5. 日本の主要輸入先国の動向(2020年3月時点予測)
最終更新日:2020年4月10日
5. 日本の主要輸入先国の動向(2020年3月時点予測)
2020年4月
近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピンで、2019年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が81.4%(前年比10.2ポイント増)、タイが18.6%(同9.5ポイント減)と、この2カ国でほぼ100%を占めている(財務省「貿易統計」)。
豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカおよびフィリピンについては、半年に1回の報告(南アフリカは3月号および10月号、フィリピンは4月号および9月号を予定)とする。
本稿中の為替レートは2020年2月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.55円である。
2019/20年度、砂糖生産量、輸出量ともに減少する見込み
2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は36万ヘクタール(前年度比3.7%減)とやや減少し、夏の記録的な猛暑による影響で生育の遅れが見られることから、サトウキビ生産量は3004万トン(同7.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる(表6)。
砂糖生産量はサトウキビの減産に加え、平均糖度が前年度を下回る水準で推移していることも影響し、428万トン(同9.2%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、輸出量は333万トン(同2.9%減)とわずかに減少すると見込まれる。
クイーンズランド州の砂糖生産量、過去8年間で最低となる
豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)は2月17日、2019/20年度のサトウキビと砂糖の生産実績を公表した。同国産砂糖の9割以上を生産するクイーンズランド州のサトウキビ収穫面積は、前年度比4.5%減の35万ヘクタールとなった。単収は、同州のすべての地域で過去8年間の平均を下回り、州全体では1ヘクタール当たり81.25トン(前年度比2.3%減)と減少した。面積と単収の減少によって、サトウキビ生産量は2844万トン(同6.7%減)とかなりの程度減少した。可製糖率も14.18(同1.9%減)とわずかに低下したことで、砂糖生産量は408万トン(同8.8%減)と、過去8年間で最も少ない生産量となった。同協議会は、同州の砂糖産業にとって2019/20年度は、生産量の落ち込みに加えて砂糖の国際価格の低迷に苦しむ厳しい年となったと評した。
2020/21年度については、最近の国際価格の上昇や降雨量の増加は好ましい状況といえるものの、ある地域では降雨のタイミングが遅く、サトウキビの生育を促進しないとみられるため、砂糖生産量の回復はあまり期待できないと見込んでいる。
2019/20年度、輸出量は大幅に減少する見込み
2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、156万ヘクタール(前年度比15.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は7401万トン(同43.5%減)と大幅に減少すると見込まれる(表7)。
サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は868万トン(同43.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。砂糖の減産に伴い、輸出量は834万トン(同20.1%減)と大幅に減少すると見込まれる。
干ばつが6月まで長引いた場合、サトウキビ生産への影響は甚大
タイのEconomic Intelligence Center(EIC)(注1)は3月2日、2020年の干ばつがタイの農産物に及ぼす影響を発表し、主要な農産物のうち、サトウキビと米(裏作)の生産量は前年度と比較して大幅に減少する可能性があるとした。
同国では2019年から干ばつが続いており、2020年2月時点のダム貯水率は、中部地方が最も低く19%、北部や東北部も過去5年間の平均を下回る約40%となっている(注2)。EICによると、最悪の場合、2019/20年度のサトウキビ生産量は前年度比43%減の約7500万トンと見込まれるほか、干ばつが6月まで長引けば、次年度(2020/21年度)のサトウキビ生産にも影響を与えるとみられる。
また、サトウキビ価格は供給不足によって上昇し、2019/20年度の期末価格は1トン当たり800バーツ(2840円)を超えるものの、生産量の減少が価格上昇分を打ち消すことで農家の収入は減少すると予測されている。EICによると、2020年のサトウキビ農家の収入は前年と比較して35%減少すると見込まれ、政府による技術支援や他作物への転作の推進などが実施される可能性があるとしている。
(注1)タイの大手商業銀行であるサイアム商業銀行のコンサルタント部門。
(注2)EICによると、サトウキビ栽培地域の内訳は、東北部が約45%、中部が約30%、北部が約25%と予測されている。
2018/19年度、生産量はほぼ横ばいで推移する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、他作物への転作が影響し、41万ヘクタール(前年度比2.0%減)とわずかに減少すると見込まれる(表8)。単収が前年度より落ち込むことで、サトウキビ生産量は2177万トン(同9.2%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。しかし、糖度の高さがサトウキビ生産量の減少を相殺し、砂糖生産量は207万トン(同0.4%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれる。
2019/20年度、生産量はわずかに減少し、輸出量は大幅に増加する見込み
2019/20砂糖年度のサトウキビ収穫面積は41万ヘクタール(前年度比0.8%減)、サトウキビ生産量は2175万トン(同0.1%減)とともにほぼ横ばいで推移すると見込まれる。しかし、平年より降雨量が多く、日照時間が短かった影響でサトウキビが低糖度傾向にあることから、砂糖生産量は203万トン(同2.4%減)とわずかに減少し、過去10年間で最も少なくなると見込まれる。輸出量は、平年を下回る水準であるものの、前年度の輸出の落ち込みの反動で14万トン(同31.0%増)と大幅に増加すると見込まれる。
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