砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 砂糖の国際需給・需給レポート > 3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年4月時点予測)

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年4月時点予測)

印刷ページ

最終更新日:2020年5月11日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年4月時点予測)

2020年5月

ブラジル
2020/21年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に増加する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2020年4月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、砂糖の国際価格の動きに不安定さが見られ、バイオエタノール需要の減退懸念が広がりつつあるものの、バイオ燃料などの再生可能エネルギーの生産・利用の促進を図るブラジルの国家政策「RenovaBio」が本格始動することで生産意欲を後押しする可能性があることも踏まえ、2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は851万ヘクタール(前年度比0.9%減)と横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間を通じて天候がおおむね良好で生育が順調であることから、6億5100万トン(同1.5%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 バイオエタノール需要の減退懸念などを受け、多くの製糖業者が砂糖生産に回帰する動きが見られることから、砂糖生産量は4196万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉同32.2%増)と大幅に増加すると見込まれる。この予測の下、ブラジルの通貨レアルが米ドルに対して安値圏で推移することで、輸出意欲を刺激することとも相まって、輸出量は3213万トン(同57.8%増)と大幅に増加すると見込まれる。

燃料配給業者、バイオエタノールの調達を控える動き
 2019/20年度のバイオエタノール生産量は史上最高の338億リットルに達する見込みとなる中、原油価格の急落に伴い価格優位性が低下した影響で、バイオエタノールの需要は急速に冷え込んでいる。

 現地報道によると、自動車燃料などを販売するブラジルの大手燃料配給業者2社は、国内外へのバイオエタノールの供給がだぶつき、貯蔵タンクの容量がひっ迫する恐れがあるとして、製糖業者からのバイオエタノールの調達を見合わせる可能性を示唆した。これに対し、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)は4月1日、ホームページを通じて「バイオエタノールの販売が制限されれば、製糖業者だけでなく、サトウキビ生産者をはじめとするさまざまな産業が打撃を受ける」とコメントを出し、燃料配給業者に対し契約に従って適切に取引を行うよう求めた。

需要減などによりオーガニックシュガーの在庫が積み上がる
 ブラジル農務省(MAPA)が3月12日に発表した2019/20年度の砂糖の生産状況報告によると、3月1日時点での砂糖生産量は前年同期と比べ57万トン多い2943万トン(前年同期比2.0%増)とわずかに増加した。糖種別に見ると、同国で最も多く生産され、輸出が主の粗糖(Very high polarity raw sugar(注))は同2.0%減と前年度を下回る一方、国内消費にも仕向けられる白糖は同9.8%増とかなりの程度増加した。また、オーガニックシュガーは、過去最高の生産量を記録した前年度を上回る24万7000トン(同4.5%増)となった。

 同国は、オーガニックシュガーの生産量の約9割を輸出に仕向けているが、価格面で優位にあるコロンビアやパラグアイなどが輸出量を伸ばす一方、有機食品市場の拡大をけん引してきた欧米からの引き合いが鈍化し、2月末時点でのオーガニックシュガーの在庫量は生産量の半分に相当する12万5000トンに達している。

(注)MAPAによると、糖度99度を超える粗糖を指す。
表2
(参考)ブラジル
インド
2019/20年度、砂糖生産量、輸出量ともに減少する見込み
 サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州で発生した長雨による大規模な()(じょう)の浸水被害などが影響し、2019/20年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は461万ヘクタール(前年度比10.5%減)とかなりの程度減少し、サトウキビ生産量は3億5937万トン(同12.6%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表3)。

 サトウキビの減産や生育不良によるサトウキビの糖度低下の影響に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止をめぐる対応で物流の混乱が見られる(後述)ことも考慮すると、砂糖生産量は2879万トン(同19.6%減)と大幅に減少すると見込まれる。これらのあおりを受け、輸出量は547万トン(同0.5%減)と前月の増加予測から一転して減少すると見込まれる。

砂糖600万トンの輸出目標、達成はかなり厳しい状況
 インド政府は、COVID-19の拡大防止のため3月25日から21日間にわたる全国的な都市封鎖に踏み切った。これに伴い物流が滞り、製糖業者ではろ過の工程で用いられる石灰などの資材が調達しにくくなっており、砂糖生産の調整または縮小の動きが出ている。また、港湾業者においては、多くの従業員が出社できず人手不足に陥っており、貨物の船積み作業に遅延が生じたり、船舶の運航を取り止めたりする事例が相次いでいる。

 インドネシアでは、国内の砂糖需要の増加を背景に6月までにインドから合計13万トン輸入する計画を示していたが、インドの現状を踏まえ、輸入業者の多くが輸入相手国をタイもしくは豪州に切り替えることを検討し始めている。

