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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年11月時点予測)

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最終更新日:2018年12月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年11月時点予測)

2018年12月

 本稿中の為替レートは2018年10月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.70円である。

ブラジル

2018/19年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に減少する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2018年11月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、869万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、生産量は、北東部地域の全域と中南部地域の一部で高温少雨が続き、生育の遅れが見られることから、6億200万トン(同6.1%減)とかなりの減少が見込まれている(表2)。砂糖生産量は、サトウキビの減産に加え、砂糖価格よりエタノール価格が高く推移し、サトウキビをバイオエタノール生産に仕向ける動きが加速すると予測されるため、3071万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同26.0%減)と大幅な減少が見込まれている。輸出量は、主要輸出相手国である中国が追加関税措置を実施していることなども影響して、1950万トン(同37.1%減)と大幅な減少が見込まれている。

10月のサトウキビ生産量、天候不順の影響で過去5カ年の最低
 UNICAの発表によると、ブラジル中南部地域における2018年10月下期のサトウキビ生産量は、数週間の天候不順による収穫作業の遅れから、2486万トン(前年同月比17.5%減)と大幅に減少し、過去5カ年の10月の実績として最低の生産量を記録した。この影響で、2018年4〜10月のサトウキビ生産量は5億834万トン(前年同期比4.4%減)とやや減少し、今期の生産量は前年比増の従来予測から一転して前年度を下回る可能性がある。同時期の砂糖生産量は、砂糖の国際価格の低迷により製糖業者の多くがエタノール生産への仕向け割合を増やしていることから、2435万トン(同26.7%減)と大幅に減少した。なお、10月末時点のサトウキビの砂糖生産への仕向け割合は、35.9%と過去最低の水準で推移している。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、砂糖生産量はやや増加する一方、輸出量はかなり減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は506万ヘクタール(前年度比4.9%増)とやや増加が見込まれるものの、豪雨や干ばつ、害虫の大量発生がサトウキビの生育を阻害しており、3億6646万トン(同6.8%減)とかなりの減少が見込まれている(表3)。砂糖生産量は、製糖歩留まりが上昇傾向にあることなどを踏まえ、3343万トン(同3.7%減)とやや減少すると見込まれている。これにより、インドはブラジルを抜いて世界一の砂糖生産国となる公算がさらに高まった。輸出量は、2017/18年度の見込み数量が大幅に上方修正(216万トン増)された影響に加え、政府が製糖業者に対し500万トンの最低輸出義務を課すものの、生産コストが国際価格を上回る現状にあり、その実現可能性については懐疑的な見方も多いことなどを踏まえ、416万トン(同8.0%減)とかなりの減少が見込まれている。

インド商工省、中国向けの砂糖輸出量200万トンを目指す
 インド商工省は、中国向けの砂糖輸出量について2019年に200万トンを目指すと発表した。これに先立ち、インド砂糖工場協会(ISMA)と中国最大の食品会社である中糧集団有限公司(COFCO)との間で、1万5000トンの粗糖輸出契約が締結された。直近2カ年の砂糖の中国向け輸出はわずかであるが、インドは今回の計画を通じて中国に対する貿易赤字と国内の過剰在庫を削減する狙いがある。同省は「インド産の砂糖は、収穫から圧搾するまでに要する時間が短く、品質が高い。今後中国にとって、インドは主要な砂糖輸入相手国となるだろう」と述べ、砂糖を中国向け輸出産品の第2位まで押し上げたいと考えている。また、インドは近隣諸国のマレーシアやインドネシアに対しても砂糖輸出の拡大に向け交渉を進めており、全体の輸出量も増加する可能性がある。

