5. 日本の主要輸入先国の動向(2019年6月時点予測)
最終更新日:2019年7月10日
5. 日本の主要輸入先国の動向(2019年6月時点予測)
2019年7月
近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、 2018年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポ イント増)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3 カ月に1回の報告とし、今回はグアテマラについて報告する。本稿中の為替レートは2019年5月末日TTS 相場の値であり、1豪州ドル=78円(77.52円)である。
2019/20年度、砂糖生産量はやや減少する見込み
2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移するものの、2018年12月に集中豪雨に見舞われたクイーンズランド州北部を中心に湿害による生育不良の症状が見られることから、サトウキビ生産量は3168万トン(前年度比2.5%減)とわずかに減少すると見込まれている(表6)。
砂糖生産量はサトウキビの収量の減少に伴い446万トン(同5.6%減)とやや減少する一方、輸出量は346万トン(同1.5%増)とわずかに増加すると見込まれている。
クイーンズランド州政府、製糖業者に公的資金投入へ
クイーンズランド州政府は5月30日、経営難を理由にドイツの製糖業者への売却計画を進める豪州の製糖大手マッカイ・シュガー(Mackay Sugar)社に対し、1400万豪ドル(10億9200万円)の補助金を交付すると発表した。同州の副知事は、今回の決定について「マッカイ・シュガー社を救済するための措置でも、売却を後押しするものでもない」と述べ、あくまで設備投資を通じて効率性の高い生産を促すことが目的であることを強調した。
現地報道によると、同社の売却計画は、豪州政府の外国投資審査委員会(FIRB)からの承認をすでに得ており、あとは同社の株主総会での承認を待つだけとなっている。しかし、今回の売却には懸念もある。ドイツの製糖業者は、マッカイ・シュガー社が所有する製糖工場の一つ、モスマン工場(Mossman Mill)(注)の権益取得に難色を示しており、買収完了後、同工場を存続させない可能性が高い。地元の生産者団体がモスマン工場の事業買収をマッカイ・シュガー社に打診しているとされるが、条件面で折り合いがつくかは不透明な状況である。
(注)モスマン工場は、クイーンズランド州北部にあり、日本向けの粗糖も生産している。もともと地元の生産者団体が経営する工場であったが、2011年にマッカイ・シュガー社に買収された。マッカイ・シュガー社が所有する四つの製糖工場の中で最も処理能力が低いとされる。
2018/19年度、輸出量は大幅に増加する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は179万ヘクタール(前年度比0.1%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれるものの、サトウキビ生産量は台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過し、サトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生した影響を受け、1億3097万トン(同2.9%減)とわずかに減少すると見込まれている(表7)。
砂糖生産量は、気象被害が少なかった東北部のサトウキビの平均糖度が平年を上回り、サトウキビの減産分をカバーするとみられることから、1546万トン(同0.8%減)と横ばいで推移すると見込まれている。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するため輸出を強化するとみられることから、1218万トン(同20.9%増)と大幅な増加が見込まれている。
バイオマス発電所の建設計画、地元住民らの反対運動で難航
タイ最大手の製糖業者ミトポン(Mitr Phol)社がタイ東北部に建設を計画する大規模なバイオマス発電所をめぐり、地元住民らによる反対運動が起きている。5月21日に開催が予定されていた同社主催の計画推進のためのシンポジウムは、会場周辺で計画の白紙撤回を求める地元住民らによる抗議活動が激化したことから、開催延期に追い込まれた。
同社が計画するバイオマス発電所の建設予定地は、トゥン・グラー・ローンハイと呼ばれる世界的にも有名なジャスミン米(香り米)の産地に位置する。専門家などからは、工業用に仕向けられるサトウキビの生産は、生産性を高める目的で大量の化学肥料や農薬が使用される可能性があると指摘されており、反対するコメ農家の間では「産地のブランド価値を毀損するのでは」と懸念する声が相次いでいる。
2018/19年度、輸出量は大幅に増加する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は26万ヘクタール(前年度同)と横ばいが見込まれている一方、生産量は2559万トン(前年度比1.3%減)とわずかに減少すると見込まれている(表8)。
砂糖生産量は、サトウキビの平均糖度が平年を上回るとみられることから、319万トン(同7.9%増)とかなりの程度増加すると見込まれている。輸出量は、砂糖の国際価格の低迷の影響を受け大きく落ち込んだ前年度の反動から、244万トン(同33.6%増)と大幅に増加すると見込まれている。
インドの砂糖産業への補助金をめぐり、グアテマラもWTOに提訴へ
WTOは3月25日、インドにおける砂糖産業への補助金をめぐり、グアテマラが提訴する手続きに入ったと発表した。インドに対するWTO協定に基づく協議の申し入れは、ブラジル、豪州に次いで3例目となる。
WTOの発表によると、グアテマラは、インドの砂糖産業への一連の支援策が「農業生産額の10%を超えて国内助成措置を行ってはならない」と明記された農業に関する協定第7条第2項に反していると主張している。また、最低輸出枠の確実な履行と引き換えに製糖業者に支給されている補助金が世界での公正な競争を歪めており、WTOのルールに反するとしている。これに対し、インドは「いずれの措置もWTOの下で特定の開発途上国に認められているもの」と反論している。
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