沖縄県における平成29年産さとうきびの生産状況について
最終更新日:2018年9月10日
沖縄県における平成29年産さとうきびの生産状況について
2018年9月
【要約】
沖縄県の平成29年産さとうきびは、台風や少雨などの影響により生産量は76万8675トン(前年比82.0%)、10アール当たりの収量は5567キログラム(同76.8%)と、90万トンを超える豊作であった前年産を下回った。一方、収穫面積は1万3809ヘクタール(同106.7%)と、前年を上回る結果となった。
1.さとうきびの位置付け
沖縄県におけるさとうきびは、県全体の農家数の約7割、耕地面積の約5割、農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替の効かない作物である。
沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、平成27年を目標年とし、島別および県段階における生産目標や取り組みの方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を18年に策定した。その後、37年を目標年とする「さとうきび増産計画」として27年に改定した。
さらに、24年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「沖縄県21世紀ビジョン基本計画」を24年5月に策定し、この二つの計画によって生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。
2.平成29年産さとうきびの生育概況
(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)
生育初期は、日照時間、降雨ともに少なく、生育が緩慢であった。その後、梅雨の降雨はあったものの、生育旺盛期にかけて少雨傾向が続き、葉のロール現象が見られるなど、各地で干ばつ状態となり生育が停滞した。本島地域では、生育後期にかけて少雨傾向は解消され、台風による被害も少なく順調に生育した。
大東地域では、生育初期は平年に比べ降雨も多く順調に生育したが、梅雨明け後から生育旺盛期にかけて降雨が少なく、葉のロール現象が見られるなど干ばつ状態となり生育が停滞した。その後、10月に台風の接近はあったものの、特に大きな被害は無く、生育後期にかけ適度な降雨もあり、順調に生育した。
(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)
生育初期は、平年並に降雨もあり順調に生育したが、梅雨明け後から生育旺盛期にかけて降雨が少なく葉のロール現象が見られるなど、干ばつ状態となり生育が停滞した。
また、9月の台風襲来により、記録的な大雨をもたらしたことで干ばつは解消されたものの、折損や葉片裂傷などの被害を受け、回復に時間を要し生育が遅れたこともあり、10アール当たりの収量は平年比79%と減産した。
(3)八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)
生育初期から生育旺盛期にかけて少雨傾向で、一時、葉のロール現象など干ばつ症状が見られ、生育の停滞が懸念されたが、9月以降は平年並みに降雨もありその後の生育は順調であった。また、9月に台風の接近はあったものの、特に大きな被害は無く、生育後期にかけ適度な降雨もあり、順調に生育し、各作型ともに前年産に比べ増産した。
3.平成29年産さとうきびの生産状況
平成29年産さとうきびの収穫面積は、1万3809ヘクタール(前年比106.7%)となり、28年産に対して871ヘクタール拡大した。生産量は76万8675トン(同82.0%)と16万8848トン減少し、10アール当たり収量は5567キログラム(同76.8%)と同1679キログラム減少した(
表1、
表2、
表3)。
29年産の作型別栽培面積は、夏植え栽培が4022ヘクタール(28年産から84ヘクタール減)、春植え栽培が1217ヘクタール(同31ヘクタール減)、株出し栽培が8570ヘクタール(同986ヘクタール増)となった(
図2)。全収穫面積に占める割合は、それぞれ29.1%、8.8%、62.1%となった。
品種構成は、農林27号が全収穫面積の36.6%を占め、次いで農林25号が10.0%、農林21号が8.9%、農林8号が5.7%、農林28号が4.9%となった(
図3)。
(1)沖縄地域
収穫面積は5954ヘクタールと28年産に対して22ヘクタール増加し、10アール当たり収量は5242キログラム(前年比78.7%)と大幅に減少し、生産量は31万2107トン(同78.9%)と8万3234トン減少した。
作型別では、夏植え栽培が742ヘクタール(同89ヘクタール減)、春植え栽培が787ヘクタール(同19ヘクタール減)、株出し栽培は4425ヘクタール(同129ヘクタール増)となった。収穫面積の約7割を占める株出し栽培面積の増加により収穫面積は増加したものの、全作型で10アール当たり収量が減少したことに伴い、減収となった。
品種構成は、農林27号が12.3%、農林21号が12.1%、農林8号が11.4%を占めており、次いで農林28号、農林22号も普及している。
(2)宮古地域
収穫面積は5867ヘクタールで28年産に対して457ヘクタール増加し、10アール当たり収量は5486キログラム(前年比68.1%)と大幅に減少し、生産量は32万1893トン(同73.9%)と11万3671トン減少した。
作型別では、近年、株出し栽培が増加傾向にあり、29年産は3377ヘクタール(同125.9%)と前年に引き続き大幅に増加した。
品種構成は、農林27号が66.5%と最も多く、次いで農林21号7.7%、農林25号6.6%となっている。
(3)八重山地域
収穫面積は1988ヘクタールで28年産に対して393ヘクタール増加し、10アール当たり収量は6775キログラム(前年比101.4%)、生産量は13万4675トン(同126.3%)と2万8057トン増加した。
作型別では、春植え栽培で18ヘクタールの増加、夏植え栽培で213ヘクタールの増加、株出し栽培で162ヘクタールの増加と全作型で増加した。10アール当たり収量は、夏植え栽培および株出し栽培で前年を上回った。生産量も全作型で増加し、夏植え栽培で1万6910トン増加の8万1955トン、春植え栽培で350トン増加の9975トン、株出し栽培で1万798トン増加の4万2745トンであった。
品種構成は、農林25号が35.5%と増加し、次いで農林27号20.7%、農林22号13.7%、農林26号8.7%となっている。
地域別生産量は、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の40.6%、宮古地域が41.9%、八重山地域が17.5%となっている。
4.ハーベスタによる収穫状況
さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入を推進してきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、株出し管理機や脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。
平成29年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計444台のハーベスタが稼働し、収穫面積に占める機械収穫率は76.0%と増加傾向にある。
5.製糖工場の操業状況
沖縄県では、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)が操業している(
表4)。
分みつ糖工場の平成29年産原料処理量は、28年産から16万8680トン減少し69万8534トン(前年比80.5%)となり、買入糖度(以下「糖度」という)は、前年より0.68度低い13.96度となった。
含みつ糖工場の29年産原料処理量は、28年産より168トン減少し7万141トン(同99.8%)となった。
おわりに
沖縄県では、平成37年産を目標とする「さとうきび増産計画」および33年を目標とする「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開しており、29年産については、単収、生産量ともに90万トンを超える豊作となった前年産に比べ減産となったが、収穫面積が拡大したことなどから、生産量は平年並みとなった。八重山地域においては気象条件などに恵まれたこともあり、面積の拡大と併せて、前年に比べ大幅に増産した。
また、今期の糖度は、秋の台風襲来や収穫期前半の日照不足などの影響により収穫初期の糖度が上がらず、29年産と比較して約1度低い結果となった。
このように、本県は台風常襲地域で、気象条件などは年変動も大きいことから、これまで同様の取り組みの継続と強化が必要である。
今後も継続して目標を達成していくため、気象災害と病害虫被害などに対応したセーフティーネット基金(さとうきび増産基金)などを活用することにより、関係機関・団体が一体となって増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいく。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272