ホーム > 砂糖 > 各国の砂糖制度 > インドにおける砂糖の生産動向および余剰在庫解消への取り組み
最終更新日:2020年5月11日
コラム1 インドの伝統的な含みつ糖グルインドの一般的な甘味料といえば、白糖のほかに、伝統的な含みつ糖である「グル」が挙げられる(コラム1−写真1)。グルは農村部で零細家内工業的に製造されており、製造拠点は約10万カ所存在すると推定されている。オープンパンと呼ばれる釜でサトウキビの搾り汁を煮詰めることが特徴である(コラム1−図)。グル生産は政府の管理下にないため、グル製造業者は市況を見ながらサトウキビの買い取り価格やグル生産量を自由に決めることができる。 製品としては円柱形、円すい形や粉末状などさまざまな形態のグルがあるが、円柱形などの大きなグルは、小さく砕いて料理の味付けなどに使用される。スーパーマーケットではグルが砂糖売り場の隣に並べられており、グルを使用した菓子も多く販売されている(コラム1−写真2)。また、グルは祭事品目としても需要があり、11月のヒンズー教の祭典の時期に農家がグルを製造し、親戚や友人に配る習慣があるなど同国の風土に密着した食品となっている。 グルは都市部より農村部、若者より年配者の消費量が多いとされるが、最近では「グルはミネラルが豊富で身体に優しい“オーガニック”な食品」といったイメージ戦略が功を奏し、健康志向の高い都市部の若者の間でも見直され、消費量が伸びつつある。 |
コラム2 インドにおける甘味料の消費砂糖消費量世界第一位のインドでは、大きく分けて精製度が高い順に精製糖、白糖の2種類と分みつしただけの粗糖が生産されているが、最も生産量が多いのは白糖である。これは、国内消費量が最も多いためで、粗糖を直接消費する習慣はあまりない。一方、精製糖はもっぱら輸出用に生産され、国内需要は低い。 白糖は、粒度(4段階)と色相(2段階)によって7種類に分類される。SSサイズは主に製薬メーカーが利用し、S・M・Lサイズの白糖は食品メーカーや家庭消費向けに販売されている(コラム2−写真1、2)。地域による食習慣の違いなどから、北部ではLサイズ、東部ではMサイズ、西部ではSサイズが好まれる。 砂糖の仕向け割合を見ると、食品メーカーなどが製品の原料として使用する業務用が全体の約65%、家庭消費用が約35%となっている。1人当たりの砂糖消費量はほぼ横ばいで推移しているが、人口の増加に伴い国全体の消費量は増加傾向にある(コラム2−図)。 一方、異性化糖は、原料となるトウモロコシ(注)のほとんどが飼料用やでん粉用に仕向けられていることや、製造コストが砂糖より高いことから、国内でほとんど生産されていない。また、オーガニックシュガーや低カロリーの代替甘味料は高級スーパーマーケットで販売されているものの、一般市民からの需要は低い。今回取材した業界関係者によれば、代替甘味料のうち高甘味度甘味料には苦味があり、インドでは普及しにくいだろうとのことであった。 (注)インドは遺伝子組み換えトウモロコシの輸入を認めておらず、国内で消費されるトウモロコシのほとんどが国産とされる。 |