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4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年1月時点予測)

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最終更新日:2020年2月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年1月時点予測)

2020年2月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカについて報告する。

 本稿中の為替レートは2019年12月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.71円、1南アフリカ・ランド=9.34円である。

豪州

2019/20年度、砂糖生産量、輸出量ともに減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は38万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移するものの、夏の記録的な猛暑による影響で生育の遅れが見られることから、サトウキビ生産量は3004万トン(前年度比7.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる(表6)。

 砂糖生産量はサトウキビの減産に加え、平均糖度が前年度を下回る水準で推移していることも影響し、410万トン(同13.2%減)とかなり大きく減少し、輸出量は砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、313万トン(同8.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

1月以降の降雨量が2020/21年度の砂糖生産量に影響する可能性
 LMC Internationalによると、2019年11月から続いている豪州の森林火災によって焼失した面積は1000万ヘクタールに及び、森林火災の収束は早くても2020年3月以降になると予測されている。ただし、同国産糖の9割以上を生産するクイーンズランド(QLD)州では森林火災被害をあまり受けておらず、圃場への延焼などによるサトウキビ生産量の減少は見込まれていない。一方、森林火災の一因でもある乾燥した気候はサトウキビの生育を抑制するとされている。2019年12月、QLD州と砂糖生産量第2位のニューサウスウェールズ州では100ミリメートルを超える雨が降ったものの、それ以前までの降水量はサトウキビの生育に必要十分な水準に達しておらず、2020年1月から3月の降雨量が4月から始まる2020/21年度の砂糖生産に大きく影響を与えるとみられる。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2019/20年度、輸出量はかなりの程度増加
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、161万ヘクタール(前年度比12.5%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は1億トン(同23.6%減)と大幅に減少すると見込まれる(表7)。

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は1205万トン(同22.1%減)と大幅に減少すると見込まれる。一方、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった砂糖の過剰在庫を解消するために消費の増加が期待できる近隣諸国への輸出を強化するとみられることから、輸出量は1109万トン(同6.2%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

タイ政府、2019/20年度のサトウキビ期首価格を引き上げ
 タイ政府は2019年12月、2019/20年度のサトウキビの期首価格を1トン当たり750バーツ(2783円)とし、前年度から50バーツ(186円)引き上げることを発表した(注1)。期首価格は、タイサトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)が予測する当該年度の砂糖産業全体の収益を基に設定される。2019/20年度の平均可製糖率(CCS)(注2)は12.51と予測されていることから、実際の期首価格は1トン当たり863バーツ(3202円)程度と見込まれている。

(注1)期首価格は、農家に支払われる最低取引価格のうち当該年度の期首に決定される価格で、基準糖度10CCSとして決定されている。実際のCCSに準じて1CCS当たり45バーツ(167円)が加算または減算される。年度終了時に実績に基づき期末価格が決定され、差額が精算される。
(注2)サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。日本の品質取引に用いられる甘しゃ糖度に回収率(結晶として回収し得る砂糖の割合)を乗じたもの。


ハーベスタ不足で焼き畑規制を無視する農家も
 タイ政府は2019年2月以降、焼き畑による大気汚染を防止するため、製糖業者に対し、焼き畑で収穫されたサトウキビの取引量を制限するなどの規制を行っているが、現地報道によると、タイ中部に位置するナコンサワン県などでは焼き畑を引き続き行う農家が見られている。同県ではハーベスタの貸し出しが行われているが、申し込みが相次ぎ、ハーベスタの空きが出るまで順番待ちの状態が続いている。一部の農家は、焼き畑に対する罰則があると認識しているものの、収穫遅れに起因する品質劣化で手取りが減ることを避けたいという思いが強く、行政当局の監視が緩い夜間に焼き畑を行っているという。公害管理局によると、同県における2020年1月上旬のPM2.5濃度は基準値を上回り、大気汚染の状態は野外活動を減らすことが望ましい水準にある。

(注)タイの焼き畑の現状、課題および政府の政策などについての詳細は、「砂糖類・でん粉情報」2019年6月号「タイにおける砂糖産業の動向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)を参照されたい。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2019/20年度、生産量と輸出量はやや増加する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は28万ヘクタール(前年度比0.7%増)とほぼ横ばいで推移し、生育期の天候に恵まれたことでサトウキビ生産量は1972万トン(同3.6%増)とやや増加すると見込まれている(表8)。

 原料の増産を受けて、砂糖生産量は244万トン(同3.9%増)とやや増加し、輸出量も114万トン(同4.5%増)とやや増加すると見込まれている。

南アフリカ製糖協会、製糖業者の事業拡大の必要性を主張
 南アフリカ製糖協会(SASA)は2019年12月6日、南アフリカの砂糖産業の持続的な発展のためには製糖以外の事業にも今後取り組む必要があるとの考えを示した。

 同協会によると、同国産砂糖の需要はここ2年間で急速に縮小傾向にある。一つ目の要因として、2018年4月に導入された健康増進税(糖類を含む飲料への課税)による増税を飲料メーカーが回避するために飲料へ添加する糖類の量を削減したことが挙げられる。2018/19年度は、健康増進税の影響を受けて砂糖消費量が25万トン減少し、その損失額は最低でも12億ランド(112億800万円)に上るとみられる。二つ目の要因は、隣国エスワティニからの砂糖輸入量の増加である(注)。2019/20年度のエスワティニからの砂糖輸入量は前年度比20%増と予測されている。

 同協会は、砂糖の輸入は必要不可欠なものではなく、国内需要が国内産糖で満たせない場合に輸入するべきと指摘したほか、バガス由来の製品やエタノールを製造したり、サトウキビ以外の作物へ転作したりすることで、砂糖事業への依存度を低くする必要性があるとした。

(注)南アフリカ関税同盟(SACU)加盟国(南アフリカ、ボツワナ、レソト、ナミビア、エスワティニ)のうち、砂糖生産国は南アフリカとエスワティニのみである。エスワティニには南アフリカへの砂糖の無税輸出枠が割り当てられているが、実際の輸出量は輸出枠を超え、年間30万〜40万トンに上るといわれている。

表8 南アフリカの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272