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4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年10月時点予測)

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最終更新日:2019年11月11日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年10月時点予測)

2019年11月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカについて報告する。本稿中の為替レートは2019年9月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.61円である。

豪州

2019/20年度、砂糖生産量はかなり大きく減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかに増加するものの、夏の記録的な猛暑による影響で生育の遅れが見られることから、サトウキビ生産量は3064万トン(同5.9%減)とやや減少すると見込まれる(表6)。

 砂糖生産量は、サトウキビの減産に加え、平均糖度が前年度を下回る水準で推移していることも影響し、416万トン(同11.9%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。また、輸出量は砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、309万トン(同20.5%減)と大幅に減少すると見込まれる。

クイーンズランド州議会、グレートバリアリーフ保護対策法改正案を可決
 クイーンズランド州議会は9月19日、グレートバリアリーフ(サンゴ礁)の保護強化を目的とした「グレートバリアリーフ保護対策法」の改正案を可決した。改正案は、深刻化するサンゴの白化現象(注1)を食い止める手段の一つとして、産業界の自発的な取り組みの推進に重きを置く現行法を見直し、施用した肥料や農薬の量と種類を詳しく州政府に報告させることや、圃場から河川や地下水への肥料・農薬成分の流出を厳しく規制するなど行政の関与を強める内容となっている。
 
 これに対し、クイーンズランド州の生産者団体であるCANEGROWERS(注2)は同日、「サトウキビ生産者はこれまで持続可能な生産活動に(しん)()に取り組み、州政府などが定める環境基準をすべてクリアしているにもかかわらず、環境保護という大義名分を振りかざして農業分野への環境規制をさらに強化する今回の決定は科学的でなく、失望した」と述べ、改正法の下で実施されるあらゆる政策・措置を断固として拒否すると表明した。

(注1)水産庁によると、白化現象とは、サンゴ礁を形成する造礁サンゴに共生している「褐虫藻」と呼ばれる藻類が失われることで、サンゴの白い骨格が透けて見える現象。白化した状態が続くと、サンゴは褐虫藻からの光合成生産物を受け取ることができず、壊滅する。
(注2)1934年に設立され、クイーンズランド州のサトウキビ生産者の4分の3が加入している農業団体。

表7 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2019/20年度、砂糖生産量は減少するものの輸出量は増加する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、157万ヘクタール(前年度比12.2%減)、サトウキビ生産量は1億1500万トン(同12.2%減)と、ともにかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。

 砂糖生産量は、サトウキビ生産の落ち込みに加え、全国的な天候不順による生育不良で糖度低下の傾向が見られることから、1323万トン(同14.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するために輸出を強化するとみられることから、1302万トン(同22.9%増)と大幅に増加すると見込まれる。

糖類を含む飲料に対する課税、10月1日から税率引き上げ
 タイ政府は10月1日、当初の予定通り糖類を含む飲料に対する課税(以下「砂糖税」)(注1)の税率を引き上げた。この課税措置は、健康増進政策の一環(注2)として2017年9月に導入されたもので、100ミリリットル中の糖類含有量が6グラムを超える飲料(ペットボトルや缶などの容器に入ったもの)が課税対象となる。砂糖含有量に応じて税率が異なるため、代表的な品目のみを挙げると、タイで一般的な甘い緑茶の税率(同10グラム超14グラム以下のもの)は1リットル当たり0.5バーツ(約2円)から同1バーツ(約4円)、炭酸飲料の税率(同14グラム超18グラム以下のもの)は同1バーツから同3バーツ(約11円)にそれぞれ引き上げられた。

 同国物品税局によると、砂糖税の引き上げによる税収増は年間約10億バーツ(36億1000万円)と見込んでいる。また、同局は「飲料中の砂糖含有量は増税前とあまり変化が見られないものの、無糖の緑茶飲料の販売量は着実に増えている」と述べ、砂糖税導入によって消費者の商品選択の幅が広がり、健康への意識啓発にもつながっていることを成果として強調した。

(注1)タイにおける砂糖税の導入や課税スケジュールについては「政策変更が進むタイの砂糖産業の動向」『砂糖類・でん粉情報』2018年3月号(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001683.html)を、最近の業界関係者の見解については「タイにおける砂糖産業の動向」同2019年6月号(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)をご参照ください。
(注2)タイ保健省によると、砂糖などの糖類の成人1人・1日当たりの摂取量は100グラムを超えるとされる。このため、同国政府は世界保健機関(WHO)が奨励する、糖類摂取量1日25グラム未満(摂取する総カロリーの5%未満)に抑えることを目標に掲げている。

表8 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2019/20年度、輸出量はかなり大きく減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は28万ヘクタール(前年度比0.7%増)と横ばいで推移し、サトウキビ生産量は生育期間を通じて天候がおおむね良好で、順調に生育していることから、1990万トン(同4.6%増)とやや増加すると見込まれる(表8)。

 収穫期前半の4月から5月ごろの降雨による収穫遅れでサトウキビの糖度低下が見られたものの、その後順調に収穫作業が進捗していることから、砂糖生産量は237万トン(同1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸出量は、砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、93万トン(同14.7%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

南アフリカ最大手の製糖業者、サトウキビ生産事業から撤退へ
 南アフリカ最大手の製糖業者トンガート・ヒューレット(Tongaat Hulett)社は、会計上の不正行為が発覚したことで、同社の株式が証券取引所で売買停止となり、2019年3月期の決算発表も大幅に遅れるなど混乱に陥っている。不正会計の発覚後、巨額の損失を抱えていることも明るみとなり、同社は10月11日、社内混乱の早期収束と経営立て直しを図るためサトウキビ生産事業から撤退すると発表した。

 同社は、8400ヘクタールの農地で自らサトウキビ生産を行っているほか、具体的な数値は明らかにされてないが、かなりの面積を生産者に貸し付けてサトウキビ生産を委託しているとされる。今後、これらの農地は第三者に売却されるが、引き続きサトウキビ生産に供されるかは極めて不透明で、同国のサトウキビ生産全体に少なからず影響を及ぼす可能性がある。

表9 南アフリカの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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