2019/20年度、輸出量はかなりの程度増加
2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、161万ヘクタール(前年度比12.5%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は1億トン(同23.6%減)と大幅に減少すると見込まれる(表7)。
サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は1205万トン(同22.1%減)と大幅に減少すると見込まれる。一方、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった砂糖の過剰在庫を解消するために消費の増加が期待できる近隣諸国への輸出を強化するとみられることから、輸出量は1109万トン(同6.2%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。
タイ政府、2019/20年度のサトウキビ期首価格を引き上げ
タイ政府は2019年12月、2019/20年度のサトウキビの期首価格を1トン当たり750バーツ(2783円)とし、前年度から50バーツ(186円)引き上げることを発表した
(注1)。期首価格は、タイサトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)が予測する当該年度の砂糖産業全体の収益を基に設定される。2019/20年度の平均可製糖率(CCS)
(注2)は12.51と予測されていることから、実際の期首価格は1トン当たり863バーツ(3202円)程度と見込まれている。
(注1)期首価格は、農家に支払われる最低取引価格のうち当該年度の期首に決定される価格で、基準糖度10CCSとして決定されている。実際のCCSに準じて1CCS当たり45バーツ(167円)が加算または減算される。年度終了時に実績に基づき期末価格が決定され、差額が精算される。
(注2)サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。日本の品質取引に用いられる甘しゃ糖度に回収率(結晶として回収し得る砂糖の割合)を乗じたもの。
ハーベスタ不足で焼き畑規制を無視する農家も
タイ政府は2019年2月以降、焼き畑による大気汚染を防止するため、製糖業者に対し、焼き畑で収穫されたサトウキビの取引量を制限するなどの規制を行っているが、現地報道によると、タイ中部に位置するナコンサワン県などでは焼き畑を引き続き行う農家が見られている。同県ではハーベスタの貸し出しが行われているが、申し込みが相次ぎ、ハーベスタの空きが出るまで順番待ちの状態が続いている。一部の農家は、焼き畑に対する罰則があると認識しているものの、収穫遅れに起因する品質劣化で手取りが減ることを避けたいという思いが強く、行政当局の監視が緩い夜間に焼き畑を行っているという。公害管理局によると、同県における2020年1月上旬のPM2.5濃度は基準値を上回り、大気汚染の状態は野外活動を減らすことが望ましい水準にある。
(注)タイの焼き畑の現状、課題および政府の政策などについての詳細は、「砂糖類・でん粉情報」2019年6月号「タイにおける砂糖産業の動向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)を参照されたい。