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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年6月時点予測)

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最終更新日:2018年7月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年6月時点予測)

2018年7月

 本稿中の為替レートは2018年5月末日TTS相場の値であり、1米ドル=110円(109.70円)、1ユーロ=128円(128.23円)、1インド・ルピー=1.77円、1ブラジル・レアル=29.41円、1元=17.29円、1ポンド=149円(148.56円)である。

ブラジル

2017/18年度、砂糖生産量はわずかに減少、輸出量はわずかに増加の見込み
 2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、前月予測からわずかに上方修正(0.1%増)され、857万ヘクタール(前年度比1.1%増)とわずかな増加が見込まれている。しかし、サトウキビ生産量は、北東部の乾燥した天候の影響などから6億4086万トン(同1.7%減)とわずかな減少が見込まれている(表2)。

 砂糖生産量は、北東部では前年度比18%近い減産が見込まれることから、ブラジル全体では4149万トン(同0.4%減)とわずかな減少が見込まれている。世界的な供給過剰に対する懸念の高まりを受け、国際価格が下落基調にある中、砂糖輸出量は、国内消費量の減少に伴い、3079万トン(同2.2%増)とわずかな増加が見込まれている。

 なお、2018/19年度の砂糖生産量は、エタノール需要の増加を受けてエタノール生産との競合が高まり、3500万トン程度まで減少すると見込まれている。

ストライキの影響は限定的も、製糖業界は懸念
 5月21日から始まったトラック運転手らによるストライキ(注)は5月末、政府が燃料価格の引き下げや減税といった支援策を表明したことで、ようやく収束する見通しとなった。

 一連のストライキによって、港湾の粗糖在庫がほぼ底を突いたほか、製糖工場の操業停止やサトウキビ収穫の遅滞といった影響が発生し、5月後半のサトウキビ生産量とエタノール生産量には、平年比 1〜2割程度の減少が見られた。しかしUNICAは、今年度の粗糖生産を大きく減少させるほどの影響はないとしている。

 一方で、現地報道によると、ディーゼル油価格は引き下げられたものの、物流業界の要請を受け、輸送賃が2割近く引き上げられると見込まれている。世界的な供給過剰で粗糖の輸出価格が低迷する中、このようなコスト上昇が生じると、製糖企業の収益悪化につながる可能性がある。加えて、ディーゼル油価格の引き下げによってエタノールが割高になると、エタノール需要が低下し、結果的に、製糖業者のエタノール増産意欲が減退する可能性も示唆されている。

(注)ディーゼル油価格の値上げに抗議するトラック運転手らが5月21日から始めたストライキは、全土の高速道路や主要な幹線道路を封鎖する大規模なものへと発展し、物流網のみならず社会・経済の混乱を招いた。詳細は機構Webページ掲載「海外情報」を参照。
 (https://alic.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002230.html


製糖業者、環境汚染で罰金
 サンパウロ州環境公社は、中国資本系列のMeridiano Mill社に対し、サトウキビからエタノールを抽出する際に発生する蒸留廃液(vinasse)の流出によって河川を汚染したとして、19万2000レアル(565万円)の罰金を科した。

 現地報道によると、同社の配管の一部が破損し、敷地外の河川に蒸留廃液が流出したことで、河川の酸素濃度が低下し魚が大量死したとされる。同社は、魚の大量死については把握していなかったとしているが、今回の事件を受け、早急に検証チームを設置し、環境への影響を最小限に食い止めるよう全力を尽くすとしている。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2017/18年度、砂糖生産量は大幅増、輸出量もかなり増加の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ生産については、収穫面積は483万ヘクタール(前年度比11.7%増)とかなりの増加が見込まれる上、生産量は、十分な降雨を得られたことで、3億9272万トン(同28.3%増)と大幅な増加が見込まれている(表3)。

 砂糖生産量は、サトウキビ生産の増加を受け、3429万トン(同56.9%増)と大幅に増加すると見込まれている。砂糖輸出量は、前月予測からは25%近く大幅に下方修正されたものの、生産量の増加に伴う在庫の積み上がりを背景に、254万トン(同13.9%増)とかなりの増加が見込まれている。

