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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年9月時点予測)

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最終更新日:2018年10月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年9月時点予測)

2018年10月

 本稿中の為替レートは2018年8月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.73円である。

ブラジル

2018/19年度の砂糖生産量、前月予測から下方修正
 2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は869万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかな増加が見込まれている(表2)。しかし、サトウキビ生産量は、北東部を中心に乾燥気候が続いている影響から、5億9500万トン(同7.2%減)とかなりの程度の減少が見込まれている。これを受け、砂糖生産量は、前月予測から2.0%下方修正され、3192万トン(同23.1%減)と前年度からの大幅な減少が見込まれている。

 サトウキビ生産量については、降雨の少ない状態が10月まで続くとの報道を受け、また、砂糖生産量については、価格優位性のあるエタノールへの仕向けが増えると見込まれることを受け、多くの民間調査会社も同様に、サトウキビ生産量、砂糖生産量がともに前年度を下回ると見込んでいる。

 また、UNICAは8月24日、8月上半期のサトウキビ圧搾量が3356万トン(前年同期比26.1%減)、砂糖生産量は171万トン(同45.9%減)と、ともに大幅に減少したと発表した。これは、降雨による5日程度の収穫遅れが主因であるとされるが、UNICAは、エタノール需要の拡大と砂糖価格の低迷が続く中、今年度の砂糖生産が大きく減少する兆候が見られると警戒している。

主産地の中南部、過去5年で最低の生産量
 現地報道によると、砂糖生産シェアの9割を有する中南部における、2018/19年度の製糖業者のサトウキビ処理量が、5億8400万トン(前年度比4%減)と4年ぶりの低水準にとどまる見通しである。サンパウロ州を中心とした深刻な干ばつに加え、国際相場低迷に伴う、サトウキビ畑の更新遅れなど設備投資の先細りが、背景にあるとしている。

 民間調査会社は、2018年下半期については、エルニーニョ現象により一定の降雨を得られる公算が高いものの、10月までの向こう数週間にかけてまとまった降雨が得られない場合、2019/20年度の生産にも影響が生じる可能性を示唆している。

サトウキビ農家、品目切り替えの動き
 現地報道によると、世界的に砂糖需給が緩慢な状態が続き、砂糖価格の低迷が続く中、一部の農家の間では、サトウキビから大豆へと品目を切り替える動きが見られる。

 中国における食肉需要の台頭を受け、ブラジル産大豆の輸入量が、ここ5年で2.5倍と急増している。米中間の貿易紛争が長期化の様相を呈する中、今後も輸入需要は拡大の一途をたどると見込まれており、一部の農家は、価格の低迷が続くサトウキビから大豆へと品目を切り替えているという。製糖業者の間では、こうした「大豆ブーム」に(あらが)うのではなく、むしろサトウキビ畑の更新時に大豆の栽培を奨励する(これまでは単に休閑地となっていた)など、品目ローテーションの一環に、収益性の高い大豆栽培を積極的に取り入れる動きが見られる。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度の砂糖生産量は増加見通しも、在庫処理が課題
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ生産については、収穫面積は512万ヘクタール(前年度比6.1%増)とかなりの程度の増加が見込まれている。生産量は、主要生産州で潤沢な降雨を得られる見通しであるものの、4億443万トン(同2.8%増)と、面積の増加に比して増加はわずかなものと見込まれている(表3)。

 砂糖生産量は、サトウキビの増産を受け、3558万トン(同2.5%増)とわずかな増加が見込まれている。砂糖輸出量は、305万トン(同17.5%増)と、大幅な増加が見込まれているものの、前月予測からは大幅に下方修正された。

 政府は、積み上がった在庫を輸出増によって処理する方針を打ち出しているが、国際市場における価格競争力がないことなどから輸出は伸び悩んでいる。製糖業者に対して2017/18年度中に追加で200万トンの砂糖輸出を要請していたが、9月初旬の段階では、目標の半分にも遠く及ばない45万トンの輸出にとどまっている。現地報道によると、インド製糖協会(ISMA)は、12月までに700万トン近くの砂糖を輸出できないと、サトウキビ農家の債務が倍近くに膨れ上がるとの見通しを示して危機感を募らせているが、輸出の増加は今後も緩慢なものとなる可能性がある。

主産地で点滴かんがいの導入を推進
 主産地の一つであるマハラシュトラ州は、州政府が義務付けている点滴かんがいの導入ができていない場合には、製糖業者や州協同組合銀行に対し、生産組合との間に締結したサトウキビ供給契約を停止するなどの厳しい制裁を科すと発表した。

