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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年1月時点予測)

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最終更新日:2019年2月8日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年1月時点予測)

2019年2月

 本稿中の為替レートは2018年12月末日TTS相場の値であり、1米ドル=112円(112.00円)、1インド・ルピー=1.74円である。

ブラジル

2018/19年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に減少する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2019年1月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、872万ヘクタール(前年度比1.2%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、生産量は、北東部地域の全域と中南部地域の一部で高温少雨が続き、生育の遅れが見られることから、6億1250万トン(同4.5%減)とやや減少が見込まれている(表2)。砂糖生産量は、サトウキビの減産に加え、砂糖価格よりエタノール価格が高く推移し、サトウキビをバイオエタノール生産に仕向ける動きが加速すると予測されるため、3105万トン(同25.2%減)と大幅な減少が見込まれている。輸出量は、主要輸出相手国である中国が追加関税措置を実施していることなども影響して、1984万トン(同36.0%減)と大幅な減少が見込まれている。

ブラジル政府、インドをWTOに提訴する方針を固める
 ブラジル政府は12月12日、インド政府の砂糖政策が世界貿易機関(WTO)のルールに反しているとし、WTOに提訴する方針を固めた。ブラジル政府は、今回の決定の経緯について「これまでわれわれは、インド政府に対して砂糖政策がWTOのルールと矛盾しないことの合理的な理由を示すよう求めてきたが、明確な回答が得られなかったため」と説明した。また、インド政府によるサトウキビの最低買い取り価格の引き上げや製糖業者への輸出補助金が砂糖の国際価格の低迷を招いたと指摘し、「ブラジルのみならず、中国やタイの砂糖産業にも大きな打撃を与えている」との見解を示した。

 今回の政府の決定を受け、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注)は「他の主要砂糖生産国の政府も、ブラジル政府と同様に声を上げ行動すべきだ」と声明を発表した。UNICAの試算によると、ニューヨーク粗糖先物相場が過去10年で最低に近い水準で推移した影響で、多くの製糖業者は砂糖生産部門の採算が確保できていないとし、その経済的損失は13億米ドル(1456億円)に達するとした。

 なお、ブラジル政府は、2018年10月にも中国政府による砂糖の追加関税措置がWTOのルールに反しているとして、WTO提訴に向けた手続きとなる2国間協議を要請しており、砂糖の貿易をめぐる紛争処理手続きを2件抱えることとなる。

(注)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。

CONAB、2018/19年度のバイオエタノール生産量を発表
 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は12月20日、2018/19年度(4月〜翌3月)におけるサトウキビの生産見込みを発表した。この発表によると、砂糖の国際価格の低迷が長期化していることを受け、製糖業者はサトウキビの6割超をバイオエタノール生産へ仕向けていることから、今年度のバイオエタノール生産量は前回予測(8月)と比べ2.8%上方修正され、323億リットルに達し、過去最高を記録すると予測した。その生産の内訳は、含水エタノールが216億リットル(前年度比32.8%増)、ガソリンに混合される無水エタノールが107億リットル(同2.3%減)となっている。

 一方、砂糖生産量は、サトウキビの圧搾量が前年度と比べ2.8%減少したこともあり、3170万トン(同16.2%減)と大幅に減少すると予測した。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、砂糖生産量は減少する一方、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は512万ヘクタール(前年度比6.1%増)とかなりの増加が見込まれるものの、マハラシュトラ州やカルナータカ州において干ばつや害虫の大量発生がサトウキビの生育を阻害したことから、サトウキビ生産量は3億8122万トン(同3.1%減)とやや減少することが見込まれている(表3)。砂糖生産量についても、マハラシュトラ州とカルナータカ州の製糖工場が昨年よりもかなり早期に操業を終了すると予想されるため、3235万トン(同6.8%減)とかなりの減少が見込まれている。輸出量は、政府が製糖業者に対し500万トンの最低輸出義務を課している影響で、416万トン(同76.2%増)と大幅な増加が見込まれている。

インド政府、砂糖の最低支持価格の引き上げを検討
 インド政府は1月7日、製糖業者が卸売業者などに砂糖を販売する際の最低価格(最低支持価格)を現行から10%程度引き上げ、最大100キログラム当たり32ルピー(56円)とする方針を示した。これに対し、製糖業者からは「サトウキビの増産基調が続いた影響で砂糖の需給ギャップが拡大し、国内価格が低迷する現況からすると、今回の政府の引き上げ案では不十分である」といった不満の声が上がっている。このことから、製糖業者の団体などは、今後政府に対し同35ルピー(61円)まで引き上げるよう求めていくとしている。

