3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年4月時点予測)
最終更新日:2019年5月14日
3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年4月時点予測)
2019年5月
2019/20年度、砂糖生産量および輸出量はかなり増加する見込み
LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2019年4月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は875万ヘクタール(前年度比0.2%増)、サトウキビ生産量は6億1400万トン(同0.6%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている(表2)。サトウキビをバイオエタノール生産へ仕向ける割合が平年並みに戻ると見込まれることから、砂糖生産量は3412万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同9.0%増)とかなり増加し、これに伴い、輸出量も2324万トン(同13.0%増)とかなりの増加が見込まれている。
国際価格の低迷のあおりを受け、製糖工場の操業停止が相次ぐ
現地報道によると、2019/20年度に操業を行う予定の製糖工場の総数は、前年度と比べ101少ない343工場になる見通しである。この中には、裁判所に会社再生の手続きを申し立てている48工場と破産手続きを開始している4工場が含まれることから、製糖期が終わる12月ごろまで操業できる製糖工場はさらに少なくなる可能性がある。関係者の間では、砂糖の国際価格の低迷により多くの製糖業者が採算の悪化した工場を維持できなくなっているという見方が以前からささやかれていたが、今回の報道はそれを裏付けるものとなった。
ブラジル、米国砂糖市場のアクセス拡大を期待
ブラジルのテレザ・クリスチーナ農務相は3月20日、前日にワシントンで行われたトランプ米大統領とブラジルのボルソナロ大統領との初の首脳会談において、2019年8月に期限切れとなるブラジルのエタノールに対する関税(注)をめぐって踏み込んだ議論は行われなかったことを明らかにした。事務レベルや閣僚レベルで行われた事前調整の段階で、条件面が折り合わなかったという。また、今後のエタノールに対する関税交渉に関して、米国の砂糖市場へのアクセス拡大と結び付けて検討する可能性も示唆した。
(注)ブラジルは、輸入するエタノールに対し、2017年からの2年間の期限付きで年間60万キロリットルの無税の関税割当を設けるとともに、超過した数量に対しては20%の関税を課している。なお、ブラジルは米国産エタノールの最大の輸入国であるため、この措置は米国のエタノール産業に大きな打撃を与えた。
2018/19年度、砂糖生産量はわずかに増加、
輸出量は大幅に増加する見込み 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は503万ヘクタール(前年度比4.2%増)とやや増加が見込まれている(表3)。マハラシュトラ州やカルナータカ州において干ばつや害虫の大量発生がサトウキビの生育を停滞させたものの、収穫面積の拡大により相殺され、サトウキビ生産量は4億303万トン(同1.5%減)とわずかな減少にとどまり、砂糖生産量は3515万トン(同1.2%増)とわずかに増加すると見込まれている。輸出量は、政府が製糖業者に対し500万トンの最低輸出義務を課すことから、370万トン(同56.6%増)と大幅な増加が見込まれている。
インドの砂糖産業への補助金をめぐり、各国が連携
世界貿易機関(WTO)は3月25日、インドにおける砂糖産業への補助金をめぐり、グアテマラが提訴する手続きに入ったと発表した。インドに対するWTO協定に基づく協議の申し入れは、ブラジル、豪州に次いで今年3例目となる。
WTOの発表によると、グアテマラは、インドの砂糖産業への一連の支援策が「農業生産額の10%を超えて国内助成措置を行ってはならない」と明記された農業に関する協定第7条第2項に反していると主張している。また、最低輸出枠の確実な履行と引き換えに製糖業者に支給されている補助金が世界での公正な競争を歪めており、WTOのルールに反するとしている。これに対し、インドは「いずれの措置もWTOの下で特定の開発途上国に認められているもの」と反論している。
現地報道によると、EUやタイも同様のWTO協議の申し入れを検討しているとされ、インドに対する包囲網が形成されつつある。
2018/19年度、砂糖生産量および輸入量はわずかに増加する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる一方、生産量は7859万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜については、政府がトウモロコシ支援政策を変更(注)したことでトウモロコシ価格が低下したことを受け、内モンゴル自治区などの生産者がてん菜への転作を進めていることなどから、収穫面積は24万ヘクタール(同30.5%増)、生産量は1167万トン(同21.7%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。これにより、原料作物の増産が期待できるものの、天候などの影響で低糖度になるとみられることから、砂糖生産量は1125万トン(同0.9%増)とわずかな増加が見込まれている。輸入量は、2018年10月から翌1月末にかけては前年同月と比べて大幅な増加が見られたが、2月以降の輸入は停滞していることから(後述参照)、604万トン(同0.4%増)とわずかな増加が見込まれている。
(注)政府は2016年4月、トウモロコシ備蓄政策について、最低保証価格を廃止し、市場買い付けとする変更を行った。
2019年2月の砂糖輸入量、過去5年で最低
中国税関総署が3月23日に発表した2019年2月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は、1万トン(前年同月比56.5%減、前月比92.3%減)と過去5年で最低を記録した。一方、2018年10月から翌2月末までの輸入量は、前月まで4カ月連続で前年同月を上回るペースで進捗していたこともあり、99万トン(前年同期比93.0%増)と大幅に増加した。ただし、中国では近年、砂糖需要の高まりに伴い海外からの砂糖の密輸が急増しており、この数量には密輸分が含まれていないため、実際の輸入量はさらに多いと推測される。
これに関連し、ミャンマー商務省は3月、ミャンマー国境周辺で砂糖の密輸が横行していると以前から関係者の間で指摘されていたことを受け、密輸の取り締まり強化の一環として、タイなどから輸入した砂糖を中国に再輸出している103の業者のうち、54者の輸出入許可証の発行を6カ月間停止し、43者を3カ月間の営業停止処分とする決定を下した。
2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は171万ヘクタール(前年度比1.1%減)とわずかに減少し、生産量は1億1748万トン(同15.1%減)とかなりの減少が見込まれている(表5)。てん菜生産量の減少に加え、てん菜の根中糖分が平年を下回るとみられることも影響し、砂糖生産量は1858万トン(同13.7%減)とかなり減少する見込みである。輸出量は、昨年度の豊作時と比較して原料が減産となったことで、196万トン(同48.6%減)と平年並みに戻ると見込まれている。
CIBE、持続可能なてん菜生産の実現に向け提言を発表
欧州てん菜生産者連盟(CIBE)は3月19日、てん菜生産の持続可能な成長を阻害する規制や政策の見直しなどを求める提言を発表した。これによると、2019年からネオニコチノイド系農薬が禁止されることを念頭に、禁止の決定のプロセスが不透明で客観性に欠けると指摘し、「農薬の使用を規制する場合は、農薬が使用される時期や周囲の環境などさまざまな要素を考慮して評価すべき」とし、環境保護へ傾倒する欧州委員会をけん制した。
また、砂糖の生産割当の廃止により各国で無秩序な砂糖生産が進められた結果、砂糖の国際価格は大幅に下落し、砂糖産業は大きな損害を被ったとして、これ以上の規制緩和をしないよう求めた。加えて、市場開放の重要性について認めながらも、行き過ぎた自由貿易に警鐘を鳴らし、一定の条件下での保護政策が必要であることを訴えた。
CIBEの会長は、プレスリリースの中で「提言の実現に向け欧州委員会や各国政府に働きかけを行い、次世代の生産者が安心して、てん菜を生産し続けられる環境を整えていきたい」と述べた。
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