砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 調査報告 > 市場調査 > 食品メーカーにおける加糖調製品およびその他甘味料の利用形態

食品メーカーにおける加糖調製品およびその他甘味料の利用形態

印刷ページ

最終更新日:2019年3月11日

食品メーカーにおける加糖調製品およびその他甘味料の利用形態
〜平成29年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要〜

2019年3月

調査情報部

【要約】

 加糖調製品およびその他甘味料の仕入れ量は総じて安定している。仕入価格については、その他甘味料は総じて安定している一方、加糖調製品については、為替の変動や主原料の生産量の変動などにより「上昇」と回答する企業が一定数存在した。今後の仕入見込みについては、加糖調製品、その他甘味料ともに、「横ばい」が過半を占めたが、加糖調製品のうち、ココア調製品および小麦粉調製品については「増加」回答が3割程度存在した。

はじめに

 当機構は、実需者の甘味料に対するニーズや利用状況を把握するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年実施している。

 本稿では、平成29年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、加糖調製品(ソルビトール調製品、ココア調製品、ミルク調製品、加糖あん、小麦粉調製品)およびその他甘味料(果糖、ソルビトール)の調査結果について報告する。

 加糖調製品とは、砂糖に他の食品素材を混合した食品加工用原料のことを指し、主にパン、飲料、菓子、水産練り製品など砂糖を含む製品に原料として使用される。素材や砂糖の含有量によって種類もさまざまで、日本で使用されるもののほとんどは韓国、シンガポール、中国、タイなど海外から輸入される。砂糖との競合関係にもあり、国内の甘味料の需要が減少傾向にある中、加糖調製品の需要量は微増減を繰り返しながら全体としては上昇傾向で推移している(図1)。

 果糖は、でん粉由来の甘味料で、低温であるほど甘みが強まることに加え、低温下でも結晶化しにくい特性があることからアイスクリームなどの冷菓や清涼飲料などの製造で用いられることが多い。ソルビトールは、糖アルコール類の一つで、アミノ酸と加熱しても変色しないことや消化・吸収されにくいなどの性質を持つことから加工食品や低カロリー甘味料としても使用されている。

 なお、天然でん粉および化工でん粉の調査結果については本誌2019年1月号を、砂糖類および人工甘味料については同2月号を参照されたい。

図1 甘味料別需要量の推移

1.調査の方法

(1)調査期間
 平成30年5〜7月

(2)調査対象
 甘味料を使用する食品製造事業者

(3)調査項目
 平成29年度(4月〜翌3月)の加糖調製品およびその他甘味料の用途、仕入れ状況などに関する事項

(4)調査方法
 郵送による調査票の発送および回収を実施

(5)回収状況
 配布企業数    111社
 回収企業数     60社
 調査票回収率   54.1%

(6)集計区分
 調査対象品目ごとの回収企業数は以下の通り。
 

 

(7)集計結果についての留意事項
 ア.図中の「n」は有効回答数を表す。
 イ.端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
 ウ.「不明・無回答」は比較対象から除外する。
 エ.ソルビトールは食品の他、化粧品などの日用品や医療品などの用途で幅広く使用されているが、本調査は食品製造企業のみを対象に集計を行ったことに留意されたい。

(8)調査企業の概要
 加糖調製品を使用する企業47社およびその他甘味料を使用する企業38社の資本金の額と業種のそれぞれの構成比は、図2および図3の通り。

(注1)複数の加糖調製品を使用する企業があるため、1(6)の集計区分の内訳の合計と一致しない。
(注2)複数のその他甘味料を使用する企業があるため1(6)の集計区分の内訳の合計と一致しない。

図2 加糖調製品を使用する企業の資本金の額と業種の構成比

図3

2.集計結果

(1)加糖調製品

ア.加糖調製品の用途
 加糖調製品の用途を見ると、「和生菓子・洋生菓子」が26件と最も多く、次いで、「アイスクリーム類」 「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」がともに18件、「チョコレート類」(12件)、「パン(パン類、食パン、菓子パン、その他のパン)」が11件と続く(図4)。その他に分類される用途には、冷凍食品や冷凍すり身、シリアルなどが挙げられた。

