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4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年11月時点予測)

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最終更新日:2019年12月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年11月時点予測)

2019年12月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018 年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、 この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ 月に1回の報告とし、今回はフィリピンについて報告する。

豪州

2019/20年度、砂糖生産量、輸出量ともにかなり大きく減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は38万ヘクタール(前年度比0.7%増)と横ばいで推移するものの、夏の記録的な猛暑による影響で生育の遅れが見られることから、サトウキビ生産量は3016万トン(同7.2%減)とかなりの程度減少すると見込まれる(表6)。

 砂糖生産量はサトウキビの減産に加え、平均糖度が前年度を下回る水準で推移していることも影響し、410万トン(同13.3%減)、輸出量は砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、303万トン(同11.5%減)と、ともにかなり大きく減少すると見込まれる。

クイーンズランド州政府、新たな環境規制への対応を促す
 クイーンズランド州政府の環境相は10月18日、世界自然遺産に登録されているグレートバリアリーフ(サンゴ礁)の保護強化を目的とした「グレートバリアリーフ保護対策法」の改正案(注)が9月に可決されたことに伴い、法令を順守するための実践的な技術を学ぶことができる州政府公認の研修プログラムを受講した生産者に対し、受講に必要な経費の一部を補助すると発表した。

 同相は、「農業分野に関する新たな環境規制は、業界の同意の下で定めたものであり、すべての生産者が順守する必要がある。12月1日に法令が施行されるため、今回の制度を積極的に活用し、円滑な対応が進むことを期待する」と述べた。

 これに対し、クイーンズランド州のサトウキビの生産者団体であるCANEGROWERSは同日、「われわれは、一貫して法令改正に反対する姿勢を示しており、新たな環境規制に一切同意していない」と述べ、同相の発言には生産者に誤解を与える表現が含まれているとし、強く抗議した。

(注)改正されたグレートバリアリーフ保護対策法は、産業界の自発的な取り組みの推進に重きを置く現行法を見直し、施用した肥料や農薬の量と種類を詳しく州政府に報告させることや、圃場からの肥料・農薬成分の河川や地下水への流出を厳しく規制するなど行政の関与を強める内容となっている。

表7 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2019/20年度、砂糖生産量は減少するものの輸出量は増加する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、157万ヘクタール(前年度比12.2%減)、サトウキビ生産量は1億1500万トン(同12.2%減)と、ともにかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。

 サトウキビ生産の落ち込みに加え、全国的な天候不順による生育不良で糖度低下の傾向が見られることから、砂糖生産量は1323万トン(同14.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。一方、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するために輸出を強化するとみられることから、輸出量は1287万トン(同23.3%増)と大幅に増加すると見込まれる。

タイ政府、グリホサートを主成分とする除草剤などを禁止へ
 タイ政府の国家有害物質委員会(NHSC)は10月22日、グリホサート、パラコートを主成分とする除草剤およびクロルピリホスを主成分とする殺虫剤の3種の農薬について、製造、輸入、輸出、保有を禁止する決議を採択した。これを定めた有害物質法は、12月1日に施行される。

 これを受け、タイの農業団体は決定の差し止めを求めて裁判所に提訴するとともに、農薬が使用できない影響で収入が減少した場合、政府などに損害賠償を求める考えを示した(注)。また、タイ甘しゃ糖技術者会議(TSSCT)は、禁止される農薬はサトウキビを生産する上で欠かせないものとなっている現状を踏まえ、「サトウキビの生産量が最大50%低下する」との試算を示し、「砂糖とエタノール産業に大きな打撃を与えるだろう」としている。

 現地報道によると、米国農務省(USDA)も、禁止された農薬を製造・輸出する企業を米国内に抱えるため、タイ政府に再考を求める書簡を送ったとされ、国内外で今回の政府の決定に抗議する動きが広がっている。

(注)有害物質法には使用そのものを禁止する規定はないものの、保有が禁止されるため、事実上、当該農薬を使用することができない。

表8 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2019/20年度、輸出量は大幅に増加する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、42万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかに増加すると見込まれている。前年度の生産の落ち込みの反動による影響もあり、サトウキビ生産量は2425万トン(同11.5%増)とかなり大きく増加すると見込まれている(表8)。

 しかし、平年より降雨量が多く、日照時間が短かった影響でサトウキビが低糖度傾向にあることから、サトウキビの増産分を打ち消し、砂糖生産量は210万トン(同1.1%増)とわずかな増加にとどまると見込まれている。輸出量は、平年を下回る水準であるものの、前年度の輸出の落ち込みの反動で、17万トン(同32.8%増)と大幅に増加すると見込まれている。

フィリピンの上院議会、砂糖の輸入自由化を阻止
 フィリピンの上院議会は11月11日、砂糖の輸入規制緩和につながるいかなる法案も議会に提出しないよう政府に求める決議を全会一致で採択した。

 フィリピンでは、砂糖の国内需給を調整するため砂糖の輸入量などは砂糖統制委員会(SRA)によって管理されている。しかし、その弊害として生産性向上や合理化によるコスト削減が進まず、国際競争力の低下を招いている上、国内の物価が上昇すると砂糖やそれを原料に使う飲料や調味料などの加工食品の価格が高止まりしてしまう傾向にあった。同国財務省は、こうした状況を問題視し、砂糖の輸入自由化に向けて検討する考えを示していた。

 今回の決議を主導した上院議員の農業・食料委員長は、「わが国では、2015年に砂糖の国際競争力の強化を図る目的で措置した砂糖産業開発法に基づき、さまざまな政策が進行している最中であり、現段階で砂糖の輸入自由化に関する議論を開始するのは時期尚早である。また、食生活に不可欠な砂糖の輸入自由化は、食料安全保障の確保を優先課題として掲げるロドリゴ・ドゥテルテ大統領の施政方針に反する」と述べた。

表9 フィリピンの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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