ア.豪州
クイーンズランド大学の Wegener博士からは、機械化先進国豪州におけるサトウキビ収穫機械化の歴史がレビューされ、1957年に商業的な導入が成功して以降、機械化が急速に進展し、1978年以降手刈り収穫はなくなり大規模化したこと、現在は環境配慮型の持続可能なサトウキビ生産を目指していることが紹介された。
イ.ブラジル
世界最大のサトウキビ生産国であるブラジルからは生産者の立場からPaulo氏がサトウキビおよびその関連産業に関する講演を行った。ブラジルでは消費エネルギーの40%以上が再生可能エネルギーに分類されるが、その中で最も大きな役割を担っているのがサトウキビである。バイオ燃料生産の先駆けでもある同国は砂糖のみを生産する製糖工場はわずか1.4%であり、残りは砂糖+エタノールまたはエタノールのみの生産を行っているという話が印象的であった。
ウ.インド
インドからはインド農業研究所サトウキビ研究部門のSingh博士が発表を行い、主に同国で使用されている農業機械の紹介が、動画を交えて行われた。インドはブラジルに次ぐ生産国ながら、中国同様に巨大な人口ゆえに砂糖の輸入国に甘んじている。同国も経済発展が著しく、機械化に関しては同様の課題を抱えているようだ。
エ.タイ
近年政府によるコメからの転作奨励もあり、サトウキビ産業が目覚ましく発展しているタイからは農務省農業機械研究所のSutthiwaree氏が発表を行った。タイは、中国同様、機械収穫率が約15%と低く、機械化がサトウキビ生産の大きな課題の一つとなっているようだ。発表では、整地、植え付け、肥培管理、収穫の各段階で使用される機械について詳しい説明があった。
オ.日本
日本からは、著者グループから琉球大学名誉教授の上野正実により、「日本におけるサトウキビ作の機械化とシステム化」と題し、日本の小型ハーベスタの研究の歴史、ICT(情報通信技術)やIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)やビッグデータなどの新技術のシステムへの導入例を紹介するとともに、導入機械の老朽化などを課題として挙げ、サトウキビやその生産者から学ぶことの大切さを説いた(
図2)。同じく著者グループである琉球大学の川満教授は、「サトウキビの光合成とバガスの炭化」に関し発表し、余剰バガスの炭化による炭素貯留、機械化と大気二酸化炭素の増加および大気汚染などサトウキビ生産と環境問題の関係について論じ、PM2.5など工業地帯での大気汚染が世界的に話題となる中国の製糖業界に気付きを与える講演となった。