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4. 日本の主要輸入先国の動向(2018年11月時点予測)

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最終更新日:2018年12月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2018年11月時点予測)

2018年12月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2017年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が69.5%(前年比17.3ポイント増)、タイが25.0%(同22.7ポイント減)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はフィリピンを報告する。本稿中の為替レートは2018年10月末日TTS相場の値であり、1フィリピン・ペソ=2.26円である。

豪州

2018/19年度、砂糖生産量はわずかに増加、輸出量はやや減少の見込み
 2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、39万ヘクタール(前年度比2.5%増)とわずかな増加が見込まれるが、夏期にクイーンズランド州とニューサウスウェールズ州で発生した干ばつの影響を受けて、生産量は、3279万トン(同1.7%減)とわずかな減少が見込まれている(表6)。砂糖生産量は、449万トン(同0.6%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている。これにより、輸出量は345万トン(同3.2%減)とやや減少すると見込まれている。

豪州砂糖製造業者協議会、TPP11協定の発効を歓迎
 豪州砂糖製造業者協議会(Australian Sugar Milling Council)(注)は10月31日、TPP11協定が発効要件を満たしたことを受け、声明を発表した。声明では、「豪州の砂糖産業は新たな輸出の機会を得た」と述べるとともに、交渉にあたったサイモン・バーミンガム貿易投資大臣に感謝の意を伝えた。豪州の製糖業者は、TPP11協定の恩恵を最大限に享受し、さらなる輸出拡大を図りたいと考えている。特に、主要な輸出相手国である日本に対しては、2015年1月に発効した日豪EPAよりも有利な条件で砂糖を輸出できるようになるため、日本市場でのシェア拡大に期待を寄せている。米国農務省(USDA)の報告によると、豪州では、健康志向の高まりから、中長期的に1人当たりの砂糖消費量が減少し、国内の需要が低迷すると予測されているが、TPP11協定の発効によって砂糖輸出量が増加すれば、結果として砂糖業界に恩恵がもたらされると考えられる。

(注)豪州の製糖業者が加盟する団体。

ドイツの種苗会社、豪州でてん菜の栽培に踏み出す
 現地報道によると、ドイツの種苗会社KWS社は、豪州南部の比較的冷涼な地域であるタスマニア州とビクトリア州で、てん菜の栽培実験を行うと発表した。てん菜を原料とした砂糖生産の商業化を実現するため、豪州の気象や土壌条件に適する5種類の新品種を新たに開発して実験を行う。計画では、まずタスマニア州の()(じょう)で試験的に作付けし、研究成果を見ながらビクトリア州の圃場にも作付けを広げる。てん菜は、他の根菜類と比べ安定的な収入が得られ、かつ新たな輪作作物としても活用できると期待されている。また、ビクトリア州では、既に飼料用てん菜(ビーツ)が栽培されているため、そのノウハウをてん菜にも応用できると見ている。同社は、今回の栽培実験を通じて同国での製糖事業への投資も視野に入れているとみられる。

図3 ビクトリア州およびタスマニア州の位置

豪州政府、インド政府の砂糖政策に対し異議申し立て
 豪州政府は11月16日、インド政府が砂糖産業に対して手厚い支援措置を行い続けていることをめぐり、11月26日開催の世界貿易機関(WTO)農業委員会でこの問題を議題に挙げると発表した。同政府は、インド政府の生産者に対する補助金がWTO協定で認められている範囲を超えて交付されていると主張し、「インド政府による補助金がどれだけ市場競争を(わい)(きょく)させているのかを、WTOの協議の場で明らかにする」と述べた。

 これに対しインド政府は、「補助金は、砂糖の輸出促進を目的としたものでなく、自国の生産安定に必要な措置で、WTO協定に反していない」と述べ、争う姿勢を示した。

表6

タイ

2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少する一方、輸出量は大幅増の見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、179万ヘクタール(前年度比0.9%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている。生産量は、台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過した影響でサトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生していることから、1億2500万トン(同7.4%減)とかなり減少すると見込まれている(表7)。これに伴い砂糖生産量は、1439万トン(同7.7%減)とかなりの減少が見込まれている。一方、輸出量については前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するため輸出を強化するとみられることから、1289万トン(同27.9%増)と大幅な増加が見込まれている。

RCEP交渉、2019年の合意を目指す
 11月14日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉に参加する16カ国による首脳会議がシンガポールで開かれた。会議終了後に発表された共同声明では、包括的で質の高い互恵的な経済連携協定を目指す方針が再確認され、「2019年に合意する決意である」と明記された。また、議長を務めたシンガポールのリー・シェンロン首相は、RCEP交渉が最終段階に入っていることを明らかにした。

 アセアン(ASEAN)の議長国は、2019年1月1日付けでタイに交代する。各国の首脳が集まるRCEP関連会議の議長国は、ASEAN議長国が兼務することが通例となっていることから、2019年のRCEP交渉の舞台はタイに移ることとなる(注)。急激な関税引き下げに慎重な姿勢を続けるインドと、自由で開かれた貿易体制を望む日本、豪州などとの間の溝は依然として深く、加えて、保護主義の台頭や激化する米中貿易摩擦などを背景に各国の利害が複雑に絡み合う状況となっており、今後の議長運営はこれまで以上に難しさを増すと予想される。

(注)RCEPの首脳会議は、これまでASEAN首脳関連会議に合わせて開催されることが多いものの、議長国や交渉の開催国は例外も多数ある。

図4 アジア・太平洋地域における経済連携の状況

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2018/19年度、砂糖生産量は回復も、引き続き輸入増の見通し
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は42万ヘクタール(前年度比1.4%増)とわずかに増加すると見込まれている一方、生産量は、10月の雨量が例年並みだったことから、2400万トン(同0.6%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている(表8)。砂糖生産量は、サトウキビ生産の増加を受け、223万トン(同6.8%増)とかなり増加するものの、国内消費量を賄うには至らず、砂糖輸入量も51万トン(同53.9%増)と2年度連続の増加が見込まれている。このため、砂糖輸出量は14万トン(同36.0%減)と抑制され、2年度連続での大幅な減少が見込まれている。

フィリピン政府、砂糖の輸入規制を一時的に緩和
 フィリピン政府は、小売業者による砂糖の直接輸入を一時的に許可した。ただし、輸入者は輸入した砂糖を1キログラム当たり50ペソ(113円)以下の価格で国内に販売しなければならない。今回の決定は、今年に入り物価が上昇を続ける中、9月に上陸した大型の台風の影響で農作物に被害が出たことで、食品の値上がりがさらに進んだことが背景にある。このため、同国政府は砂糖以外の農産物も輸入規制を緩和したり、フィリピン中央銀行が利上げを実施したりするなどしてインフレ抑制に取り組んでいる。

 なお、フィリピン統計庁によると、消費者物価指数上昇率は2018年3月以降、同国政府のインフレ目標(2〜4%)を超えて推移しており、10月の食品・飲料(アルコールを除く)の上昇率は9.4%であった。

表8 フィリピンの砂糖需給の推移

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272