4〜6番は農外就業先に定年まで勤務しつつ、退職直前に農地を購入し退職後就農した。彼らの過去の就業先は、建設業(土木)、製糖企業、県内の大手農機具メーカーなど、相対的に高い就業条件を提示している企業で、いずれも厚生年金に加入している。彼らは農外就業時の知識・技能でいずれもトラクター作業に対応でき、さらに6番はハーベスタを個人で購入し操作している。
彼らの農地を見ると、1〜3番に比べて自作地の比重が大きく、圃場数も少ない。これは、彼らが自作地外に積極的に農地拡大をしていくというより、借地は主に、退職後に耕作する彼らを見た周囲の地権者から持ち掛けられたためである。
表3に6番が経営する農地の構成を示した。自宅周辺の所有地(No.1)とそれに近いNo.3、それらと連担していないが自集落内にあるNo.2などの自作地を基点にしながら、基本的にはそれらに隣接する農地を借りている(No.6〜10)。これらから若干離れたNo.4・5は親戚の農地で、6番が在職中は他に耕作する者がいたが、退職を機に耕作することになった。
彼らは基本的に1人で耕作できる面積規模を志向しており、作業受託も限定的にしか請け負わない(全員、雇用を導入しておらず、4、6番については、家族による補助作業にも期待していない)。加齢による将来の体力的な不安も関係している。4番は貸借を通じて最大3ヘクタール規模まで拡大したが、自身の手術を経て農地を返却した。農地・経営拡大に関する抑制的な態度の背景として、彼らに厚生年金による収入があることは間違いないであろう。なお地代について、 4番は50円/坪(約1万5125円/ 10a)、5番は山間部の条件の悪い土地以外は50円/ 坪(同)、6番は自分で客土した農地以外は40円/坪(約1万2100円/10a)と、1〜3番に比べやや高い水準を負担していることも注目される。
彼らは、サトウキビ生産に向かう
逼迫した事情はないようだが、かといって放棄もしない理由として、次の3点を挙げることができる。
(1)製糖工場の原料確保:製糖工場に勤務していた4番は、工場の存続のために原料を維持したいと考える。(2)地域貢献:5番は、地域の農地の荒廃を防ぎ、収入をもたらす機会としてサトウキビ生産を捉えている(サトウキビ生産は、就業機会の少ない同地域の貴重な産業であり、収入は、地域活動のための費用ともなる)。(3)サトウキビ経営モデルの構築:6番は「サトウキビ=低い農業所得」という構図を
払拭するべく、収穫機械化などによる効率化と、高い農業所得を同時に実現する作業体系を追求・実践している。