砂糖300万トンの調整保管を実施
 インド政府は5月22日、国内砂糖供給のダブつきを抑制するために、300万トンの砂糖(年間生産量の1割程度に相当)を1年間保管すると発表し、調整保管が行われることとなった。実施に当たっては、製糖業者が保管に要した経費を政府が補助するとしており、121億5000万ルピー(215億550万円)の予算措置を行う見込みである。

 これまでインド政府は、国内砂糖価格の下落を防ぐために、サトウキビ出荷量1トン当たり55ルピー(97円)の補助金の直接交付や、砂糖の最低販売価格の設定などを行ってきた。この他にも、需給の引き締めを図るために輸出関税を撤廃したりするなど、さまざまな対応策を矢継ぎ早に打ち出してきたものの、期待する効果が得られなかったことから、今回、調整保管の実施に至ったとみられる。

 また、詳細については言及されていないが、政府は今後、製糖企業の利払いの肩代わりや、負債償還期限の延長により、製糖企業の経営を支えるとともに、バガス、糖蜜などの副産物やエタノールに対する付加価値税(消費税に相当)を減税して需要喚起を図るなど、砂糖需給の引き締めを図るべくさらなる対策を打ち出すとしている。

中国への砂糖輸出に活路
 6月1日付けの現地報道によると、インド製糖協会(ISMA)は、中国の製糖企業25社と、インドから中国へ向けた砂糖輸出の可能性について協議したとみられる。現在、中国が設定している砂糖輸入関税について、ISMAは削減の可能性を言及している。

 この協議の1週間前に、両国首脳は非公式に会談しており、インド政府は、700万トン近い砂糖の余剰在庫のうち、150万トン余りを中国向けに輸出したいという意向を伝えたとみられる。

砂糖相場の下落、製糖業者に打撃
 サトウキビの主要な産地であるウッタルプラデシュ州では、記録的な増産により、砂糖価格が下落し、製糖業者の一部では、生産者へのサトウキビ代金の支払が滞るなど、経営への影響が見られている。現地報道によると、このまま砂糖価格の低迷が続けば、次年度の操業が困難になることから、契約するサトウキビ生産者に対し、次年度の作付けを減らすよう指示を出している製糖業者もあるという。

 また、国内の銀行各社は、このまま砂糖価格の低迷が続き、製糖業者の業績に改善が見られなければ、運転資金の融資を停止するとしており、製糖業者や生産者にとって予断を許さない状況となっている。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2017/18年度、砂糖生産量はかなり増加、輸入量はかなり減少の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)においては、サトウキビについて、収穫面積は123万ヘクタール(前年度比4.5%増)、生産量は7678万トン(同4.2%増)と、ともにやや増加が見込まれている(表4)。てん菜については、収穫面積は19万ヘクタール(同10.7%増)、生産量は959万トン(同8.7%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、依然として消費量を大きく下回る水準ではあるものの、1103万トン(同11.5%増)とかなりの増加が見込まれている。砂糖輸入量は、3〜4月にかけて輸入量が増加したこともあり、前月予測からは上方修正されたものの、砂糖に対する追加関税措置(2017年5月22日から3年間、関税割当〈枠内税率15%〉の枠外で輸入される砂糖に対し、反ダンピング関税(注)を課している)の影響を受け、532万トン(同8.8%減)とかなりの減少が見込まれている。

 中国砂糖協会によると、2017年10月〜翌年 5月末の累計砂糖生産量は1030万4200トン(甘しゃ糖915万4500トン、てん菜糖114万9700トン)となった。地域別に見ると、甘しゃ糖は、広西チワン族自治区:603万トン、雲南省:206万トン、広東省:87万トンで、てん菜糖は、新疆(しんきょう)ウイグル自治区:54万トン、内モンゴル自治区:48万トン、黒竜江省:7万トンとなっている。

