食のエネルギー量を知っているか、間食を与える際に栄養、エネルギー量を考えているか)を尋ねた。統計処理は、それぞれの項目における分布の差を検討するために、X2検定を用いて検討した。なお、有意水準は5%未満とした。

1.調査結果・考察

(1)幼児期における間食の現状

ア.頻度・時間・量
 間食の摂取状況は、週に1〜2回程度かあまり与えない保護者も5%程度いるが、95%の保護者は、毎日もしくは週3回以上間食を与えており、幼児期の子どもは間食を摂取する習慣があることが分かった(図1)。時間を決めて与えている保護者の9割は、園から帰宅後すぐに間食を提供している。これは本研究対象が幼稚園児(園で過ごす時間は基本4時間であり、午後2時ごろには降園する)であり、降園時刻がちょうどおやつ時刻に重なること、また、昼食から2〜3時間経過し空腹感を感じる時であることが関係していると考えられる。夕方になり摂取すると夕食時の食欲に影響するので、理想的な摂取時間であろう。8割の保護者は1回の量を決めて与えており、食べ過ぎないように留意していることがうかがえるが、約15%は子どもが欲しがるだけ与えており間食の取り過ぎが懸念された。

図1 間食を与える頻度

イ.内容
 間食に市販品を与えることが多い保護者は9割以上であり、手作りする家庭は非常に少ない(図2)。1984年の調査5)においても、すでに市販品を与える家庭は多かったが、現在では、商品が豊富になりコンビニなどで手軽に購入できるようになったこと、家庭で手作りをする時間の確保が難しいことを考え合わせると、この傾向は強まっていると考えられる(図3)。市販品が多いと回答した保護者がよく与える間食としては、スナック菓子、アイスクリーム、ゼリー、せんべい類が上位にあげられた(図4)。アイスクリームやゼリーは、調査が夏季であったため多かったと思われる。チョコレート、ビスケット類、菓子パンは、約3割程度提供されていた。おにぎり、団子、ふかしイモ、とうもろこしなどの食べ物も提供されていたが、その割合は菓子類に比べて低い。この理由としては、子どもが好んで食べない、あるいは後述するように、保護者が間食を子どもの楽しみと考えているため、このような食べ物を間食として捉えていない可能性もある。ホットケーキ、ケーキは5%程度であり、子どもの間食としてあまり提供されていない結果となった。市販品を選ぶ際は子どもの好みが優先されているが、安全性や量を調節できることも重視しており、できるだけ身体によいもの、食べ過ぎないものを選ぶ配慮もうかがえた(図5)。

図2 与える間食は市販品が多いか、手作りが多いか

図3 間食に市販品を与える理由(複数回答)

図4 間食に提供することの多い食べ物(市販品が多いと回答した保護者、複数回答)

図5 間食を選ぶ時に重視すること(市販品を購入、複数回答)

 一方、手作りをしている保護者にその理由を尋ねると、「安心・安全」「子供が喜ぶ」、「手作りが好きである」を挙げた(表1表2)。手作りをする時に重視する点については、「簡単に作れる」「安全性」「子供が好きなもの」を挙げており、手作り派の保護者は、できるだけ手間をかけることなく、しかし子どもが喜ぶものを安全に与えたいという思いで手作りをしていることが分かった。間食時に与える飲み物としては、8割がお茶であり、水、牛乳が3割程度であった(図6)。

表1 間食を手作りする理由(複数回答、n=6)

表2 間食を作る時に重視すること(複数回答、n= 6)

図6 間食時に与える飲み物(複数回答)

(2)保護者の間食に関する意識

 子どもの間食は「栄養やエネルギーを補うため」よりも「楽しみのため」と捉えている保護者が有意に多く、先行研究6)と同様の結果となった(図7)。その意識が反映されたためか、保護者は、子どもの間食として1日に必要なエネルギー量を認識しておらず、カロリーを考慮して与えていないことが明らかになった(図8)。しかし、スナック菓子を皿に取り分けて与えていることや7割弱の保護者が量に配慮していること、お茶や水などのカロリーのない飲み物を与えていることを考えると、与え過ぎてはいけないといった意識が働いていると推察できる。栄養に関しては、「考えて与えている」と答えた保護者の割合が4割であり、意識者の割合も高くなっている。しかし、実際に与えている間食の内容は、栄養価よりも子どもの好む食べ物、特にお菓子類が中心であり、栄養を意識しているが内容にはあまり反映されていない結果となった。

