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食品メーカーにおける砂糖類の利用形態

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最終更新日:2017年8月10日

食品メーカーにおける砂糖類の利用形態
〜平成28年度甘味料およびでん粉の仕入動向調査の概要〜

2017年8月

調査情報部

【要約】

 食品メーカーにおいては、砂糖類の仕入量は総じて安定しているものの、砂糖の仕入価格は、国際相場が上昇傾向にあったため、「上昇」「やや上昇」と回答する企業の割合が前年度の調査より約1割増加した。

はじめに

 食品製造における甘みの付与において、砂糖や異性化糖などの甘味料は欠かすことのできない原料である。甘味料の用途は、チョコレートやキャンディーなどの菓子類から清涼飲料水や酒類、調味料など多岐にわたる。

 農林水産省によると、平成27年度の砂糖の用途別仕向け割合は、19年度以降の家庭用の減少に伴い、食品業務向けの割合が伸長し、全体の約9割を占めている(図1)。このことから、食品製造企業の需要動向が、砂糖の消費動向に与える影響は大きいと言える。

 そこで当機構では、実需者の甘味料に対するニーズを把握し、甘味料の需給動向の判断に資す基礎的な情報を収集するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年実施している。

 本稿では、平成28年度に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向調査」のうち、砂糖類(砂糖、黒糖、異性化糖)(注)の調査結果について報告する。なお、人工甘味料および化工でん粉の調査結果については、次号にて報告することとし、天然でん粉については、前月号を参照されたい。

(注)砂糖は液糖を含み、黒糖は国内産に限り調査を行った。また、異性化糖は、日本農林規格(JAS)の分類に基づき、ぶどう糖果糖液糖(果糖含有率50%未満)、果糖ぶどう糖液糖(同50%以上90%未満)、高果糖液糖(同90%以上)を対象に調査を行った。

図1 砂糖の用途別仕向け割合の推移

1.調査の方法

(1)調査期間
 平成29年2〜3月

(2)調査対象
 砂糖類を使用する食品製造事業者

(3)調査方法
 郵送による調査票の発送および回収を実施

(4)調査項目
ア.用途、使用する商品の数および使用する理由
イ.仕入量および仕入価格の動向
ウ.砂糖類に対する評価

(5)回収状況  
 配布企業数    116社  
 回収企業数    52社  
 調査票回収率  44.8%

(6)集計区分

(7)集計結果についての留意事項
ア.図中の「n」は有効回答数を表す。
イ.端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
ウ.「不明・無回答」は比較対象から除外する。

2.調査企業の概要

 砂糖類を使用する企業52社の資本金の額と業種のそれぞれの構成比は、図2の通り。

図2 資本金の額と業種の構成比

3.集計結果

(1)砂糖類の用途
 砂糖類全体での用途を見ると、「スナック菓子・チョコレート類・ビスケット類」が21件と最も多く、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が18件、次いで「和生菓子・洋生菓子」が16件と続く(図3)。

 種類別に見ると、異性化糖は「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が最も多く、次いで「果実・野菜飲料」であった。黒糖は「和生菓子・洋生菓子」が最多用途であり、飲料への使用はなかった。

 具体的な食品の種類を見ると、「スナック菓子・チョコレート類・ビスケット類」はチョコレート菓子が多く、「和生菓子・洋生菓子」はクッキーなどの焼き菓子やようかんが多かった。
 その他に分類される用途としては、冷凍食品やパスタソース、粉末飲料などが挙げられた。

図3 砂糖類の用途(複数回答)

(2)砂糖類を用いた商品のラインナップ数
 使用する商品のラインナップ数を種類別に見ると、砂糖、異性化糖ともに、1企業当たり「101点以上」が最も多かった(図4)。
 一方、黒糖は、「10点以下」が最多で、かつ、51点以上の商品に用いる企業は見られなかった。
 

(3)砂糖類を使用する理由
 砂糖類を使用する理由として、「商品に風味を加える」が37件、次いで「甘味料そのものの味、風味が良い」が34件と、この2項目が圧倒的に多かった(図5)。「商品に風味を加える」は、製菓業を中心に、ソース・たれ・つゆ類や総菜の製造業などさまざまな企業が回答しており、食欲を増進させるような香りや味わいを出すのに砂糖類の使用が適していると言える。

 種類別に見ると、異性化糖は「製造原価(製造コスト)を抑える」「口当たりを良くする」との回答が相対的に多かった。

  「商品の付加価値を高める」と回答した全ての企業は、黒糖を使用している。なお、砂糖類を使用した具体的な商品名を尋ねたところ、黒糖を使用した商品では、ほとんどの企業がパッケージに「黒糖」と表記したり、「黒糖」の使用を全面に打ち出した商品展開をしていた。
 