 種類別の用途数を見ると、ミルク調製品が12種類と最も多くの用途で使用されており、次いでソルビトール調製品が8種類、ココア調製品が6種類、小麦粉調製品が6種類、加糖あんが6種類となっている。ココア調製品とミルク調製品以外の調製品は「和生菓子・洋生菓子」への使用割合が多く、ココア調製品は「チョコレート類」が、ミルク調製品は「アイスクリーム類」が最多用途であった。
 

イ.加糖調製品を使用する商品の数
 加糖調製品を使用する商品の数を種類別に見ると、ソルビトール調製品と加糖あんは、1企業当たり「10点以下」が最も多かった(図5)。ココア調製品は「10点以下」と「51〜100点」が同率で、ミルク調製品は「101点以上」(21%)、小麦粉調製品は「11〜50点」(13%)が最も多かった。相対的に、ソルビトール調製品とミルク調製品は使用される商品数が多いことがうかがえる。



ウ.加糖調製品を使用する理由
 加糖調製品を使用する理由としては「製造原価(製造コスト)を抑える」が42件と圧倒的に多かった(図6)。その他には「加糖調製品そのものの味、風味が良い」「主原料(甘味料を除く)そのものの必要量が確保できない」「自社で調製する技術や設備を有していない」という回答が多かった。

 種類別に見ると、加糖あんは「自社で調製する技術や設備を有していない」が、加糖あん以外の調製品は「製造原価(製造コスト)を抑える」が使用理由として最も多かった。
 

 

エ.仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量

 平成29年度の仕入量を見ると、「3000トン以上5000トン未満」が11%で最も多く、次いで「100トン以上500トン未満」「1000トン以上3000トン未満」(各7%)、「100トン未満」「7000トン以上」(各5%)の順になっている(図7)。

 種類別に見ると、ソルビトール調製品は「500トン以上1000トン未満」と「1000トン以上3000トン未満」が同率で最も多い(図8)。ココア調製品は「1000トン以上3000トン未満」が最も多く、ミルク調製品は各仕入量が1割程度で分散されている。加糖あんと小麦粉調製品は「3000トン以上5000トン未満」が最も多くなっている。
 




(イ)昨年度と比較した仕入量の動向
 平成28年度と比較した29年度の仕入量の動向は、いずれの種類も「横ばい」が過半数を占めた(図9)。ただ、加糖あんは「大幅に増加」が6%ある一方、小麦粉調製品は「大幅に減少」が7%あり、仕入量の動きに違いが見られた。

 増減要因として「需要の変動」を挙げる企業が多く、他の増加要因としては、ミルク調製品、加糖あんでは「商品アイテム数の増加」や「新商品の開発」などが挙げられた。「増加」と回答した企業の業種は、パン・菓子、乳飲料・乳製品、清涼飲料・酒類、調味料・糖類などの製造業であった。

 「減少」を回答した企業の業種は、パン・菓子、乳製品・乳飲料・水産練り製品、冷凍調理食品・総菜などの製造業であった。
 


(ウ)今後の仕入量の見込み
 今後の仕入量の見込みは、いずれの種類も「横ばい」が6〜7割程度を占めた(図10)。なお、ココア調製品および小麦粉調製品は「増加する」とした回答が3割程度存在した。

 増加の理由としては「需要の増加による商品の出荷数量の増加」の他、ソルビトール調製品では「商品の生産能力の補強」、ココア調製品では「新商品の開発」、小麦粉調製品では「1商品当たりの含有量の増加」などが挙げられた。業種は製菓業や乳飲料・乳製品・水産練り製品などの製造業が多かった。一方、減少の理由としては「需要の減少による商品の出荷数量の減少」の他、加糖あんでは「商品の生産中止」などが挙げられ、業種は清涼飲料・酒類や乳飲料・乳製品の製造業、製菓業などであった。
 


