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4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年7月時点予測)

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最終更新日:2019年8月9日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年7月時点予測)

2019年8月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018 年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、 この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
 
 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ 月に1回の報告とし、今回は南アフリカについて報告する。

豪州

2019/20年度、砂糖生産量はかなりの程度減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度比0.4%増)と横ばいで推移するものの、2018年12月に集中豪雨に見舞われたクイーンズランド州北部を中心に湿害による生育不良の症状が見られることから、サトウキビ生産量は3159万トン(同3.0%減)とやや減少すると見込まれている(表6)。

 砂糖生産量はサトウキビの生産減に伴い444万トン(同6.0%減)とかなりの程度減少する一方、輸出量は344万トン(同0.9%増)と横ばいで推移すると見込まれている。

豪州政府、インドの砂糖政策をめぐりWTOにパネル設置を要請
 豪州政府は7月11日、ブラジルと同様、インド政府との砂糖産業に対する支援政策に関する2国間協議が決裂したことを受け、WTOにパネルの設置を要請したと発表した。同政府は、「われわれは、2国間協議を開始する前からインド政府に対し、インドの輸出補助金が世界の砂糖需給に及ぼす影響などについての懸念を伝えてきたにもかかわらず、同政府は具体的な行動を取らず、今も輸出補助金を支給し続けている」と非難し、「インドの措置が豪州の生産者、製糖業者のみならず、豪州のサトウキビ生産地域の雇用にも多大な損害を与えている。今回のわれわれの行動は、砂糖産業によって支えられている地域の社会や経済を守るためでもある」と述べた。

マッカイ・シュガー社、モスマン工場の売却先が決まる
 クイーンズランド州北部のサトウキビ生産者団体らが設立した製糖業者ファー・ノーザン・ミリング(Far Northern Milling)社は7月8日、豪州の製糖大手マッカイ・シュガー(Mackay Sugar)社が所有する製糖工場の一つ、モスマン工場(Mossman Mill)(注)を買収すると発表した。マッカイ・シュガー社が7月下旬に開く臨時株主総会で正式に決定する。マッカイ・シュガー社は現在、経営難を理由にドイツの製糖業者への売却計画を進めており、懸案事項だったモスマン工場の切り売りで財務体質の改善にめどが付いたことから、同社の経営再建も大きく前進することとなる。

 サトウキビ生産者団体であるCanegrowersは同日、「地元関係者の悲願であった、モスマン工場を再び生産者の手に取り戻すという夢が現実になったことは非常に喜ばしいことだ」と述べ、「地域経済や地域社会をけん引する企業として活躍してほしい」と期待を表す声明を発表した。

 現地報道によると、ファー・ノーザン・ミリング社は、粗糖輸出に依存した収益構造から脱却し、国内外の実需者への直接販売を主体とする「精製糖企業」への転換を図ることや、施設内の遊休地を活用してバイオマス発電などの再生可能エネルギー関連事業にも乗り出すことを明らかにしている。

(注)モスマン工場は、クイーンズランド州北部にあり、日本向けの粗糖も生産している。もともと地元の生産者団体が経営する工場であったが、2011年にマッカイ・シュガー社に買収された。マッカイ・シュガー社が所有する四つの製糖工場の中で最も処理能力が低いとされる。

表7 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2018/19年度、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は179万ヘクタール(前年度比0.1%増)と横ばいで推移すると見込まれるものの、サトウキビ生産量は台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過し、サトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生した影響を受け、1億3097万トン(同2.9%減)とわずかに減少すると見込まれている(表7)。

 砂糖生産量は、気象被害が少なかった東北部のサトウキビの平均糖度が平年を上回り、サトウキビの減産分を相殺するとみられることから、1546万トン(同0.8%減)と横ばいで推移すると見込まれている。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するために輸出を強化するとみられることから、1218万トン(同20.9%増)と大幅な増加が見込まれている。

タイ製糖協会、焼き畑の抑制に向け政府に追加支援を要請
 タイ製糖協会(TSMC)は7月11日、焼き畑の抑制に向けたタイ政府の対策(注)が不十分であるとし、同政府に対し支援策拡充の必要性を訴えた。 焼き畑が規制されれば、生産者はハーベスタを導入するか、または労働者を雇い、サトウキビの葉や(しょう)(とう)()を手作業で除去するかの選択を迫られるが、いずれもコストがかさみ、経営への打撃は避けられない。そうなれば、サトウキビから他作物への転作が進み、サトウキビの生産量が減少することで、製糖業者の収益にも影響が出る可能性が高い。今回のTSMCの行動は、長引く砂糖の国際価格の低迷で製糖業者の業績が悪化する中、これ以上の負担増は国際競争力の低下を招くという危機感があるとみられる。

 TSMCは、ハーベスタ導入に必要な資金の低利融資制度が中小・零細生産者を対象としたものとなっていると指摘した上で、製糖業者も融資が受けられるよう運用の見直しを図り、製糖業者がハーベスタを所有し、生産者から農作業を受託する体制(農作業の受委託化)を早期に構築すべきとの認識を示した。

(注)タイ政府は、サトウキビの葉や梢頭部を燃やした後に収穫する焼き畑が大気汚染の悪化につながっているとし、2022年までに焼き畑の割合を5%以下とすることを目指している(2018/19年度の焼き畑の割合は約61%〈推計〉)。これに向けた具体的な対策は、「タイにおける砂糖産業の動向」『砂糖類・でん粉情報』2019年6月号(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)をご参照ください。

表8 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2019/20年度、輸出量はかなり大きく減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、28万ヘクタール(前年度比0.7%増)と横ばいで推移すると見込まれている。また、サトウキビの生育はおおむね良好であることから、生産量は1930万トン(同1.4%増)とわずかに増加すると見込まれている(表8)。

 砂糖生産量は、一部地域で4〜5月にかけ降雨が多く、平年より収穫時期が遅れているものの、サトウキビの品質や歩留まりへの影響は小さいとみられることから、233万トン(同0.6%減)と横ばいで推移すると見込まれている。輸出量は、砂糖の国際価格の低迷が続いていることから、輸出を控える動きが広がりつつあり、87万トン(同12.5%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。

南アフリカの製糖業者、大規模なリストラを検討
 南アフリカなどで製糖やでん粉製造などの農産品加工を手掛けるトンガート・ヒューレット(Tongaat Hulett)社は5月23日、高コスト構造の是正や事業合理化の一環として、5000人規模の人員削減を行うと発表した。

 南アフリカの砂糖産業は近年、通関業務の不手際に起因した安価な外国産砂糖の大量流入(注)、糖類を含む飲料に対する砂糖税の導入による砂糖需要の縮減、砂糖の国際価格の低迷による輸出不振などの逆風が相次いでいた。このため、同社は製糖事業などの不採算事業を整理し、経営の抜本的な変革が必要と判断したとみられる。

 現地報道によると、同社は今回の人員削減と合わせて、南アフリカ国内に所有する四つの製糖工場のいずれかを売却する方針を固めたとされる。

(注)2017年4月から9月までに輸入された砂糖について、本来適用すべき税率よりも低い税率が適用され、そのうち数週間は無税で通関されていたことが判明した。徴収されなかった関税額について、政府は具体的な金額を公表していないものの、貿易統計などから推計すると、数億南アフリカ・ランド(1南アフリカ・ランド=約8円)に上るとみられる。

表9 南アフリカの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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