北大東製糖株式会社の「製糖終了報告書」のうち、作型別品種別生産実績を参照し、各品種の収穫面積・収穫量およびそれらを基に算出された単収の推移をまとめた。ここでは、北大東島の主要な作型で、品種別生産実績が5年以上連続しデータの充実した株出し栽培に関し解析する(
図3)。
北大東島の主要な品種であるF161の単収は、島全体の単収とほぼ同様の推移を示している。また、豊作年の平成28/29年期に高い単収を示すなど品種能力の低下も見られなかった(
図3左上)。そこでF161を標準品種とし、F161に対する相対値で各品種の単収の推移を見た(
図3左下)。これによると、平成20年前後より品種が多様化し、F161に対して高単収となる品種が増加している。このことは育成年代が進むにつれて(NiH25を除き)高単収となる傾向からも分かる(
図3右下)。F161以外のすべての品種の相対単収を平均し、その推移を見ると、20年以降、株出し栽培の単収が高かった(
図3右上)。これらのデータから近年の育種の成果が明確に示された。今後はこのようなデータを気象データと併せて解析し、品種構成最適化プログラムを作り、品種構成をシミュレーションしていく予定である。
なお、非常に興味深いことに、これらの資料には県の統計資料で「その他」に分類されるような奨励品種外の品種・系統、構成面積が1%以下である品種についても記録されている。このような貴重なデータが蓄積されるのは南北大東島のサトウキビ圃場が野帳上で一筆圃場管理され、かつ面積や品種などの情報が農務担当者により正確に把握されているからに他ならない。
製糖工場関係者は、「農家は品種に一番関心がある」と述べる一方で、篤農家は品種を変えても高単収を挙げるというのも事実である。品種別生産実績を眺める際にはこの点も考慮して生産現場に役立つデータになり得るか、生産現場へのアウトプットを考える必要がある。