 現地報道によると、多くの製糖業者は砂糖の国内価格の低迷により十分な収入が確保できない状況にあることなどから、生産者へのサトウキビ代(原料代)の支払いが滞っており、砂糖生産量上位のウッタル・プラデーシュ州とマハラシュトラ州の2州だけで、製糖業者が抱える未精算額は650億ルピー(1131億円)と推定されている。

マハラシュトラ州政府、精算代金の一部を現物支給することを承認
 マハラシュトラ州政府は1月、州内の製糖業者が抱える生産者への未精算額が膨らみ続けていることを受け、支払うべき原料代の一部を現物の砂糖で支払うことを承認した。現地報道によると、同州で操業している181の製糖工場のうち、法令で定められたサトウキビの最低買い取り価格(FRP)で生産者に精算できた製糖工場は数えるほどしかなく、州平均ではFRPの4割程度の代金しか精算されていないという。

 原料代金の何割まで現物の支給が認められるかは今のところ不明であるが、製糖業者は「未精算額と過剰在庫を縮小させる好機となる」と歓迎する一方、市場関係者の間では、砂糖の国内取引に新たに生産者が参入する可能性があるため、砂糖の国内価格のさらなる低下を懸念する声が出ている。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、砂糖生産量はわずかに増加、輸入量はわずかに減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれ、生産量は7859万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜の収穫面積は24万ヘクタール(同30.5%増)、生産量は1167万トン(同21.7%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている(ドイツの調査会社であるF.O.リヒト社によると、内モンゴル自治区などの生産者は、トウモロコシ支援政策内容の変更によってトウモロコシ価格が低下したことを受け、てん菜への転作を進めている)。7月〜10月にかけて天候に恵まれ、原料作物の増産が期待できることから、砂糖生産量も、1146万トン(同2.8%増)と増加が見込まれている。また、輸入量は、585万トン(同2.4%減)とわずかな減少が見込まれている。

2018年11月の砂糖輸入量、前年同月と比べ大幅に増加
 中国税関総署が11月25日に発表した2018年11月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は34万トン(前年同月比2.2倍、前月同)と前年同月と比べ大幅に増加した。また、2018年1月からの輸入量は264万トン(前年同期比21.8%増)と大幅に増加した。背景には、中国政府が10月ごろから国境を接するミャンマーを経由した砂糖の密輸入の取り締まりを強化したことや、ミャンマー政府が中国向けの砂糖の輸出許可を制限したことで、結果としてミャンマー経由を除く正式なルートでの輸入量が増加しているものとみられる。しかしながら、2018年前半は砂糖の国際価格が大きく下落した影響で内外価格差が広がり、密輸入量が急増したとされ、その数量は100万トン〜120万トンに上ると推計されている。

中国政府、豪州との間で新たな貿易交渉を開始
 中国政府は11月8日、豪州との自由貿易協定(FTA、2015年12月20日発効)とは別の枠組みで、関税の引き下げなどを目指す新たな貿易交渉を2019年1月から開始すると発表した。先のFTAでは、豪州側は中国から輸入するすべての商品の関税を2019年1月1日から撤廃する一方、中国側は最長15年で96.8%の商品の関税を撤廃することで合意している。ただし、この中に砂糖は含まれていない。このため、新たな貿易交渉では、中国側が砂糖の関税撤廃または引き下げに応じるかが焦点になるものとみられる。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)てん菜の収穫面積は172万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかに減少すると見込まれているが、生産量は1億1724万トン(同15.1%減)とかなりの減少が見込まれている(表5)。てん菜生産量の減少に加え、てん菜に含まれる不純物が多いことも影響し、砂糖生産量は1876万トン(同13.2%減)とかなり減少する見込みである。域内における異性化糖の供給不足を砂糖で相殺する動きが予測されるほか、砂糖の期首在庫量が減少していることを受け、輸出量は163万トン(同57.2%減)と、大幅な減少が見込まれている。

ドイツ連邦食料・農業省、加工食品中の糖類の削減を目指す
 ドイツ連邦食料・農業省は12月12日、国内の食品・飲料の業界団体との間で、2025年までに加工食品に含まれる糖類、塩分および脂質の量を削減することで合意したと発表した。これにより、清涼飲料水にあっては、商品中に含まれる糖類の量を現行から最大20%削減することとなった。

 合意の背景には、ドイツの成人男性の約6割、成人女性の約4割が過体重または肥満とされ、健康への影響や社会保障費用負担の観点から、政府に早急な対策を求める声が高まっていることがある。ただし、今回の合意で定めた目標は法的拘束力がない自主的な取り組みとして位置付けられたことから、医療・福祉関係者からは「不十分」との批判が出ている。周辺国の英国やフランスでは、すでに栄養成分の含有量を強調する食品表示の導入、糖類が含まれる食品への課税、子ども向け商品の広告規制の強化など法的拘束力のある措置を実施していることから、今後のドイツ政府の対応が注目される。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年12月時点)

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