オ.仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(平成30年3月時点)を見ると、「200円未満」が15%で最も多く、次いで「200円以上260円未満」(6%)、「380円以上」(3%)となっている(図11)。

 種類別に見ると、ミルク調製品以外は「200円未満」が最も多い(図12)。ミルク調製品は「200円以上260円未満」が21%と最多であったが、その他すべての価格帯も一定数見られ、価格帯が分散していた。
 




(イ)昨年度と比較した仕入価格
 平成28年度と比べた29年度の仕入価格の動向は、いずれの種類も「横ばい」が最も多い(図13)。ただ、加糖あんや小麦粉調製品の「横ばい」は6〜7割であるのに対し、ソルビトール調製品は5割、ミルク調製品は4割、ココア調製品は3割となっている。また、ソルビトール調製品、ミルク調製品およびココア調製品は「やや上昇」の割合がいずれも2割以上存在した。「上昇」回答の理由として、加糖あん以外のすべての調製品では「主原料の生産量の変動」が挙げられ、その他の理由としてソルビトール調製品、ココア調製品、ミルク調製品、加糖あんでは「仕入先の価格改定」が、ミルク調製品はそれに加えて「為替の変動」などが挙げられた。業種は、パン・菓子や乳飲料・乳製品・水産練り製品の製造業などであった。「下落」回答の理由としては、「原料相場の変動」「仕入先の価格改定」「為替の変動」「規格(主原料、含有量等)の見直し」などが挙げられ、業種は、パン・菓子の製造業の他、清涼飲料・酒類、調味料・糖類や乳飲料・乳製品の製造業であった。
 


カ.加糖調製品に対する評価
 加糖調製品に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面については、いずれの調製品も「満足」「やや満足」の合計がおおむね5〜6割と高かった(図14)。

 調達面については、ソルビトール調製品、ミルク調製品、加糖あん、小麦粉調製品では「満足」「やや満足」の合計が過半数を超えたが、ココア調製品は3割程度にとどまった(図15)。また、ココア調製品では「やや不満」が、ソルビトール調製品では「不満」と回答する企業が一定数存在した。「不満」と回答した企業の理由は、受注から納品までに要する期間(リードタイム)の長さやデリバリー調整の難しさなど、製造国からの輸入に関連した要因が多かった。

図14 加糖調製品の品質面に対する評価

図15 加糖調製品の調達面に対する評価

(2)その他甘味料

ア.その他甘味料の用途
 その他甘味料の用途を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が9件で最も多く、次いで「水産練り製品」が7件、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「キャンディー・グミ・チューインガム」がともに5件で続く(図16)。

 種類別の用途数を見ると、果糖は「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「アイスクリーム類」など10種類、ソルビトールは「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」「水産練り製品」など9種類であった。その他に分類される用途には、冷凍食品やミント系のタブレット菓子、麺製品などが挙げられた。
 

イ.その他甘味料を使用する商品の数
 その他甘味料を使用する商品の数を種類別に見ると、果糖は「10点以下」が半数弱を占めた(図17)。ソルビトールは「10点以下」「11〜50点」がほぼ同率だったが、中には「51〜100点」と回答した企業もあった。
 


ウ.その他甘味料を使用する理由
 その他甘味料を使用する理由としては、「甘味料そのものの味、風味が良い」が7件と最多で、次いで「口当たりを良くする」「商品を日持ちさせる」が6件、「品質が安定している」「商品に風味を加える」が5件の順となっている(図18)。

 種類別に見ると、ソルビトールは「口当たりを良くする」「商品を日持ちさせる」「品質が安定している」など、より機能面を重視した回答に分散されているが、果糖は「甘味料そのものの味、風味が良い」が主な理由となっている。
 

エ.仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量

 平成29年度の仕入量を見ると、「90トン以上」が17%、「5トン以上30トン未満」「30トン以上60トン未満」がともに10%、「1トン以上5トン未満」が7%となっている(図19)。

