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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年7月時点予測)

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最終更新日:2018年8月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年7月時点予測)

2018年8月

 本稿中の為替レートは2018年6月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.77円、1ユーロ=129円(129.41円)である。

ブラジル

2017/18年度、砂糖生産量はほぼ横ばい、輸出量はわずかに増加の見込み
 英国の調査会社 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2018年7月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、857万ヘクタール(前年度比1.1%増)とわずかな増加が見込まれている(表2)。しかし、サトウキビ生産量は、北東部で乾燥が長く続いた影響などから6億4086万トン(同1.7%減)とわずかな減少が見込まれている。砂糖生産量(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉)は、サトウキビの砂糖仕向け割合の増加などにより、4149万トン(同0.4%減)とほぼ横ばいと見込まれている。砂糖輸出量は、国際価格が下落しているものの、国内消費量の低迷などから、在庫を抱えるリスクを回避したいとの思惑が働き、3079万トン(同2.2%増)とわずかな増加が見込まれている。

エタノール生産量、2030年には540億リットルに倍増
 政府関係機関の調査によると、再生可能エネルギー促進政策「Renova Bio」プログラムにより、今後、エネルギー関連産業への投資の活発化が予想されるほか、ガソリンとエタノールの混合燃料で走行可能なフレキシブル燃料車の普及に伴うエタノール販売量の増加などから、エタノール生産量は2030年までに540億リットルに達する可能性があると報告された。現在、ブラジルのエタノール生産量は年間約270億リットルで、主にサトウキビが原料に使われているが、今後はトウモロコシを原料とするエタノール生産も拡大すると予測されている。サトウキビとトウモロコシは収穫期が異なるため、双方を原料としてエタノールが生産できる工場を整備できれば、現在、エタノール生産のほとんどを担っている製糖工場にとっては通年操業が可能となり、生産者にとっては作付けの選択が広がり所得の向上が期待できる。

EUとのFTA交渉、合意に向け重要な局面に差し掛かる
 7月中旬、ブラジルなど南米4カ国で構成される南米南部共同市場(メルコスール)とEUによる自由貿易協定(FTA)の交渉会合が、ベルギーのブリュッセルで開催された。現地報道によると、アルゼンチンのホルヘ・マルセロ・フォリー外相は「われわれは合意の均衡点に達し、今後は最終的な詰めの作業に入るだろう」と述べ、また、EUの交渉官は9月には合意に達するのではないかという見方を示したとされる。EU側は砂糖やエタノール、牛肉の輸入増加に対する農業団体の反発が強く、メルコスコール側は自動車市場のEUへの開放に懸念を示していたため、これまでの交渉は難航していたが、今回の会合でようやく合意に向け大きく前進した。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2017/18年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ生産については、収穫面積は483万ヘクタール(前年度比11.6%増)とかなりの増加が見込まれ、生産量は主要生産州で適度な降雨に恵まれたことから、3億9332万トン(同28.5%増)と大幅な増加が見込まれている(表3)。砂糖生産量は、サトウキビの増産を受け、3483万トン(同59.4%増)と大幅な増加が見込まれている。生産量の増加に伴う在庫の積み上がりを解消するため、政府が製糖業者に対し200万トンの最低輸出義務を課すなどの措置を講じていることから、砂糖輸出量は259万トン(同16.2%増)と大幅な増加が見込まれている。

ISMA、2018/19年度の生産見通しを公表
 インド製糖協会(ISMA)が7月に公表した2018/19砂糖年度の生産見通しによると、収穫面積は544万ヘクタール(前年度比7.8%増)とかなりの増加が見込まれ、砂糖生産量は3500万〜3550万トンに達すると見込まれている。砂糖生産量を州別に見ると、最大産地のウッタルプラデシュ州は収穫面積の増加に加え、サトウキビの高収量品種の普及により前年度と比べ約100万トン増の1330万〜1350万トン、マハラシュトラ州は前年度並みの1100万〜1150万トン、カルナタカ州は前年度と比べ約80万トン増の448万トンと見込まれている。ISMAは、「これらは降雨やかんがい用水の利用などについて最適な条件で予測したものである」と説明し、最新の長期気象予報を考慮した、より精度の高い生産見通しを9月ごろに発表するとしている。

政府、サトウキビの買い取り価格の引き上げを決定
 政府は7月、2018/19砂糖年度から現行のサトウキビの適正価格(FRP)を20ルピー引き上げ、100キログラム当たり275ルピー(487円)とする案を閣議決定した。FRPは、製糖業者の生産コストなどを勘案して定められており、この水準を下回る価格でサトウキビを買い取ることは違法とされる。なお、新しいFRPでは、プレミアム価格が上乗せされる原料の基準糖度(単位重量当たりの砂糖回収率)も、現行の9.5%から10%に引き上げる見直しが行われ、価格引き上げによる製糖業者への影響を軽減する措置も図られた。なお、基準糖度が10%を超える原料は、0.1%ごとに100キログラム当たり27.5ルピー(49円)が上乗せされる。