(4)仕入量の動向
ア.直近1年間の仕入量

 平成28年(1〜12月、以下同じ)の仕入量を種類別に見ると、砂糖、異性化糖ともに、「1000トン未満」が最も多く、次いで「1000トン以上3000トン未満」の順であった(図6)。なお、異性化糖については、「9000トン以上」との回答が18.8%と、全体の約2割を占めた。
 また、黒糖は「20トン未満」が最多であり、全体の半数を占めた(図7)。
 



イ.昨年と比較した仕入量の動向
 平成27年と比較した28年の仕入量の動向は、いずれの種類も「横ばい」が最も多く、全体の約6〜7割を占めた(図8)。

 横ばい以外を回答した企業の増減要因としては、「既存商品の需要の変動」を挙げる企業が多かった。「大幅に増加」「やや増加」と回答した企業は、新商品開発や他の甘味料からの切り替えを理由に挙げ、製菓業が多かった。これは、堅調な国内需要を下支えに、近年増加している訪日外国人観光客によるインバウンド需要で、菓子類の販売が好調に推移していることも、少なからず背景にあるものと推察される。
 一方、「やや減少」「大幅に減少」と回答した企業は、総菜製造業や調味料製造業が多かった。
 

ウ.今後の仕入量の見込み
 今後の仕入量の見込みは、いずれの種類も「横ばい」が圧倒的に多かった(図9)。

 横ばい以外を回答した企業の増減要因としては、全体として「既存商品の需要の変動」を挙げる企業がほとんどであった。「大幅に増加する見込み」「やや増加する見込み」と回答した企業は製菓業や乳飲料・乳製品製造業、「やや減少する見込み」と回答した企業は調味料製造業であった。
 

(5)仕入価格の動向
ア.直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(平成29年1月時点)は、種類ごとに価格帯が異なっていた。

 種類別に見ると、砂糖は「170円未満」が、異性化糖は「100円未満」が約半数を占めた(図10)。なお、日本経済新聞社が公表する「主要相場」(以下「日経相場」という)によると、29年1月の上白糖の月平均市中価格(東京、大袋)は1キログラム当たり193円(図11)、糖化製品市中相場の異性化糖の月平均市中価格は、果糖分42%のものが同131〜132円、果糖分55%のものが同137〜138円であることから、いずれも日経相場を下回る仕入価格であった。
 また、黒糖は「400円以上500円未満」が最も多く、総じて他の砂糖類よりも高い傾向にあった。
 

 
 

 
イ.昨年と比較した仕入価格
 平成27年と比べた28年の仕入価格の動向は、砂糖は「大幅に上昇」と「やや上昇」を合わせると全体の約7割を占める一方、異性化糖は、「横ばい」が半数を占めるなか、「やや下落」との回答が40.6%あった(図12)。

 増減要因としては、「市場価格(相場)の変動によるもの」「仕入れ先の価格改定によるもの」を挙げる企業が多かった。
 

 実際に、日経相場の上白糖の市中価格(東京、大袋)は、平成28年1月から段階的に値上がりしている(図11)。
 黒糖は全体の約8割を「横ばい」が占め、おおむね安定的に推移していると言える。

(6)砂糖類に対する評価
 砂糖類に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面については、「満足」「やや満足」を合わせると、いずれも過半を占めた(図13)。

 調達面についても、「満足」「やや満足」を合わせると、いずれも半数を占めた(図14)。「不満」「やや不満」と回答した企業は、製菓業に多く見られ、その理由として、砂糖については国際相場の上昇に伴う市中価格の変動を、黒糖については不安定な生産量を挙げた。なお、現在使用する砂糖類の他の甘味料への切り替えの意向について尋ねたところ、52社全てが継続して使用する意向を示した。

図13 品質面に対する評価

図14 調達面に対する評価

おわりに

 農林水産省が6月に公表した「砂糖及び異性化糖の需給見通し」によると、砂糖の総需要量および1人当たりの年間消費量は、いずれも平成19年度以降は減少傾向で推移していたものの、27年度にはわずかながらも上昇に転じ、28年度の砂糖の総需要量は198万3000トン、1人当たり消費量は15.6キログラムと、前年度と同水準になる見通しである(図15)。

 それを裏付けるように、局所的ではあるが製菓業や乳飲料・乳製品製造業などの業界において仕入量の増加が見込まれるなど砂糖類の需要拡大の兆しがみられた。

 平成28年には訪日外国人観光客数が2000万人を突破するなど、インバウンド需要により菓子類などの売行きは好調に推移しており、この傾向は2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えていることなどからみて、当面維持されるものと思われる。さらに、消費者の健康志向が高まるなか、「低糖質」や「低カロリー」をうたった商品を目にする機会が増えた一方で、従来、砂糖が使用されているチョコレートや乳酸菌飲料などでは砂糖類本来の風味を生かしつつ、栄養成分の機能性を強調した商品が注目を集めている。
 これらの動きが追い風となり、食品製造業全体の砂糖類の需要拡大につながることを期待したい。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。  

図15 砂糖の総需要量および1人当たりの年間消費量の推移

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272