2019/20年度、輸出量は大幅に減少する見込み
2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は162万ヘクタール(前年度比5.4%減)とやや減少すると見込まれている(表5)。てん菜生産量は、深刻な干ばつに見舞われた前年度からの反動で1億1854万トン(同3.7%増)とやや増加すると見込まれる。
EU最大の砂糖生産国フランスにおけるてん菜生産の落ち込みが響き(後述)、砂糖生産量は1805万トン(同1.2%減)とわずかに減少し、生産量が消費量を下回ると予想されることから、輸出量は139万トン(同30.8%減)と大幅に減少すると見込まれている。
EUとメルコスールとのFTA、EUの批准手続きは難航必至
EUの政策に対して賛否を判断するオーストリア議会の小委員会は9月19日、6月末にEUとメルコスール(南米南部共同市場)
(注1)が政治合意した自由貿易協定(FTA)について、締結に反対する決議を採択した。同委員会は、決議に基づき政府の意思を法的に拘束する権限を有していることから、オーストリア政府はこの決定に従い、加盟国の閣僚級代表により構成される欧州理事会において、同FTA締結に関する議案に反対票を投じることとなる。
同FTAを発効させるには、EUは欧州議会の同意と欧州理事会での全会一致の決定が必要となるが、今回のオーストリア議会の決定によってEU内の批准手続きは難航することが予想される。
なお、メルコスールとのFTAをめぐっては、フランスとアイルランドもFTA締結に反対する意向を表明している。EU各国がメルコスールとのFTA締結に抵抗する姿勢を示す背景には、同FTAに反対する農業団体などが政府への活発なロビー活動を展開し、必死に巻き返しを図っていることがある。砂糖については、ブラジル産粗糖に対して現行の関税割当数量(33万4054トン)
(注2)の範囲内で無税の関税割当枠(18万トン)を設けることで合意しているが、欧州の製糖団体などは「史上最悪の譲歩」と酷評し、強く反発しており、合意の撤回と再交渉を求めている。
EUの粗糖の輸入量は、年により変動があるものの2018年はブラジルからの輸入量が最も多い。メルコスールとのFTAが発効すれば、同国からの輸入シェアが大きく広がる可能性がある。
(注1)外務省によると、メルコスールは域内の関税撤廃などを目的に発足し、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ、ボリビアの6カ国が加盟している。ただし、ベネズエラは加盟資格停止、ボリビアは各国議会の批准待ちで現在議決権はない。
(注2)ブラジル産粗糖に対する関税割当内の関税率は1トン当たり98ユーロ(1万1760円)、関税割当外の関税率は同339ユーロ(4万680円)である。
フランスのてん菜生産量、前年と比べかなり減少する見込み
フランス農務省は10月9日、2019/20年度のてん菜生産量が前年比7.5%減の3700万トンとなる見込みと発表した。これは、平年より高温・乾燥した状況が続いたことに加え、長引く砂糖の国際価格の低迷とネオニコチノイド系農薬の使用規制
(注3)により生産者の生産意欲の減退を招き、作付面積自体が減っていることが影響しているとした。
また、同省はてん菜生産量が減少する結果、製糖期間は前年より9日短い107日間になると予想しており、稼働率の低下による製糖業者の業績の影響にも懸念を示した。
(注3)ネオニコチノイドの使用規制に関する情報は、当機構ホームページの海外情報「欧州委員会、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止を決定(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002218.html)をご参照ください。