4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年4月時点予測)
最終更新日:2019年5月14日
4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年4月時点予測)
2019年5月
近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2018年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカについて報告する。
本稿中の為替レートは2019年3月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.57円、1南アフリカ・ランド=9.10円、1米ドル=112円(111.99円)である。
2019/20年度、砂糖生産量は横ばい、輸出量はわずかに増加の見込み
2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移し、生産量は3281万トン(前年度比1.1%増)とわずかな増加が見込まれている(表6)。また、砂糖生産量は、446万トン(前年度同)と横ばいで推移すると見込まれている。輸出量は347万トン(前年度比1.6%増)とわずかに増加すると見込まれている。しかし、2018年の干ばつや2019年に発生した洪水などの自然災害がサトウキビの生育に及ぼした影響についてはいまだ不明で、影響の全容の把握に今後数カ月はかかるとみられている。このため、各数値は今後下方修正される可能性がある。
2018/19年度の砂糖生産量、約5%増加
豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)(注)によると、2018/19年度における豪州の砂糖生産量は、前年度比5.4%増の472万トンとなった。サトウキビの収穫面積は38万ヘクタール(前年度比1.4%増)とわずかに増加した一方、干ばつによってサトウキビの生育が抑制され、単収は過去5カ年の最低値である1ヘクタール当たり84.95トンとなった。しかし、CCS(可製糖率:サトウキビのショ糖含有率)については、乾燥した天候が有利に働き、過去9カ年で最高値の14.30%となったことで、2018/19年度の砂糖生産量は前年度と比較してやや増加する結果となった。地域別に見ると、いずれの地域も前年度と比較して砂糖生産量が増加した(表7)。クイーンズランド州バーデキン地方では191万トンが生産され、砂糖生産量の4割を占める結果となった。
(注)豪州の製糖業者が加盟する団体。
2018/19年度、砂糖生産量はやや減少する一方、輸出量は大幅増の見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、179万ヘクタール(前年度比0.1%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている(表8)。台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過し、サトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生した影響を受けて、サトウキビ生産量は1億3000万トン(同3.7%減)、砂糖生産量は1512万トン(同3.0%減)とやや減少が見込まれている。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するため輸出を強化するとみられることから、1218万トン(同20.9%増)と大幅な増加が見込まれている。
大気汚染対策として、焼き畑による収穫からハーベスタへの転換を推進
サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注1)は2月13日、全国で深刻化している大気汚染を解消するために砂糖産業の関係団体と会議を開き、焼き畑によって収穫されたサトウキビの割合(現在約70%)を3年以内に5%以下に抑制する方針を決定した。現在、同国では人手不足などを理由に、安易に焼き畑を選択する生産者が急増しており、焼き畑による煙などが深刻な大気汚染を引き起こしていると指摘されている。サトウキビの主産地の一つである同国北部では、基準値の2〜4倍のPM2.5(注2)が検出され、国民からは健康被害などへの影響を懸念する声が上がっていた。
同国政府は、ハーベスタの普及を図るため、60億バーツ(214億2000万円)規模の低利融資制度を2019/20年度から3年間行う計画を発表した。さらに、零細農家を対象に小型ハーベスタを取り扱っている日本の農機具メーカーと協力しながら機械導入を進めたり、農場の大規模化を推進し、大型ハーベスタを導入できる環境を整備したりする予定である。
(注1)サトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された、サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)の事務局。
(注2)大気中に浮遊している直径2.5μm(1μmは1mmの1000分の1)以下の小さな粒子を指す。PM2.5は非常に小さい粒子であるため、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系や循環器系への悪影響が懸念されている。 ている。
2019/20年度、砂糖生産量はわずかに減少し、輸出量はかなり減少する見込み
2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は28万ヘクタール(前年度比1.4%減)、生産量は1870万トン(同1.7%減)とわずかに減少すると見込まれている(表9)。砂糖生産量は234万トン(同0.3%減)とわずかに減少して推移すると見込まれるが、輸出量は国際価格の下落により競争力が低下していることから、91万トン(同9.2%減)とかなりの減少が見込まれている。
健康増進税の引き上げ、砂糖産業の労働市場にも打撃をもたらす可能性
南アフリカ財務大臣は2月20日、財政再建に向け増税を柱とする2019/20年度予算案を公表した。増税の対象となる税金には、2018年4月に導入されたばかりの健康増進税(糖類を含む飲料への課税(注1))も含まれ、糖類1グラム当たりの税額が現行2.1セント(注2)(0.19円)から5%程度引き上げられ、同2.21セント(0.20円)となる。
米国農務省(USDA)は3月13日、南アフリカにおける健康増進税が同国に与える影響を調査した結果を公表した。これによると、砂糖産業の収益が減少することで、多くの雇用機会が失われる可能性があるとの見方を示した。具体的には、健康増進税の導入によって飲料メーカーの砂糖に対する需要が30%減少すると見込まれることから、2018/19年度に製糖業者が本来得られていたはずの砂糖の販売収入の逸失額(逸失利益)は最大で1億2900万米ドル(144億4800万円)に達すると試算した。これに伴い、サトウキビ生産者に分配される収益も減少することから、1万人以上が離農する可能性がある。健康増進税が引き上げられた場合、これらの状況はさらに悪化するだけでなく、飲料の消費が本格的な減少局面を迎えると予想されることから、飲料業界では大規模なリストラを行う可能性が高いと指摘した。
(注1)糖類を含む飲料のうち、100ミリリットル当たり4グラムを超過するものについて、超過分の重量に1グラム当たりの税額を乗じた額を課税する仕組みとなっている。同4グラム以下の糖類を含む飲料は課税の対象外とされている。
(注2)1セントは、1南アフリカ・ランドの100分の1。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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