 種類別に見ると、果糖は「90トン以上」が25%と最も多く、次いで「5トン以上30トン未満」「30トン以上60トン未満」が13%と続く(図20)。ソルビトールも同様に「90トン以上」が最も多いが、他の仕入量も一定数存在し、大差は見られない。
 



(イ)昨年度と比較した仕入量の動向
 平成28年度と比較した29年度の仕入量の動向は、ともに「横ばい」が半数以上を占めた(図21)。果糖、ソルビトールともに増減は一定数見られるものの、比較的安定した推移と思われる。

 「増加」と回答した企業の理由として、果糖、ソルビトールともに「需要の増加による商品の出荷数量の増加」「新商品の開発」が挙げられ、業種は乳飲料・乳製品の製造業や、パン・菓子、調味料、糖類の製造業であった。「減少」と回答した企業の理由として、果糖では「需要の減少による商品の出荷数量の減少」が、ソルビトールでは「商品アイテム数の減少」「商品の生産中止」などが挙げられ、業種としては清涼飲料・酒類、パン・菓子、乳飲料・乳製品の製造業であった。
 

(ウ)今後の仕入量の見込み
 今後の仕入量の見込みは、ともに「横ばい」が大半を占め、比較的安定している(図22)。横ばい以外を回答した企業は、増加要因として「需要の増加」を挙げ、業種は乳飲料・乳製品、菓子の製造業であった。減少要因としては、「商品の生産中止」が挙げられ、業種は製菓業であった。
 

 

オ.仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格
 1キログラム当たりの仕入価格(平成30年3月時点)を見ると、果糖は「200円以上250円未満」が19%、「200円未満」「250円以上300円未満」がともに13%であった(図23)。ソルビトールは、「110円未満」「110円以上130円未満」「200円以上」がいずれも同率で8%であった。
 


(イ)昨年度と比較した仕入価格
 平成28年度と比べた29年度の仕入価格の動向は、果糖は、回答した企業すべてが「横ばい」、ソルビトールについても「横ばい」が6割半と圧倒的に多く、安定した価格推移になっている(図24)。ソルビトールで「やや上昇」と回答した企業の理由としては、「仕入先の価格改定」「市場相場の変動」などが挙げられ、業種は菓子、水産練り製品の製造業であった。
 


カ.その他甘味料に対する評価
 その他甘味料に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面については、果糖、ソルビトールともに「満足」「やや満足」の合計が約半数となり、残り半数は「普通」と回答している(図25)。

 調達面についても同様に、「満足」「やや満足」を合わせるとそれぞれ半数程度となっている(図26)。ただ、果糖においては「やや不満」との回答が若干数見られ、その理由として、国産の製造数量に限りがあるため安定供給に課題がある点が懸念されていた。

図25 その他甘味料の品質面に対する評価

図26 その他甘味料の調達面に対する評価

おわりに

 仕入量については、加糖調製品およびその他甘味料ともに、一部増減はあるものの横ばいが過半を占め、総じて安定していると言える。

 仕入価格について、加糖調製品はすべての調製品で横ばい回答が最多である中、全体としては、下落より上昇回答の方が多く見られた。特に、ソルビトール調製品、ココア調製品、ミルク調製品、小麦粉調製品については、主原料の生産量や原料相場の変動が調製品の価格に波及している様子が見られた。

 調達面の満足度について、海外からの輸入が主である加糖調製品は、リードタイムの長さやデリバリー調整の難しさなど、輸入先国からの移送に関連する部分で一部不満回答が見られ、その他甘味料は、製造量が少ない国内産果糖の供給不足への懸念が述べられていた。いずれも、実需者からは商品の安定生産のため、その安定供給が切に求められている。

 2018年12月30日に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(TPP11協定)が発効され、同協定参加国(注)から輸入する加糖調製品については、関税割当枠内の低関税率が適用されることとなった。こうしたことが今後の加糖調製品の仕入動向、ひいては需要動向にどのような影響を及ぼしてくるか、注視していく必要があるだろう。

(注)TPP11協定の参加国は、豪州、ブルネイ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、カナダ、チリ。


最後に、お忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆様に、改めて厚くお礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272