2017/18年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
生産割当廃止後の初年度となる2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜の収穫面積は172万ヘクタール(前年度比17.6%増、前月予測と同水準)、生産量は好天による単収の増加もあり1億3440万トン(同25.7%増、前月予測と同水準)と、ともに大幅増が見込まれている(
表5)。これにより、砂糖生産量は2149万トン(同22.4%増、前月予測と同水準)、輸出量は381万トン(同2.5倍、前月予測比7.9%減)と、ともに大幅増が見込まれている。
砂糖卸売価格、生産割り当て廃止以降下落が続く
欧州委員会がまとめた2018年2月のEU域内の砂糖卸売価格(以下「卸売価格」という)は、前年同月比25.2%安の1トン当たり372ユーロ(4万9848円)となった。卸売価格は、これまで砂糖の国際価格(ロンドン白糖価格)の影響を受けにくく、同500ユーロ(6万7000円)前後で安定的に推移していたが、2017年10月の生産割り当ての廃止により国際価格との相関性が高まり、国際価格と連動して下落を始めていた。10月以降の卸売価格は、国際価格を上回った状態で推移しているものの、2月時点の価格差は1トン当たり15ユーロ(2010円)程度まで縮小しており、今後、さらに縮まると予想される。
現地報道によると、製糖業者の多くがこうした状況に頭を抱えており、関係者は「現在の価格水準は、生産コストの削減や販売量を増やしても利益を確保できるような状況でない」としている。
寒波の影響で播種作業が大幅に遅延
現地報道によると、てん菜の
播種期に当たる3月に広範囲で寒波に見舞われ、平年より播種作業が大幅に遅れている。てん菜の主要生産国であるフランスでは、播種の開始が平年より20日遅れとなった。播種が遅れると栽培期間が短くなるため、てん菜生産量が3%程度減産する見込みで、この状況は他のEU諸国でも同様であることから、2018/19年度の砂糖の需給予測に影響が出るとみられる。
欧州委員会、ネオニコチノイド系農薬の使用禁止を決定
欧州委員会は、欧州各地でミツバチが減少している事態
(注)に対処するため、2018年4月27日、ネオニコチノイドと呼ばれる農薬のうち、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムを主成分とする薬剤(以下「対象薬剤」という)について、すべての作物への使用を禁止すると公表した。周知期間などを考慮すると、使用が禁止されるのは早くとも今年の秋以降になるとみられる。なお、温室内での使用や、対象薬剤以外のネオニコチノイドの使用は引き続き認められる。
ネオニコチノイドは、根から吸収され植物全体に浸透する特性から、種子にコーティングする、種子をまく溝の中に散布するなどの方法で施用される。害虫に直接散布したり、葉面散布したりする農薬と比べ、効果に持続性があり散布回数を減らせるなどの利点から、世界で広く使用されている。てん菜生産においては、ウイルス性の萎黄病を媒介する害虫を防除する最も有効な薬剤とされている。しかし、欧州食品安全機関が2月にまとめた報告書では、対象薬剤について「屋外での使用は野生種を含めミツバチへのマイナスの影響を排除できない」と結論付けられた。
今回の決定を受け、EU最大のてん菜生産国であるフランスの農業団体は、「昆虫を媒介するウイルス性の萎黄病に感染するリスクが高まり、てん菜の収量が平均で12%減少するだろう」としている。
(注)蜂群崩壊症候群と呼ばれる現象。ミツバチの方向感覚などに何らかの障害が起き、巣に戻れなくなると考えられている。ミツバチは多くの植物の受粉に関わるため、その個体数の減少は養蜂業のみならず、農業や生態系に与える影響が大きい。