2017/18年度の見込み、砂糖生産量はほぼ横ばい、輸出量はわずかな増加
英国の調査会社LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2018年4月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は856万ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれているものの、北東部の干ばつの影響などから生産量は6億4031万トン(同1.8%減)とわずかに減少すると見込まれている(
表2)。砂糖生産量(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉)は、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え製糖歩留まりの向上により、4147万トン(同0.5%減)と北東部の減産分をカバーし、ほぼ横ばいとなると見込まれている。砂糖輸出量は、世界的に輸入需要が弱まるとされているものの3073万トン(同2.0%増)とわずかな増加が見込まれている。現地報道によると、次のサトウキビ収穫期を前に世界的に砂糖価格が低水準に推移しているため、粗糖の輸出を控え、国内の食品製造企業向けの精製糖の生産および販売を増やしている企業もある。
UNICAが発表した2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は多雨の影響から5億9631万トン(同1.8%減)とわずかに減少したが、砂糖生産量は3606万トン(同1.2%増)とわずかに増加した。製糖業者におけるエタノール生産量は2609万キロリットル(同1.7%増)、輸出量も含めたエタノールの販売量は2641万キロリットル(同1.7%増)と、ともにわずかに増加した。このうち、含水エタノール
(注1)の国内販売量は、価格上昇にもかかわらず、1546万キロリットル(同7.9%増)とかなり増加した。これに関連して、政府は1月、2017年9月に開始した輸入エタノールに対する20%の関税
(注2)について、撤廃する可能性を示唆した。この背景には、ブラジル国内でガソリン価格が上昇し、エタノール需要の高まりによりエタノール需給が
逼迫しつつあることがある。2017年のエタノール輸入量は182万キロリットル(前年比2.2倍)となり、現在の基準で統計を取り始めた2004年以来初めて輸出量を上回った。
EUとのFTA交渉、進展なし
南米南部共同市場(メルコスール)とEUとの間で交渉が続く自由貿易協定(FTA)については、3月にアルゼンチンで開催された20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)の機会に関係国間で協議や意見交換が行われたが、双方の立場に隔たりが大きく、新たな進展は見られなかった。一部報道によると、最終合意は2019年へ持ち越される公算が高まっている。EUでは、2017年9月の連邦議会選挙の結果によって政権の求心力が低下したドイツに代わり、交渉に消極的とされるフランスの存在感が高まっており、他方、南米ではブラジルが10月に大統領選挙を控えるなど、双方ともに当面は交渉を先送りせざるを得ない政治的な理由がある。
UNICA、インドとパキスタンの輸出支援策に懸念
UNICAは、「インドとパキスタン両政府が実施する砂糖輸出に対する支援策が、世界的な砂糖価格の下落に拍車をかけている可能性がある」との懸念を示し、政府や関係国に対し世界貿易機関(WTO)への提訴を含めた対応を要請していくことを示唆した。
(注1)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注2)政府は2017年8月23日、エタノール輸入に対し、年間60万キロリットル(四半期ごとに15万キロリットル)の無税の関税割当を設けるとともに、これを超過して輸入されるエタノールに対しては20%の関税を課すことを決定した。同措置は、国内のエタノール生産量の減少やトウモロコシの国際価格の下落などにより米国からのトウモロコシ由来のエタノール輸入量が急増している状況を受け、UNICAや北東部の砂糖・エタノール製造企業などが、以前から政府へ実施を要請していたものである。同関税は、エタノール在庫量の低下に伴い2010年に適用停止して以来の再導入であり、2年間の実施に見直しが予定されていた。