ホーム > 砂糖 > 調査報告 > てん菜 > 平成30年産てん菜の生産状況
最終更新日:2019年6月10日
てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っており、平成12年以前の作付面積は7万ヘクタール前後と安定して推移していた。
近年、生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴う労働力不足、他作物への転換、天候不順の影響による不作などによって作付面積は減少しているため、24年以降は6万ヘクタールを下回っている(図1)。
播種期および出芽期はほぼ平年並みであり、移植作業も順調に行われた。また、紙筒苗の分離障害が発生したことから、全自動移植機が普及している地域を中心に作業が一時的に停滞したものの、移植後の活着は良好であった。
6月は降水量が平年を上回り日照時間が平年を下回ったことから、湿害を受け生育が停滞した圃場も見られたが、全体的に生育は順調に推移し、7月1日時点では草丈、葉数とも平年を上回った(表1)。
病害虫については、褐斑病、根腐病および西部萎黄病の発生量は平年より少なく、そう根病は平年並みとなった。ヨトウガは、第1回目、第2回目の発生期ともに平年よりやや少なく、テンサイモグリハナバエは少なかった。
平成30年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ930ヘクタール減少し5万7209ヘクタール、10アール当たり収量は399キログラム減少し6311キログラム(前年比94%)、生産量は29万トン減少し361万1000トン(前年比93%)になった(表2)。一方で、平均根中糖分は17.2%と、前年産を0.1ポイント上回る糖分になった(図2)。
品種別の作付構成は、「カーベ2K314」(32.9%)、「パピリカ」(23.9%)、「アンジー」(14.7%)、「リボルタ」(11.2%)の順となっている。(表3)。
褐斑病やそう根病の抵抗性が優れる「カーベ2K314」や、そう根病抵抗性に優れ糖量のやや多い「ライエン」が前年より面積を伸ばしており、近年新しく認定された優良品種への転換が進んでいる。
てん菜の作付け戸数は全道的には減少傾向が続いており、平成30年は9年前(平成21年)と比べ1845戸減少(21%減少)し、7010戸となった。また、1戸当たりの作付面積は、30年は8.2ヘクタールと、10年で0.9ヘクタール増加した(表4)。このような作付け規模の拡大や労働力不足などに対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域が増加しており、30年の直播栽培面積は、前年より966ヘクタール増加の1万4723ヘクタール(作付面積の25.7%)となり、作付面積全体の4分の1を超える水準となった(図3)。
北海道内の製糖工場は、3社8工場が操業しており、平成30年産原料処理量は約361万1000トンで前年比93%となった。また、歩留まりは前年産とほぼ同等で、砂糖生産量は61万5000トン程度となり、前年比94%であった(表5)。
てん菜の作付面積は減少傾向にあり、平成30年は近年で最も少ない水準となったが、10アール当たり収量は6300キログラムを超え、糖分は17.2%となった。
てん菜は、本道畑作農業における基幹的な輪作作物であり地域経済上も重要であるが、1戸当たりの作付面積の拡大が進む中でコストや手間がかかること、近年の気候変動の影響などを受けたこと、機械の老朽化が見られることなどから作付け意欲が減退している。
こうしたことから、生産者団体、製糖業者、行政などの関係者が連携し、低コストで省力的な持続的生産体制の確立や複合耐病性があり糖量の多い品種の育成・導入や計画的な排水対策の実施など、安定生産に向けた取り組みの推進が必要となっている。