 今回の決定を受け、ISMAは声明を発表し、「砂糖1キログラム当たりの卸売価格(工場出荷時)が少なくとも35ルピー(62円)で推移しない限り、引き上げられたFRPを支払う財源を確保することができない」との懸念を示した。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2017/18年度、砂糖生産量はかなり増加、輸入量はかなり減少の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)においては、サトウキビについて、収穫面積は123万ヘクタール(前年度比4.5%増)、生産量は7678万トン(同4.2%増)と、ともにやや増加が見込まれている(表4)。てん菜について、収穫面積は19万ヘクタール(同10.7%増)、生産量は959万トン(同8.7%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。砂糖生産量は、依然として消費量を大きく下回る水準ではあるものの、1115万トン(同11.0%増)とかなりの増加が見込まれている。砂糖輸入量は、砂糖に対する追加関税措置(後述)の影響を受け、544万トン(同6.6%減)とかなりの減少が見込まれている。

 中国砂糖協会によると、2017年10月から翌6月までの累計砂糖生産量は1031万100トンで、うち甘しゃ糖は916万400トン、てん菜糖は114万9700トンとなった。

中国政府、追加関税措置をすべての国に適用へ
 中国政府は7月16日、タイやブラジル、豪州などから輸入する砂糖に対し課している追加関税措置について、8月からすべての国に適用すると発表した。

 近年の中国における砂糖の輸入増加は、旺盛な砂糖消費に支えられたものだけでなく、労働費の上昇によって生産コストが上昇し、輸入品との間に非常に大きな価格差が生まれたことも大きな誘因となったと指摘されていた。このため、政府は2017年5月からの3年間、海外から輸入される関税割当外(税率50%)の砂糖に対し最高45%の関税(注)を上乗せする措置(追加関税措置)を発動した。これまでこの措置の対象は、輸入量の多い国に限定され、約190の途上国および地域は免除されていたが、今後、この免除措置が撤廃されることとなる。

 現地報道によると、追加関税措置の発動以降、砂糖生産量がそれほど多くない国からの輸入量が飛躍的に伸びていたが、国内の需要量を満たすためには、やはり安定して供給量が確保できるタイやブラジルなどからある程度輸入せざるを得ないとの機運が生まれつつあった。このため、関係者の間では今回の措置について、国内砂糖産業への影響に配慮しつつ、「公平な競争」で調達の安定性を確保するための苦肉の策だと見ている。

(注)追加関税の税率は1年目が45%、2年目が40%、3年目が35%と段階的に引き下げられることとなっている。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2017/18年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 生産割当廃止後の初年度となる2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、生産意欲の増進を受け、てん菜の収穫面積は173万ヘクタール(前年度比18.2%増)、生産量は1億3459万トン(同25.9%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている(表5)。これにより、砂糖生産量は2153万トン(同22.7%増)、輸出量は359万トン(同2.4倍)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 てん菜の主要生産国であるフランスでは、今年の春先の天候不順で()(しゅ)が3週間程度遅れ、生育への影響が懸念されたものの、その後の天候回復により、7月時点では前年並みの生育状況となった。

英国政府、TPP11参加に向け意見を募集
 現地報道によると、英国のリアム・フォックス国際通商相は7月18日、中小企業団体が主催した講演会で、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)への参加に関し、広く意見を募集する考えを明らかにした。同相の発言は、EU離脱後の英国の新たな通商戦略において2国間以外の自由貿易協定も模索し、成長著しい地域において英国が中心的な役割を担うことを視野に入れているとの認識を示したものとみられる。

 業界団体からは、今回の国際通商相の発言や、政府が自由で公平な貿易の実現に向けた姿勢を見せていることについて一定の評価をする一方、EUとの関係の再構築が優先課題と指摘する声もある。

卸売価格、最安値を更新
 欧州委員会のまとめによると、2018年4月時点の白糖1トン当たりの平均卸売価格は362ユーロ(4万6698円)となり、1月に記録した371ユーロ(4万7859円)という最安値を更新した。

 欧州最大の製糖業者であるSuedzucker社の最高経営責任者は、「世界的な生産過剰により経営環境は厳しく、現在の取引価格はほとんどの製糖業者が利益を出せないほどの水準である」と述べ、第1四半期の営業利益が対前年同期比で49%減少したことを明らかにした。このため、同社はコスト削減を中心に据えた経営改革を断行するとともに、需要拡大が見込まれる中国などアジア市場への輸出拡大に意欲を示した。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年4月時点)

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