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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年1月時点予測)

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最終更新日:2020年2月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年1月時点予測)

2020年2月

ブラジル

2019/20年度、生産量はわずかに増加、輸出量は横ばいで推移する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2020年1月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが一部で見られるため、859万ヘクタール(前年度比0.7%減)とわずかに減少するものの、生育期間を通じて天候がおおむね良好で、順調に生育していることから、サトウキビ生産量は6億4110万トン(同3.3%増)とやや増加すると見込まれる(表2)。

 長期化する砂糖の国際価格低迷などの影響を受けて、多くの製糖業者でエタノール生産を強化する動きが目立つものの、砂糖とエタノールの仕向け割合は前年度と同水準で落ち着くとみられることから、砂糖生産量は3162万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同1.3%増)とわずかに増加し、輸出量は2098万トン(同0.1%増)と横ばいで推移すると見込まれる。

ニューヨーク粗糖先物相場の上昇を受け、製糖業者は砂糖の増産を検討
 粗糖の先物価格の長期低迷や、バイオエタノールの堅調な需要を背景に2019/20年度におけるブラジルのサトウキビの砂糖生産への仕向け割合は35.3%と、記録が残る2005/06年度以降で最も低い水準となる見通しである。しかし、2019年12月に入ってからは、インドやタイなどの主要生産国での減産が見込まれることから粗糖の国際価格は1ポンド当たり13セント台で推移した後、2020年1月中旬には同14セント台まで上昇しており、砂糖生産の収益性は改善するとみられる。現地報道によると、業界関係者が砂糖の増産に踏み切るには同14セント台を十分高い価格とは言えず、輸出港へのアクセスの良い業者に限られるとみられる。また、多くの製糖業者が砂糖の増産へかじを切るのは同15セントが分岐点になるだろうという見通しもある。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2019/20年度、輸出量は上方修正
 サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州で発生した()(じょう)の浸水被害などが影響し、2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は459万ヘクタール(前年度比9.8%減)、サトウキビ生産量は3億6504万トン(同9.2%減)と、ともにかなりの程度減少すると見込まれる(表3)。

 糖みつなどを利用したエタノールの生産量は当初の予測を下回って推移しているものの、前述のサトウキビ生産量の減少や長雨によるサトウキビの糖度低下の影響を考慮すると、砂糖生産量は2933万トン(同17.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。砂糖相場が上昇傾向に転じたことで製糖業者の輸出意欲が高まっていることから、輸出量は前月から大きく上方修正されたものの、512万トン(同7.0%減)とかなりの程度減少する見込みである。

インド政府、2019/20年度砂糖輸出枠の再分配を発表
 インド政府は2019年8月、2019/20年度の砂糖の輸出を促進するために製糖業者ごとに輸出目標枠(MAEQ: Maximum Admissible Export Quantity)を設定し、砂糖の輸送費なども補助することで、2019/20年度に600万トンを輸出する計画を承認した(注)。しかし、製糖業者の中には契約が難航している者や輸出を検討しない者もおり、このままでは輸出目標を達成できない可能性が出てきた。これを受け、同政府は2020年1月3日、輸出目標を達成する見込みのある製糖業者に未達分の輸出枠を再分配する方針を製糖業者に通知した。具体的には、2019年10月から12月の輸出契約状況に基づき、目標の25%未満しか契約できていない製糖業者の輸出枠の一部を、既に目標の75%以上を契約し、枠の拡大を希望する製糖業者に1月31日までに再分配する。4月以降も直近の輸出状況を踏まえ、再配分を繰り返し、600万トン全量を確実に輸出することを目指す。

 現地報道によると、2020年1月上旬時点で280万トン分の輸出契約が締結されており、2019/20年度の輸出目標の5割弱を達成したことになる。

(注)MAEQは努力義務として設定されているため、目標数量を達成できなくても罰則などは生じない。

マハラシュトラ州、砂糖生産量が前年度の約5割まで落ち込む見込み
 現地報道によると、インドの砂糖生産量第2位のマハラシュトラ州では、2018年の干ばつの影響によるサトウキビ栽培面積の減少に加え、2019年8月に発生した豪雨によって多くのサトウキビ圃場が浸水被害を受けたことで、2019/20年度(以下、今年度という)のサトウキビの収穫面積は82万2000ヘクタール(前年度比29.3%減)と大幅に減少するとみられる。また、浸水によって損傷したサトウキビが飼料用に仕向けられているため、製糖工場に搬入されるサトウキビの量はさらに減少している。同州の砂糖局によると、今年度の同州の砂糖生産量は520万トンと前年度の約5割まで落ち込むと予測されており、製糖期間も前年度と比較して2カ月以上短くなると見込まれている。

