4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年8月時点予測)
最終更新日:2019年9月10日
4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年8月時点予測)
2019年9月
近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018 年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、 この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ 月に1回の報告とし、今回はフィリピンについて報告する。
2019/20年度、砂糖生産量はかなりの程度減少する見込み
2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかに増加するものの、夏の記録的な猛暑による生育遅れに加え、2018年12月に集中豪雨に見舞われたクイーンズランド州北部を中心に湿害による生育不良の症状が見られることから、サトウキビ生産量は3154万トン(同3.1%減)とやや減少すると見込まれている(表6)。
砂糖生産量はサトウキビ生産量の減少に伴い444万トン(同6.1%減)とかなりの程度減少し、また、輸出量は砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、339万トン(同12.8%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。
マッカイ・シュガー社、ドイツの製糖業者からの買収提案を承認
マッカイ・シュガー(Mackay Sugar)社は7月29日、臨時株主総会を開き、ドイツで第2位の生産規模を誇る製糖業者ノルトツッカー(Nordzucker)社による買収提案を承認したと発表した。これにより、ノルトツッカー社はマッカイ・シュガー社の株式の70%を取得することとなる。なお、買収金額は1億2000万豪ドル(92億4000万円)と推定される。
競合他社との価格競争が激化する中、砂糖の国際価格の低迷で輸出不振が長引き、約2億豪ドル(154億円)の債務超過となっていたマッカイ・シュガー社にとって、ノルトツッカー社からの買収提案は渡りに船だったとみられる。他方、ノルトツッカー社は、人口増加や内需拡大を背景に砂糖消費が旺盛な東南アジアに販路を持つマッカイ・シュガー社を傘下に収めれば、世界の成長市場への展開を一挙に拡大することができると判断したとみられる。
現地報道によると、ノルトツッカー社は、マッカイ・シュガー社が所有する三つの製糖工場の大規模な設備改修も計画しており、一層の効率化と合理化を図るとしている。
生産者団体、抗議活動の正当性を国際社会に訴える
クイーンズランド州の生産者団体であるCANEGROWERS(注1)は8月2日、クイーンズランド州政府が州議会に提出したグレートバリアリーフ(サンゴ礁)の保護強化を目的とした「グレートバリアリーフ保護対策法」の改正案(注2)に対し、反対の姿勢を示す自らの正当性を世論に訴えるため、法案の問題点などを指摘する動画を動画投稿サイトなどで公開した。今回の動画の公開は、改正に反対する同団体による抗議活動が国際的な批判を浴びていたこともあり、改正案の内容の問題点を浮き彫りにすることで、なぜ抗議しているのかを地域住民のみならず、国際社会にも理解してもらうのが狙いとみられる。
動画の中で同団体は「われわれは10年以上も、農地からの農薬や肥料の流出量を自主的に規制し、グレートバリアリーフ海域の水質改善に貢献してきた」と述べ、サンゴ礁の白化現象(注3)の原因がはっきりしない中での州政府による規制の強化は、「砂糖産業への不当な狙い撃ち」と非難した。
(注1)CANEGROWERSは1934年に設立され、クイーンズランド州のサトウキビ生産者の4分の3が加入している。
(注2)改正案は、産業界の自発的な取り組みの推進に重きを置く現行法を見直し、施用した肥料や農薬の量と種類を詳しく州政府に報告させることや、圃場からの肥料・農薬成分の河川や地下水への流出を厳しく規制するなど行政の関与を強める内容となっている。
(注3)水産庁によると、白化現象とは、サンゴ礁を形成する造礁サンゴに共生している「褐虫藻」と呼ばれる藻類が失われることで、サンゴの白い骨格が透けて見える現象。白化した状態が続くと、サンゴは褐虫藻からの光合成生産物を受け取ることができず、壊滅する。
2018/19年度、輸出量はやや増加する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は179万ヘクタール(前年度比0.1%増)と横ばいで推移すると見込まれるものの、サトウキビ生産量は台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過し、サトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生した影響を受け、1億3097万トン(同2.9%減)とわずかに減少すると見込まれている(表7)。
砂糖生産量は、気象被害が少なかった東北部のサトウキビの平均糖度が平年を上回り、サトウキビの減産分を相殺するとみられることから、1546万トン(同0.8%減)と横ばいで推移すると見込まれている。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するために輸出を強化するとみられることから、1060万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれている。
タイ政府、糖類を含む飲料への課税措置の増税への準備を促す
タイ政府は7月下旬、飲料メーカーなどに対し糖類を含む飲料への課税措置について2019年10月1日から予定通り増税することを改めて周知した。この課税措置は、健康増進政策の一環として2017年9月に導入され、100ミリリットル中の糖類含有量が6グラムを超える飲料(ペットボトルや缶などの容器に入ったもの)が課税対象となっている。糖類含有量に応じて税率が異なり、課税対象商品を販売した飲料メーカーや輸入業者が納税する仕組みである。10月1日以降、同10グラム以下のものは税率が据え置かれるものの、それを超えるものは最大で税率が5倍となる。このことから、政府は飲料中の糖類含有量のさらなる低減に寄与することを期待している。
タイ保健省によると、タイの国民1人当たりの砂糖摂取量は1日平均110グラム以上と世界保健機関(WHO)が推奨する基準(同25グラム程度)の約4倍となっている。同国の消費者団体は、「屋台やショッピングモールのフードコートなどで客の注文に応じて1杯ずつ作られる飲み物の中には、1杯でWHOが推奨する基準を超える砂糖が含まれているものがある」と注意喚起しているものの、こうした飲み物が課税の対象になっていないことから、疾病予防の専門家などの間では現行の課税制度が砂糖摂取の低減につながるのか懐疑的に見る向きもある。
2018/19年度、輸出量は大幅に減少する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は42万ヘクタール(前年度比0.8%減)と横ばいで推移すると見込まれている一方、サトウキビ生産量は主要生産地で乾燥した気候が続いたことから、2175万トン(同8.8%減)とかなりの程度減少すると見込まれている(表8)。
砂糖生産量は、サトウキビの平均糖度が平年を上回り、サトウキビの減産分をカバーするとみられることから、207万トン(同0.5%減)と横ばいで推移すると見込まれている。輸出量は、国内供給を優先するとみられることから、13万トン(同39.0%減)と大幅に減少すると見込まれている。
フィリピン政府、飲料メーカーなどに対し砂糖輸入を許可
フィリピン政府は8月1日、各地で頻発する干ばつや洪水などの影響により、砂糖生産量が2年連続で同政府が定めた目標を下回ったことを受け、飲料メーカーや小売業者などに対し最大25万トンの精製糖の輸入を許可すると発表した(注)。
フィリピンでは、製糖業者の重要な収益源の一つになっている米国向けの砂糖輸出について、FTAに基づき設定されている関税割当数量(TRQ)14万トンを前年度に続き今年度も消化できない可能性が明らかになるなど、砂糖に対する需要が高いにもかかわらず、国内生産だけでは供給を賄えないことが問題視されている。近年の砂糖生産の落ち込みは、天候の影響に加え、人手不足による管理の粗放化が進み、サトウキビの生産基盤が弱体化しているためと指摘する声もある。
(注)フィリピンでは、砂糖の需給管理・調整を図る観点から砂糖の輸入量は、砂糖統制委員会(SRA)によって管理されている。消費サイドである飲料メーカーや小売業者などは、砂糖を自由に輸入することができなかった(再輸出を目的とした輸入は除く)が、2018年に大統領の行政命令に基づき輸入管理に関する規制が大幅に緩和された。ただし、輸入できる時期や用途に応じて上限が定められている。
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