Lead papers 5課題、Oral papers 38課題、ポスター 35課題
【概要】
・重要病害虫の防除法、実態調査
・生物農薬の開発、利用
・干ばつ対策(点滴かんがい、畝の形状変化、ケイ素施用、ポリマー)
・施肥(有機肥料、バイオ肥料)および土壌改良材
・植え付け方法(一芽苗、発芽苗の利用、不耕起栽培)
・間作によるサトウキビ収量および収益の向上
・代替作物(てん菜、スイートソルガム)
・各国のサトウキビ栽培
セッション1における発表課題の中では、病害虫防除(口頭発表17課題、ポスター発表14課題)、特にサトウキビ白葉病
(注)とメイチュウ類に関する発表が多かった。
(注)ファイトプラズマ病の一種。感染すると、どの生育ステージであっても葉が白化する現象を経て最終的に茎の枯死に至る。
ア.サトウキビ白葉病
サトウキビ白葉病は、タイにおける最重要病害として位置付けられている。単収減少および株出し栽培制限の最大の要因であり、本病による国内サトウキビ産業での損失額は年間30億円にも上る。現在有効な抵抗性品種は見つかっておらず、また近隣諸国へも感染が拡大しているため非常に深刻な病気である
2)。ミトポンサトウキビ研究所からは、肉眼による病徴観察とPCR法による分析結果を照合することで、外見では症状が確認されていない
罹病株がかなり存在すること、さらに発病株率は、降水量の低い地域や砂質土壌の分布する地域など、植物に水ストレスがかかりやすい状況で高くなることが報告された。その他、内生窒素固定細菌を接種することで媒介虫であるヨコバイの摂食およびファイトプラズマの感染が抑制される研究報告やしゃ苗(サトウキビの苗)を加熱したテトラサイクリン系抗生物質で処理した研究など防除に関する発表も見られた。このようにさまざまな方向から防除法が検討されていることを見ても、本病がタイで最重要病害であることが分かる。
イ.メイチュウ類
中国やインドではメイチュウ類による被害が深刻である。被害発生時期や部位などの違いにより多くの種類が確認されているが、これらの発生状況は地域によって異なる。メイチュウ類による被害株率は中国全土で15%とも言われ、防除コストや被害による収量減でかなりの経済的な損失となっている。中国国内でサトウキビへの影響を網羅的に調査した結果によると、メイチュウ類の被害株率が15%以下では収量への大きな影響は見られないことから、この値を目安として防除を実施する必要があることが報告されている。
上記の病害虫に限らず、重要病害の防除には
Metarhizium属、
Beauveria属、
Trichoderma属などの昆虫病原糸状菌、卵寄生バチの
Trichogramma属を利用した生物的防除法▽収穫後の圃場を冠水するといった物理的防除法▽植え付けを通常より遅らせるといった耕種的防除法−の重要性が強調され、いわゆる総合防除の考えが普遍的に広まっていることがうかがえた。その他、現在タイでは国の政策によって水田からサトウキビ畑への転換が推し進められていることから、水田転換畑をサトウキビ栽培に利用することによる害虫のリスクを調査した報告もあった。
応用的な研究がほとんどであったが、中には品種別の窒素固定能や茎伸長に関連する酵素活性、組織培養苗の光独立栄養性に関する発表など基礎研究も数例見られた。また、研究とはやや言い難いが、各国のサトウキビ栽培様式に関する発表が見受けられたのも本会議の特徴と言えるだろう。インドのKaranjeet Singh氏は自身の栽培するサトウキビを写真紹介したが、その圧倒的なボリュームには驚かざるを得なかった(
写真8,
9,
10,
11)。