 同州では、原料だけではなくサトウキビの収穫を行う季節労働者の不足も問題となっている。例年同州には近隣地域から70万〜80万人の農家が出稼ぎに来るが、今年度は長雨の影響を受けて本業の農業に専念する選択をした労働者が多く、今年度の季節労働者数は例年と比較して15〜20%少ないという。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2019/20年度、輸入量はかなりの程度増加する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は118万ヘクタール(前年度比3.5%減)とやや減少し、天候不順で停滞していたサトウキビの生育状況に回復の兆しが見られるものの、収穫面積の減少による影響を相殺しきれず、サトウキビ生産量は7769万トン(同1.1%減)とわずかに減少すると見込まれる(表4)。てん菜については、収穫面積は21万ヘクタール(同12.4%減)とかなり大きく減少し、主産地である内モンゴル自治区で広範囲の害虫被害が発生した影響から、てん菜生産量は1090万トン(同6.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 これに伴い、砂糖生産量は1103万トン(同5.2%減)とやや減少し、その不足分を賄うため、輸入量は518万トン(同7.3%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

2019年11月の砂糖輸入量、前年同月と比べわずかに減少
 中国税関総署が2019年12月23日に発表した2019年11月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は33万トン(前年同月比2.9%減、前月比26.7%減)と前年同月からわずかに減少した。ただし、10月の輸入量が前年同月比32.4%増の45万トンであったことから、10月から始まった2019/20年度の輸入量の累計は78万トン(前年同期比14.7%増)と、2018/19年度を上回って推移している。なお、中国では近年、砂糖需要の高まりに伴い海外から砂糖が密輸されていると言われているが、この数量には密輸分が含まれていないため、実際の輸入量はさらに多いと推測される。
 

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2019/20年度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は161万ヘクタール(前年度比5.6%減)とやや減少すると見込まれている(表5)。てん菜生産量は、深刻な干ばつに見舞われた前年度からの反動で1億1469万トン(同2.9%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 前年ほどではないものの平年より高温・乾燥した状況が続いた、EU最大の砂糖生産国フランスにおけるてん菜生産の落ち込みが響き、砂糖生産量は1800万トン(同1.7%減)とわずかに減少し、生産量が消費量を下回ると予想されることから、輸出量は117万トン(同38.5%減)と大幅に減少すると見込まれている。

欧州委員会、砂糖および異性化糖の中期的需給見通しを公表
 欧州委員会は2019年12月10日、砂糖および異性化糖に関する中期的需給見通しを公表した。2030/31年度のてん菜生産量は、砂糖価格の上昇に伴うてん菜買い取り価格の引き上げにより農家の収益性も上昇し、てん菜の作付面積が維持されることで、1億2373万トン(2019/20年度比3.7%増)と見込まれている。また、フランスやドイツなどの「ビートベルト」と呼ばれるてん菜主要生産地域に位置する製糖工場の閉鎖が2019年以降7件発表されているものの、残された製糖工場に原料が集中し稼働率が上昇することで砂糖生産量の減少には影響を及ぼさず、2030/31年度の砂糖生産量は1853万トン(以下精製糖換算、同5.9%増)と見込まれている。一方、砂糖消費量(注)については消費者の健康志向によって清涼飲料水や菓子の消費が落ち込み、2030/31年度にかけて年間0.8%の割合で減少するとみられる。消費量が減少することで輸出余力が増加するため、2030/31年度の輸出量は224万トン(同73.8%増)と予測されている。

 異性化糖については、砂糖より低価格であることを強みに今後穏やかに需要が増加し、2030/31年度の生産量は100万トン(同59.9%増)に達するものの、甘味料全体に占める割合は低く、5%程度と見込まれている。

(注)全体の砂糖消費量から工業用などの用途を除き、食品として消費するものに限る。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2019年12月時点)

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