ホーム > 砂糖 > 各国の糖業事情報告 > EUの菓子産業の現状と消費のトレンド
最終更新日:2019年1月10日
○キャンディー・グミ類 キャンディー(棒付きのものを含む)、ソフトキャンディー、グミ、ミントタブレット、キャラメル(タフィー、ヌガーを含む)、のどあめ ○ガム チューインガム、風船ガム ○チョコレート類 チョコレート(製菓原料用のチョコレートを除く)、玩具付きチョコレート、チョコレートとそれ以外の食材を組み合わせた菓子(ビスケットを除く) ○ビスケット類 ビスケット(クッキー、サブレを含む)、スナックバー(エナジーバーを含む)、チョコレートでコーティングされたビスケット、クリームやジャムをサンドしたビスケット、ウエハース、ワッフル |
コラム1 健康志向の高まりによって生まれた商品健康志向の高まりで菓子需要が伸び悩んでいるものの、EUの消費者にとって菓子が心を和ませ、憩いのひと時に彩りを添える重要なアイテムであるという認識は昔も今も変わっていない。昨今の需要の停滞は、一切菓子を食べない人が増えたというわけではなく、1人当たりの菓子を食べる量が減ったことが影響しているという声もある。それを裏付けるように、従来品より割高であるにも関わらず、食べ切りサイズの商品や開封後に再び密閉できるような商品、一口サイズの菓子が個包装になった商品を買い求める消費者が増えている(コラム1−写真)。また、主に運動習慣のある人やダイエットに励む人向けに開発された「スナックバー」も人気で、特に甘さを極力抑えつつ、ドライフルーツやナッツ、プロテインやビタミンを多く配合した商品の売り上げが好調である。小腹を満たしながらも食べ終えた後の罪悪感を覚えさせないような一工夫やアイディアを加えた商品がヒットしている。 しかし、前者の包装形態の変更をめぐっては、昨今、海洋生物保護などの観点から使い捨てプラスチック製品の使用規制を求める声も強まっており、相反する動向に企業がどう対応するのか注目される。 |
コラム2 欧州の菓子メーカーから見た日本のチョコレート市場業務用チョコレートの製造で世界最大手のB社(本社スイス)は2017年9月、ユニークな発想と長年培ってきた高度な技術を生かし、まったく新しいカテゴリーのチョコレート「ルビーチョコレート」を開発したと発表した。ルビーチョコレートは、着色料も、フルーツのフレーバーも一切使用していないにもかかわらず、明るく華やかなピンク色とベリー系の果実のような風味を感じさせる爽やかな酸味が特長で、ダーク、ミルク、ホワイトに次ぐ「第4のチョコレート」とも呼ばれている。このチョコレートを使用した商品は2018年1月、菓子メーカーのN社(本社スイス)を通じて世界に先駆け日本で先行販売され、世界中から注目を集めた(コラム2−写真)。B社の日本法人代表取締役社長は、世界初の販売先として日本が選ばれた背景について「日本の消費者は、味覚が繊細で商品に求める品質の水準も高いが、ニーズにしっかりと応えることができれば、強く長く支持してくれるのが魅力的。また、全般的に日本は購買力が高く、かつ、1人当たりのチョコレート消費量が欧米と比べ少ないことを考えると、日本のチョコレート市場はまだまだ伸びしろがある」と説明する。 同社によると、チョコレートにも“赤ワインには肉料理、白ワインには魚料理”のような相性の良いとされる原料・素材の組み合わせがあり、ルビーチョコレートはこの組み合わせが通常のチョコレートよりはるかに多い。このため、商品開発者の創作意欲をかき立て、これまでのチョコレートの概念や用途の常識を覆すような新たな商品が生み出されると期待されている(注)。同社は、チョコレートを食べる機会が少なかった人に、より強く訴求できる商品が誕生することで日本のチョコレート消費全体の底上げを図っていきたいと考えている。 また、同社はルビーチョコレートを、自ら消費者向けの最終製品に加工して輸出・販売する計画はなく、あくまで原料として菓子メーカーや洋菓子店などへ供給するこれまでの方針を崩すつもりはないとしている。同氏は、「日本独自の技術や発想との融合により、より高い付加価値が得られると考えている。さまざまな業界・業種のパートナーと連携した多彩なアプローチによって、ルビーチョコレートの魅力を日本の消費者にアピールしていきたい」と述べた。 (注)例えば、酸味との相性が良い食材と組み合わせてソースやお酒に合うおつまみに仕上げたり、色味を生かして料理に華やかさを加えたりするなど、「菓子」という領域を超えた用途の広がりが想定される。 |