ホーム > 砂糖 > 海外現地調査報告 > 中国のあんこをめぐる動向
最終更新日:2019年10月10日
コラム1 小豆をめぐる事情2008年に発生した中国産食品の安全性をめぐる問題は、中国産小豆の貿易にも波及し、同国産小豆に過度に依存してきた日本企業が調達先の多角化を進める転機となった。その結果、日本の小豆の輸入量は、カナダ産が中国産に次いで二番目に多くなっている(コラム1−図1)。日本の貿易統計によると、カナダからの小豆の輸入量は約10年前から急激に増え始め、中国を抜いてカナダが輸入シェアトップとなる年もあった。 もともとカナダの小豆栽培は、気候や土壌条件が小豆栽培に適し、北海道とほぼ同緯度にあるオンタリオ州に日本の商社などが日本産小豆の種子を持ち込んで地元企業と契約栽培を始めたことがきっかけとされる。このため、カナダにおける小豆輸出の推移を見ると、日本への輸出量が最も多い。近年は、日本以外の国へ輸出される割合が高くなっており、特にエジプト向けの輸出が伸びている(コラム1−図2)。 中国に目を移すと、2009年以降、日本向けの減少分を韓国に仕向けているが、完全に代替するには至っていない(コラム1−図3)。一方で、中国国内の小豆需要がそれを補う兆しが見られる。今回訪問した北京市や青島市のスーパーマーケットでは、日本風のあんパンや、甘く煮た小豆をパンに練り込んだ菓子パンなどが数多く売られていた(コラム1−写真)。関係者によると、ひと昔前まではこのような商品はそれほど多くはなかったという。パンメーカーなどが加盟する中国パン・菓子産業協会の担当者は、「各社が差別化できる商材を求めたことや、消費者の嗜好に合うものであったことから、小豆を使用したパンの開発が進んだのではないか」と述べ、新たな小豆文化が定着しつつあることが示唆された。 同協会によると、加盟全社を集計した2018年のパン・菓子類の売上実績は5634億元(8兆5637憶円)に達し、このうちパンの売り上げが4割を占める。2010年以降、年平均10%程度で伸びているとされるパンの売り上げが今後も順調に推移すれば、中国におけるパン食の広がりとともに、小豆を使用したパンの消費も伸びると予想される。 |
コラム2 日本と中国のあんの違い中国のあんは、食味、品質ともに日本のものとなんら遜色ないレベルである。あえて違いを挙げるとすれば、色味と甘さである。宝清紅小豆の表皮は、エリモショウズなどの国産小豆と比べ色味が濃い。こうした品種特性の違いから、中国のあんは褐色が濃い仕上がりとなる(コラム2−写真)。 また、日本の消費者の低甘味志向を反映し、以前と比べ甘みを抑えた商品の開発が進むが、実際に販売される商品の多くは50〜60%の砂糖が含まれており、40%台の低糖度のあんの生産はまだ少量である。工場を出荷してから日本に到着するまで平均15日程度の日数を要することを踏まえれば、現在の砂糖含有量は食品の保存性を高める上で必要な分量であると言える。ただし、甘さの感じ方は、食感や風味、湿度などの違いによっても変化することから、現実には日本のあんとの甘さの違いを区別するのは難しい。 |