鹿児島県における平成29年産さとうきびの生産状況および実績について
最終更新日:2018年7月10日
鹿児島県における平成29年産さとうきびの生産状況および実績について
2018年7月
【要約】
鹿児島県の平成29年産さとうきびは、7月の干ばつや8月以降の台風などの影響を受けたことから、生産量は前年比83%の52万8000トンとなった。
また、台風などに伴う茎葉の被害が大きかったことや11月以降の日照不足により、糖の生成・蓄積が進まなかったことから、全域的に低糖度となり、平均糖度は前年を1.59度下回る12.39度であった。
1.さとうきびの位置付け
さとうきびは、他作物に比べて台風や干ばつに強く、鹿児島県南西諸島の6割強の農家が生産している基幹作物であり、製糖会社と共に、地域経済を支える重要な役割を担っている。
さとうきびの平成28年農業産出額は約142億円(前年比129%)で、耕種部門の第4位となっている(1位:米、2位:さつまいも、3位:茶〈生葉〉)。
鹿児島県では、平成18年6月に27年産を目標年とする「鹿児島県さとうきび増産計画」(以下「増産計画」という)を策定し、生産者、製糖会社、関係機関・団体と連携しながら、栽培面積の確保や単収向上などの取り組みを進めてきた。
しかし、23年産以降、台風などの気象災害や病害虫被害などにより、増産計画で定めた目標を達成できない状況が続き、早期の生産回復・増産に向けた取り組みが課題となっていたことから、島ごとに、これまでの計画達成状況を検証・評価するとともに、現状と課題およびその解決方策などを整理し、27年12月に37年産を目標年とする計画として改定し、諸般の施策を推進しているところである。
2.平成29年産さとうきびの生育状況
(1)種子島地域
ア 生育初期〜分けつ
生育初期は、3月の気温が低めで推移したことから萌芽は遅れ気味であった。5〜6月の気温は平年より低く、6月は多雨で推移した。7月以降の生育状況は良好に推移した。
イ 伸長期
7月中旬の仮茎長は平年を上回って推移したが、台風の影響などから9月末時点での仮茎長は平年を大きく下回って推移した。
ウ 登熟期
11月中旬以降の気象も低温、多雨、寡照で経過したことから、登熟が遅れた。
(2)奄美地域
ア 生育初期〜分けつ
生育初期は、比較的、気温・日照条件ともに恵まれ、おおむね順調に生育したものの、 島ごと、栽培型ごとにばらつきが見られた。
イ 伸長期
7〜9月は気温・日照時間は平年を上回ったものの、南部における7月の干ばつや8月以降の台風の影響などから、平年より生育が遅れた。
ウ 登熟期
10〜12月にかけ、気温は平年並みであったが、日照時間は平年を下回った。また、10月下旬の台風の影響により葉部裂傷などの被害が発生したことから登熟が遅れた。
3.平成29年産さとうきびの生産実績
(1)県全体
収穫面積は9877ヘクタール(前年比99%)、生産量は52万8053トン(同83%)、10アール当たり収量は5346キログラム(平年比104.2%)となり、生産量、10アール当たり収量ともに、増産計画の目標(29年産)を下回った(
図1)。
なお、生産量の99%(52万1923トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場で集荷されている。
栽培型別の収穫面積は、春植えが1662ヘクタール(構成比17%)、株出しが7105ヘクタール(同72%)、夏植えが1110ヘクタール(同11%)であった(
図2)。
品種別の収穫面積は、農林8号が38%を占め、次いで農林23号の21%、農林22号の14%、農林17号の2%の順であった。平成16年産で約7割を占めていた農林8号の比率が年々減少し、各地域の気象条件などに適した新たな品種への移行が進みつつある(
図3)。
(2)各島の状況
ア 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)
収穫面積は2294ヘクタール(前年比95%)で、生産量は11万6708トン(同74%)と前年産から大きく減少した。10アール当たり収量は5088キログラム(平年比84%)であった。
株出し比率は71%で、品種別では、農林8号が66%、農林18号が17%、農林22号が16%を占める。
イ 奄美大島(奄美市、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)
収穫面積は599ヘクタール(前年比102%)、生産量は2万9949トン(同103%)で、10アール当たり収量は5002キログラム(平年比128%)であった。
株出し比率は67%で、品種別では、農林22号が28%、農林23号が23%、農林17号が16%を占める。
ウ 喜界島(喜界町)
収穫面積は1430ヘクタール(前年同)、生産量は8万675トン(前年比84%)となり、10アール当たり収量は5640キログラム(平年比101%)であった。
株出し比率が70%を占める一方、夏植えの比率も20%と高い。品種別では、農林23号が33%、農林8号が20%を占める。
エ 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)
収穫面積は3471ヘクタール(前年比97%)で県全体の35%を占め、島別では最も多い。生産量は19万1995トン(同86%)となり、10アール当たり収量は5531キログラム(平年比122%)であった。
株出し比率は75%で、品種別では、農林8号と農林23号がそれぞれ34%を占める。
オ 沖永良部島(和泊町、知名町)
収穫面積は1657ヘクタール(前年比104%)、生産量は8万5000トン(同88%)で、10アール当たり収量は5130キログラム(平年比105%)であった。
株出し比率は68%を占める一方、夏植えの比率も22%と高い。品種別では、農林8号が42%、農林22号が38%を占める。
カ 与論島(与論町)
収穫面積は425ヘクタール(前年比101%)、生産量は2万3725トン(同73%)と前年産から大きく減少した。10アール当たり収量は5579キログラム(平年比107%)であった。
株出し比率は82%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が64%を占める。
(3)ハーベスタによる収穫の状況
さとうきびの労働時間の約3割を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用してハーベスタの導入が進められている。
また、県では平成23年度から、低コストで持続的な生産体制の確立を図るため、耐用年数を経過したハーベスタの長寿命化措置(機能向上)に向けた事業を実施しており、29年度までに48台の機能向上を支援した(23年度:10台、24年度:14台、25年度:5台、26年度:8台、27年度:3台、28年度:2台、29年度:6台)。
この結果、29年産では、収穫面積全体の93%、約9150ヘクタールでハーベスタ収穫が行われており、島別に見ると、徳之島では最も高い97%となっている。
4.製糖工場の操業状況
分みつ糖製造は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。
分みつ糖工場における平成29/30年期の原料処理量は52万1923トンで、前年から10万8264トン減少した。平均買入糖度は12.39度で、前年から1.59度低くなったほか、一部の島では、品質取引が始まって以来の最低糖度を記録するなど、産糖量に大きく影響した(
表4)。
おわりに
鹿児島県では、関係機関・団体と一丸となり、各種補助事業などを活用して、収穫面積の確保や土づくりなどの基本技術の励行などによる単収向上対策を推進するとともに、農業機械の導入、製糖関連施設の整備などへの支援などの取り組みを積極的に推進しているところである。
今後とも、さとうきび生産農家の経営の安定と、製糖会社等関連産業の維持発展を図るため、増産計画で定めた平成37年産の目標達成に向け、大規模経営体・農作業受託組織等担い手の育成や、農業共済制度への加入促進による「経営基盤の強化」、機械化一貫体系の普及・確立や地力増進による「生産基盤の強化」、病害虫防除対策および鳥獣被害対策の推進や優良品種の育成・普及による「技術対策」などに取り組むこととしている。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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