ウッタル・プラデーシュ州生産者、州政府にサトウキビ価格の引き上げを求める
 現地報道によると、インド最大のサトウキビ産地であるウッタル・プラデーシュ州では、サトウキビ生産者が州政府に対し、1トン当たりのサトウキビの適正価格を現行から27%引き上げ、4000ルピー(6800円)とするよう求めた。背景には、燃料代や肥料代などの農業資材費の高騰がある。しかしながら、現時点で製糖業者は2017/2018年度に生産者に支払うべき原料代の2割程度しか精算できておらず、州政府が生産者の求めに安易に応ずれば、製糖業者の負債はさらに膨らむこととなる。結果として、製糖業者の廃業や撤退が相次ぎ、サトウキビ産業全体の衰退を招きかねない。他方、2019年に総選挙を控え、政権与党は農村部の有権者の支持獲得に全力を挙げていることを踏まえると、州政府は極めて難しい判断を迫られることになる。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、砂糖生産量はやや増加、輸入量はかなり減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は126万ヘクタール(前年度比2.6%増)、生産量は7889万トン(同2.8%増)と、ともにわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜の収穫面積は22万ヘクタール(同20.5%増)、生産量は1118万トン(同16.6%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。砂糖生産量は、良好な天候に恵まれ原料作物の増産が期待できることから、1157万トン(同3.8%増)とやや増加が見込まれているが、依然として消費量を大きく下回る水準である。輸入量は、560万トン(同7.3%減)とかなりの減少が見込まれている。

9月の砂糖輸入量、引き続き好調な伸び
 中国税関総署が10月24日に発表した2018年9月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は前年同月比17.4%増、前月比26.7%増の19万トンであった。これにより、2017/18年度の輸入量は、砂糖の輸入に追加関税(注)を課しているにも関わらず、前年度比6.4%増の243万4000トンに達した。ただし、国内の生産量では需要が追い付かない状況が続いているため、周辺国で生産された砂糖を国境が接するミャンマーから密輸入する業者が後を絶たず、その数量は正規の輸入量と同等もしくはそれ以上と言われていることから、実際の輸入量はさらに多いものとみられる。

(注)追加関税は2017年5月から適用されており、その税率は1年目が45%、2年目が40%、3年目が35%と段階的に引き下げられることとなっている。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)てん菜の収穫面積は172万ヘクタール(前年度比0.8%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれているが、生産量は1億1666万トン(同14.0%減)とかなりの減少が見込まれている(表5)。これにより、砂糖生産量は1844万トン(同14.7%減)とかなり減少する見込み。域内における異性化糖の供給不足を砂糖で相殺する動きが予測されるほか、砂糖の期首在庫量が減少していることを考慮して、輸出量は163万トン(同57.5%減)と、大幅な減少が見込まれている。

日本とのEPA案、委員会審議で可決
 欧州議会は11月5日、貿易委員会で審議していた日本との経済連携協定(EPA)案が賛成多数で可決され、同案は欧州議会本会議に送付されたと公表した。EPA案は今後、12月に開かれる欧州議会本会議で採決される見通しである。日・EUEPAは、日本とEU双方の手続きが完了した翌々月の1日に発効すると定められており、早ければ2019年2月1日が発効日となる見込みとなった。

 今回公表された資料の中で貿易委員会は、「世界は今、保護主義的な政策を強める国々と(たい)()しなければならない状況にある中、今回のわれわれの決定は、自由・公正で開かれた質の高い貿易を支持するシグナルとなった」と決議の意義を強調した。

メルコスールとのFTA交渉、年内合意を先送りか
 現地報道によると、欧州委員会のフィル・ホーガン委員(農業・農村開発担当)は「メルコスール(注)とのFTA交渉は、年内に合意することはない」と述べ、来年1月に就任するブラジルの次期大統領の外交姿勢が明らかになるまで交渉を行わない可能性を示唆した。 EUとメルコスールとの間での自由貿易協定(FTA)交渉をめぐっては、20年にも及ぶ交渉の末、今年に入りようやく双方が歩み寄りを見せ、2018年内合意に向けた機運が高まっていた。しかし、10月に極右候補のジャイル・ボルソナロ氏がブラジルの次期大統領に決まったことで、双方ともに同氏抜きで合意することに慎重な意見が見られた。今回のフィル氏の発言は、こうした意見を踏まえた対応とみられる。 他方、フィル氏は依然として牛肉、砂糖、エタノールなどの主要農産物の市場開放に対して否定的な考えをにじませており、年明けにも始まる交渉で合意できるかは予断を許さない状況にある。

(注)ブラジルなど南米4カ国で構成される南米南部共同市場。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年9月時点)

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