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4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年2月時点予測)

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最終更新日:2020年3月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年2月時点予測)

2020年3月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、 この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
 
 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はフィリピンについて報告する。

 本稿中の為替レートは2020年1月末日TTS相場の値であり、1インドネシア・ルピア=0.0092円、1タイ・バーツ=3.59円である。

豪州

2019/20年度、砂糖生産量、輸出量ともに減少する見込み  
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は37万ヘクタール(前年度比3.2%減)とやや減少し、夏の記録的な猛暑による影響で生育の遅れが見られることから、サトウキビ生産量は3004万トン(同7.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる(表6)。  

 砂糖生産量はサトウキビの減産に加え、平均糖度が前年度を下回る水準で推移していることも影響し、428万トン(同9.2%減)とかなりの程度減少し、輸出量は砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、313万トン(同8.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

IA-CEPAの批准により、豪州産糖の関税は削減へ  
 インドネシア議会は2月7日、豪州との包括的経済連携協定(IA-CEPA)を批准した。同協定の発効は同議会の批准から60日後とみられる。IA-CEPAの発効によって、インドネシアから豪州へのすべての輸出品は無税、豪州からインドネシアへの輸出については99%以上の品目で関税撤廃か大幅削減が実現する。豪州はタイに次ぐインドネシアの砂糖輸入先国であるが、同協定によって砂糖の関税は最大12%(従価税換算)(注)から5%に引き下げられる。タイ産粗糖がインドネシアに輸入される際も、東南アジア諸国連合(ASEAN)物品貿易協定(ATIGA)に基づき関税が5%まで削減されているが、IA-CEPAの発効によって豪州産粗糖の関税率はタイ産に並ぶこととなる。

(注)同協定発効前の粗糖の関税率は1キログラム当たり550ルピア(5.1円)、精製糖の関税率は同790ルピア(7.3円)。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2019/20年度、輸出量はかなり大きく減少する見込み  
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、161万ヘクタール(前年度比12.5%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は8302万トン(同36.6%減)と大幅に減少すると見込まれる。  

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は991万トン(同35.9%減)と大幅に減少すると見込まれる。砂糖の減産に伴い、輸出量は905万トン(同13.3%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

ミトポン社、サトウキビの葉の買い取りを開始  
 タイの最大手製糖業者であるミトポン(Mitr Phol)社は、2019年12月1日から翌4月30日の期間、サトウキビの焼き畑防止のためにサトウキビの葉の買い取りを実施することを発表した。葉の買い取り価格は1トン当たり1000バーツ(3590円)で、葉の刈り取りや輸送にかかるコストは同500バーツ(1795円)程度であるため、残りの同500バーツが農家の収益となる。買い取られた葉は主にバイオマス発電の燃料として使用される。また、タイ製糖協会(TSMC)も、同協会に加盟している製糖業者の代理として農家からサトウキビの葉の買い取りを実施していることを明らかにした。タイ政府は2021/22年度までに焼き畑で収穫されたサトウキビの割合を5%以下とする方針であるが、タイ国内ではいまだに焼き畑を行う農家が多く、焼き畑に伴う大気汚染が連日報道されている(注)

(注)タイのサトウキビ生産における焼き畑政策については、「砂糖類・でん粉情報」2019年6月号「タイにおける砂糖産業の動向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)を参照されたい。

焼かれていないサトウキビの買い取り価格は1トン当たり1000バーツ超えの見込み  
 タイのスリヤ工業相は1月19日、2019/20年度のサトウキビの買い取り価格について、焼き畑以外の方法で収穫された場合、1トン当たり1000バーツ(3590円)を超える見込みであると述べた。   

 工業省はタイサトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)に対し、2019/20年度に100億バーツ(359億円)規模の補助金をサトウキビ農家に支払うよう命じており、65億バーツ(233億3500万円)は資材購入費の補助として、残りの35億バーツ(125億6500万円)は焼き畑以外の方法でサトウキビを収穫した農家に対して支払われる。2019/20年度のサトウキビの期首価格は1トン当たり750バーツ(2693円)(注)であるが、これらの補助金が上乗せされると、焼き畑以外の方法で収穫されたサトウキビの価格は同1000バーツ(3590円)を超えるとみられる。

(注)期首価格は、農家に支払われる最低取引価格のうち当該年度の期首に決定される価格で、基準糖度10CCS(可製糖率)として決定されている。実際のCCSに準じて1CCS当たり45バーツ(162円)が加算または減算される。年度終了時に実績に基づき期末価格が決定され、差額が精算される。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2019/20年度、輸出量は大幅に増加する見込み
 
2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は41万ヘクタール(前年度比0.8%減)とほぼ横ばいで推移する見込みである(表8)。前年度の生産の落ち込みの反動による影響もあり、サトウキビ生産量は2384万トン(同9.7%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

 しかし、平年より降雨量が多く、日照時間が短かった影響でサトウキビが低糖度傾向にあることから、砂糖生産量は210万トン(同1.1%増)とわずかな増加にとどまると見込まれる。輸出量は、平年を下回る水準であるものの、前年度の輸出の落ち込みの反動で14万トン(同31.0%増)と大幅に増加すると見込まれる。

上院議会に続き下院議会も、砂糖の輸入自由化に反対
 
フィリピンの上院議会は2019年11月、砂糖の輸入に関する規制緩和を阻止する決議案を採択したが、現地報道によると、下院議会も2020年1月、砂糖の輸入自由化を行わないとする決議案を可決した。

 フィリピンでは、砂糖の国内需給を調整するため砂糖の輸入量などは砂糖統制委員会(SRA)によって管理されているが、その弊害として生産性向上や合理化によるコスト削減が進んでいないことや、国内の物価上昇時に砂糖やそれを原料に使う加工食品の価格が高止まりしてしまうことが問題視されていた。同国財務省は、これらの懸念を解決するために砂糖の輸入自由化を検討する考えを示しており、下院議会の聴聞会では、その第一歩として現行よりも効率的で透明性の高い一般入札の実現に向けて検討を進めていることを明らかにしていた。

 業界関係者は下院議会の決定に対して「上院に続いて下院でも輸入自由化を阻止する決議案が採択されたことに感謝する。輸入の自由化は国内の砂糖産業を脅かしかねない」と議会の決定に賛同する声明を発表した。

表8 フィリピンの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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