(注)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に損害が生じ、またはその恐れがあるとして、ブラジル、豪州および韓国などの砂糖輸入先国を対象に実施した調査結果を踏まえ、50%であった枠外税率に45%の追加関税を課した。ただし、2年目は40%、3年目は35%と段階的に引き下げられる予定となっている。なお、追加関税について、開発途上の約190の国・地域(フィリピンやパキスタンなど以前から中国と関係の深い国も含む)については、一定の条件を満たせば除外される。

砂糖の国内外価格差、拡大
 中国農業農村部は「中国農産物需給動向分析月報」の中で、2018年1〜5月までの砂糖価格や輸入の動向について発表した。

 これによると、2018年4月の砂糖の国内平均価格は1トン当たり5609元(9万6980円)と、前年同月比15.3%安、前月比2.9%安となった。また、ブラジル産砂糖の輸入価格(到着港税負担後、関税割当内)は、国際市況の下落を受け、同3185元(5万5069円)と前月比5.4%安となり、国内価格との価格差は拡大した。

 輸入量については、1、2月は前年同月を大幅に下回っていたものの、3月以降急増し、4月は47万トン(前年同月比2.4倍)と大幅な増加を記録した。

 なお、砂糖相場は低迷しているものの、サトウキビの主産地である広西チワン族自治区や雲南省におけるサトウキビ生産者の作付け意欲は、引き続き安定しているとしている。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2017/18年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 生産割当廃止後の初年度となる2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、生産意欲の増進を受け、てん菜の収穫面積は173万ヘクタール(前年度比18.2%増)、生産量は1億3459万トン(同25.9%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている(表5)。

 これにより、砂糖生産量は2154万トン(同22.7%増)、輸出量は381万トン(同2.5倍)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 なお、2018/19年度のてん菜生産については、春先の低温による作付けの遅れが懸念されていたが、天候の好転により、遅れは回復しつつあるとしている。

大手製糖業者、増収増益を記録
 ドイツの大手製糖業者であるSudzucker社は5月22日、2017/18年度(3月〜翌2月)の業績について、売上高は前年度比7.8%増の70億ユーロ(8960億円)、営業利益は同4.5%増の4億4500万ユーロ(569億6000万円)と発表した。これは、2017年12月時点の同社見込みを上回る結果となった。中でも製糖部門の売上高は、てん菜集荷量の増加を受け、30億1700万ユーロ(3861億7600万円、同8.7%増)とかなり増加した。

 同社はこれについて、年度終盤は砂糖相場の低迷による売上減も記録されたものの、上半期の業績が好調だったことから、全体としては前年度を上回る結果になったとしている。今後の見通しについては、世界的な供給過剰に加え、ユーロ高米ドル安で推移する為替相場の影響から、EU産の砂糖は、輸出市場では不利な環境に置かれることになるものの、今後、需給環境は徐々に回復するだろうと楽観視している。

英国、糖類を含む飲料への課税を開始
 英国公衆衛生庁は2018年4月、糖類を含む飲料(注)に対する課税を開始すると発表した。また、5月には、糖類を含む飲料や乳飲料、植物性の代替ミルクの糖類含有率とカロリーについて、2021年に向けた具体的な削減目標を示した(表6)。

 4〜18歳までの児童の1日当たり糖類摂取量が、同庁が定めている基準の2倍を超えていることなどから、同庁は、児童の糖類摂取経路において、比較的大きなシェアを占める「飲料」に対し、糖類含有率の上限を設け、児童の健康増進を図りたいものとみられる。飲料の糖類含有率を減らしても、飲料の摂取量自体が増加してしまえば意味がないことから、同庁は、1容器当たりのカロリーの上限を設けたとみられる。こうした上限の設定は、アイスクリームやヨーグルトといった乳製品ですでに導入実績があり、糖類摂取量の減少に効果を発揮している。

 今後、飲料メーカーは、糖類含有率を下げる ▽代替甘味料を用いる▽容器の容量を減らす−などの対応を迫られることになるとみられる。

(注)対象となるのは、100ミリリットル当たり5グラム以上の糖類(スクロース、グルコース、フラクトース、ラクトース、ガラクトース)を含む飲料。

表5 EUの砂糖需給の推移

表6 課税額と削減目標

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年4月時点)

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