2018/19年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に減少する見込み
LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2019年1月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、872万ヘクタール(前年度比1.2%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、生産量は、北東部地域の全域と中南部地域の一部で高温少雨が続き、生育の遅れが見られることから、6億1250万トン(同4.5%減)とやや減少が見込まれている(
表2)。砂糖生産量は、サトウキビの減産に加え、砂糖価格よりエタノール価格が高く推移し、サトウキビをバイオエタノール生産に仕向ける動きが加速すると予測されるため、3105万トン(同25.2%減)と大幅な減少が見込まれている。輸出量は、主要輸出相手国である中国が追加関税措置を実施していることなども影響して、1984万トン(同36.0%減)と大幅な減少が見込まれている。
ブラジル政府、インドをWTOに提訴する方針を固める
ブラジル政府は12月12日、インド政府の砂糖政策が世界貿易機関(WTO)のルールに反しているとし、WTOに提訴する方針を固めた。ブラジル政府は、今回の決定の経緯について「これまでわれわれは、インド政府に対して砂糖政策がWTOのルールと矛盾しないことの合理的な理由を示すよう求めてきたが、明確な回答が得られなかったため」と説明した。また、インド政府によるサトウキビの最低買い取り価格の引き上げや製糖業者への輸出補助金が砂糖の国際価格の低迷を招いたと指摘し、「ブラジルのみならず、中国やタイの砂糖産業にも大きな打撃を与えている」との見解を示した。
今回の政府の決定を受け、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)
(注)は「他の主要砂糖生産国の政府も、ブラジル政府と同様に声を上げ行動すべきだ」と声明を発表した。UNICAの試算によると、ニューヨーク粗糖先物相場が過去10年で最低に近い水準で推移した影響で、多くの製糖業者は砂糖生産部門の採算が確保できていないとし、その経済的損失は13億米ドル(1456億円)に達するとした。
なお、ブラジル政府は、2018年10月にも中国政府による砂糖の追加関税措置がWTOのルールに反しているとして、WTO提訴に向けた手続きとなる2国間協議を要請しており、砂糖の貿易をめぐる紛争処理手続きを2件抱えることとなる。
(注)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
CONAB、2018/19年度のバイオエタノール生産量を発表
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は12月20日、2018/19年度(4月〜翌3月)におけるサトウキビの生産見込みを発表した。この発表によると、砂糖の国際価格の低迷が長期化していることを受け、製糖業者はサトウキビの6割超をバイオエタノール生産へ仕向けていることから、今年度のバイオエタノール生産量は前回予測(8月)と比べ2.8%上方修正され、323億リットルに達し、過去最高を記録すると予測した。その生産の内訳は、含水エタノールが216億リットル(前年度比32.8%増)、ガソリンに混合される無水エタノールが107億リットル(同2.3%減)となっている。
一方、砂糖生産量は、サトウキビの圧搾量が前年度と比べ2.8%減少したこともあり、3170万トン(同16.2%減)と大幅に減少すると予測した。