 現地報道によると、州政府は2017年、州内の約37万ヘクタールのサトウキビ農地における、2019年までの点滴かんがいの導入を義務化している。中央政府は、1ヘクタール当たり8万5400インド・ルピー(14万7742円)の助成金を、全国農業農村開発銀行から得た長期融資によってあてがうとしている。また、州協同組合銀行に対しては、導入目的のローン申請(生産者および製糖業者が対象)について、50%以上を受理するよう指示していた。

エタノール生産、蒸留企業も参入
 現地報道によると、インド政府が7月27日、サトウキビ圧搾汁からのエタノールの直接生産を認めると発表した(詳細については「砂糖類・でん粉情報」2018.9月号を参照)ことを受け、10月には、製糖業者以外の企業もサトウキビ圧搾汁からのエタノールの直接生産に参入する。

 ISMAによると、2017/18年度のエタノール生産量は113万キロリットル(前年度比7割増)となり、エタノール生産能力については今年度さらに25万キロリットル増強されるとしているが、ガソリンへのエタノール混合率5%(最終目標は10%とされる)を達成するには、なお133万キロリットル近くのエタノールが不足しているとされる。

 ISMAは、3200万トン余りの砂糖生産を記録した2017/18年度に続き、2018/19年度も3500万トン以上の砂糖生産が見込まれる中、エタノール生産の拡大を通して砂糖需給の引き締めを図りたいとしている。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、砂糖生産量は増加見通し
 サトウキビについては、2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)の収穫面積は125万ヘクタール(前年度比1.1%増)、生産量は7775万トン(同1.3%増)と、前月予測から変わらず、ともにわずかな増加が見込まれている(表4)。同年度のてん菜の収穫面積は22万ヘクタール(同20.5%増)、生産量は1118万トン(同16.6%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、主要なサトウキビ生産地域(南部)で潤沢な降雨が得られる見通しであることから、サトウキビ生産量が増加すると見込まれていることを受け、1142万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれているが、依然として国内消費量を大きく下回る水準となっている。

台風22号、サトウキビ生産には影響なし
 香港やフィリピンに甚大な被害をもたらした台風22号は、中国南部に上陸した。しかし、サトウキビの主産地である広東省や広西チワン族自治区には直撃しなかったことから、影響は限定的とみられる。現地専門家によると、一部に倒伏が見られるが、砂糖生産への影響はほとんどないとされる。また、今後天候が好転すれば、今回の降雨はむしろ、単収向上に一役買うとして、降雨を好意的に捉える向きもある。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度の砂糖生産量、乾燥気候と高温を受け下方修正
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、172万ヘクタール(前年度比0.6%減)とわずかな減少が見込まれている(表5)。生産量は、高温による単収減の影響から、1億2180万トン(同9.5%減)とかなりの程度減少が見込まれている。8月も引き続き降雨量が平年を下回っており、北部を中心に減産となるものとみられる。

 糖分含有率が例年よりも比較的高い水準にはあるものの、高温少雨気候に伴うてん菜の減産をカバーするほどではなく、砂糖生産量は1906万トン(同11.5%減)とかなり大きな減少が、輸出量は272万トン(同28.6%減)と大幅な減少が、それぞれ見込まれている。

 現地報道によると、フランスやドイツ、ポーランド、英国といったEU北部の主要なてん菜産地では、夏の猛暑によって単収の大幅な低下が見込まれている。今年度の春先に見られた低温や多雨に伴う作付けの遅れについては、好天に恵まれ回復したとされていたが、7月からの猛暑を受け、かんがいを導入していない()(じょう)を中心に単収低下が深刻化しており、8月に発表された単収見通しは、前年同月比15.0%減となる1ヘクタール当たり13.6トン(前月=13.9トン、前年同月=16.0トン)とかなり大きく減少すると見込まれている。

 一方で、生産者団体からは、今回の単収低下の発表は、前年度に大幅な増産を記録した砂糖の需給引き締めにつながるので、むしろ歓迎するとの声も聞かれた。

糖類を含む飲料に関する課税、消費活動への影響はわずか
 2018年4月、糖類を含む飲料に関する課税が英国で導入された(導入経緯などの詳細についてはhttps://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002228.htmlを参照)が、導入前後で消費者の購買活動には大きな変化が生じていないとの民間団体の調査結果が公表された。

 課税導入前後で消費者に対して意識調査を実施したところ、20%が「商品表示を以前より細かく見るようになった」と回答した一方、過半数の62%が「変わらない」と回答した。また、導入前の段階では、11%が「糖類を含む飲料の購入を止める」と回答していたが、導入後に実際に購入を止めた者は1%にとどまるなど、消費者の購買活動には大きな変化を来していないことが明らかになったとされる。

 一方、課税導入後も過半数の54%が課税を支持し、「課税対象を菓子類まで拡大すべき」との意見も7割近い支持を集めるなど、糖類の摂取を削減したいという消費者の意識が引き続き高い水準にあることも、同時に読み取れる結果となった。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年7月時点)

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