図7 間食の促え方

図8 間食に関する保護者の意識

(3)まとめ

 現在の幼児期の子どもは間食をとる習慣があるが、7割の保護者は、間食を子供の楽しみのためと考えており、栄養・エネルギーを補うという意識は低かった。そのためか、間食の内容はスナック菓子やアイスクリーム、ゼリー、せんべいなどの市販されている菓子類が主であった。手づくりする時間がとれず手軽に与えることができる市販品を提供しているが、子どもの好きなものを安全性、量に配慮しながら提供するお母さんの姿がうかがえた。本調査を通して、間食の重要性と間食=菓子類ではないことを保護者に認識してもらう必要性が示された。

2.乳幼児の間食に関わる推奨内容

(1)間食の適量

 日本人の食事摂取基準(2015年度版)によると、乳幼児期に必要な1日の推定エネルギー量は、1〜2歳男児は950キロカロリー、女児は900キロカロリー、3〜5歳男児は1300キロカロリー、女児は1250キロカロリーである。(いずれも身体活動レベルU・ふつうである)間食の適量は、幼児の体格や食欲、活動量などにより異なるが、目安として1〜2歳児では1日の推定エネルギー量の10〜15%(約100〜150キロカロリー)、3〜5歳児では10〜20%(約150〜250キロカロリー)である。

(2)間食の回数と時刻

 幼児の場合、間食は1日1回(午後)が基本であるが、起床時間、活動時間、食欲など応じて1日2回(午前・午後)与えてもよい。時刻を決め規則的に与え、食事の時間から2〜3時間は空けることが望ましいとされる。

(3)間食の内容に関しての記述

○食事では取りにくい、牛乳や乳製品、野菜・果物を積極的に取り入れるとよい。間食に添える飲み物を牛乳にしたり、ヨーグルトを使ったり、あるいはプリンやゼリーなどの材料として使用してもよい。エネルギーが不足しがちな場合には、穀類やイモ類を取り入れる。例えば、パンケーキや白玉、焼き芋などでも子どもに喜ばれる。(子どもの栄養と食生活より7)

○生乳・乳製品、卵、果物、穀類、イモ類、豆類、小魚類など自然の味を生かしたものが望ましい。また、小麦粉、そば粉、ホットケーキミックスなどを利用して簡単な手作りの間食も提供したい。薄味で脂肪の少ない市販の菓子類も便利である。(子育て・子育ちを支援する小児栄養より8)

○望ましい間食の内容として「三度の食事で不足するエネルギー・栄養の補給と水分補給ができるもの▽消化吸収の良いもの▽衛生的で安全なもの▽甘味、塩味、うま味調味料などの使用が控えめなもの、子どもに満足感を与えるもの」とし、良質なたんぱく質や無機質の豊富な卵、乳製品を使用した手作りおやつとビタミン類の豊富な果物、あるいはイモ類・穀類などの糖質食品との組み合わせなどが適している。(子どもの食と栄養より9)
引用・参考文献
1)内閣府「食育基本法(2005)」
2)内閣府「第1次食育推進基本計画(2006)」
3)内閣府「第2次食育推進基本計画(2011)」
4)内閣府「第3次食育推進基本計画(2016)」
5)沢村元子、山沢和子、渡辺周一(1984)「附属幼稚園児の間食に関する調査」『東海学院大学・東海女子短期大学紀要』pp.21−30
6)高橋淑子(2000)「幼稚園児の間食摂取の実態と母親の意識」『駒沢女子短期大学研究紀要』(第33号)pp.41-49
7)高野陽他(2005)『子どもの栄養と食生活(第4版)』医歯薬出版株式会社pp.119−127
8)堤ちはる、土井正子編著(2009)『子育て・子育ちを支援する小児栄養』萌文書林pp.140−143
9)岡崎光子編著(2015)『改訂 子供の食と栄養』光生館pp.107−119
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