 これらにより、2019/20年度にインド政府が定めた「砂糖輸出量600トン」の目標達成はかなり厳しい状況となっている。
表3
(参考)インド
中国
2019/20年度、輸入量はかなりの程度減少する見込み
 2019/20年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は118万ヘクタール(前年度比3.5%減)とやや減少し、天候不順で停滞していたサトウキビの生育状況に回復の兆しが見られるものの、収穫面積の減少による影響を相殺しきれず、サトウキビ生産量は7769万トン(同1.1%減)とわずかに減少すると見込まれる(表4)。てん菜の主産地である内モンゴル自治区でヨトウムシなどによる害虫被害が発生したことから、てん菜の収穫面積は21万ヘクタール(同12.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。生育期間を通じておおむね天候に恵まれ、てん菜の根中糖分は前年度を上回って推移しているものの、収穫面積の減少分を補うに至らず、てん菜生産量は1090万トン(同6.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 これに伴い、砂糖生産量は1103万トン(同5.2%減)とやや減少し、消費量の減少に伴い輸入量は449万トン(同7.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

中国農業農村部、新型コロナウイルス感染症の砂糖需要への影響なしとの見方
 中国農業農村部(日本の農林水産省に相当する政府機関)は4月9日、2019/20年度の砂糖の需給見通しを公表した。砂糖生産量は前年度比3.3%減と予想し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生する前の11月時点と比べ3ポイント下方修正した(表5)。要因として、COVID-19の拡大により物流が混乱し、製糖工場の一部で操業停止を余儀なくされたことなどを挙げた。



 一方、国内の各都市で外出を厳しく制限し、飲食店の営業休止などが行われてきたものの、同部では砂糖消費量について、11月時点と変わらず横ばいで推移すると予測している。また、輸入量も同6.2%減の従来予測を据え置いている。砂糖生産量の減少によって砂糖の需給ギャップはさらに広がるとみられる。

 なお、中国糖業協会によると、2019年10月から翌3月までの全国の砂糖販売量は前年同期比0.9%減の981万2000トンと横ばいで推移しており、こちらの統計でもCOVID-19による砂糖の需要面への影響はほとんど受けていないことが示された。
表4
(参考)中国
EU
2019/20年度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2019/20年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は162万ヘクタール(前年度比5.5%減)とやや減少すると見込まれる(表6)。てん菜生産量は、深刻な干ばつに見舞われた前年度からの反動で1億1459万トン(同3.3%増)とやや増加すると見込まれる。

 平年より高温・乾燥した状況が続いたEU最大の砂糖生産国フランスにおけるてん菜の根中糖分の低下などが響き、砂糖生産量は1821万トン(同0.2%減)と横ばいで推移すると見込まれる。生産量が消費量を下回ると予想されることから、輸出量は103万トン(同45.9%減)と大幅に減少すると見込まれる。

てん菜生産者団体、欧州委員会に救済措置を求める
 欧州てん菜生産者協会(CIBE)は4月7日、ホームページ上に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響」と題した報告書を公開した。この報告書の中でCIBEは、「EUの各都市で外出禁止など私権制限を伴う都市封鎖が実施されたことによって、砂糖の家庭消費が増加していると考えられるが、砂糖消費のかなりの割合を占める飲食店やホテルなどの業務用需要の落ち込みが著しく、マイナスの影響が出てきている」と指摘した。その影響度合いについて、業界関係者の話として「EUの砂糖消費量は70万トンまたは当初予測から4%減る」との見方を示した。

 また、砂糖の国際価格が大きく下落したことで、EU域内に安価な海外産の粗糖が大量に流入する恐れがあり、今後EU域内で生産されるてん菜を原料とする砂糖の適正な価格水準を維持することが難しくなるとみている。

 CIBEはこうした現状を踏まえ、欧州委員会に対し緊急輸入制限措置を含めた何らかの救済措置を早急に講じるよう求めた。

ポーランドの「砂糖税」、適用時期をめぐって混乱
 ポーランド政府が提出した、糖類を含む飲料に課税するいわゆる「砂糖税」の導入を盛り込んだ健康増進法案(注)は3月13日、野党が過半を占める上院で否決された。ただし、法案は下院で再可決される見通しで、大統領が署名すれば法律として成立する。

 こうした中、法律の適用時期をめぐって混乱が生じている。当初、2020年7月1日から適用される予定であったが、COVID-19の拡大による経済への影響を考慮し、同国政府はこの法案の適用時期を2021年まで延期する方針を示していた。しかし、現地報道によると、その方法について政府内で未だ本格的な議論がなされておらず、時間切れによって結局、7月1日から適用される可能性があるとしている。
 
 これに対して、飲料業界は「COVID-19の拡大で飲料需要が落ち込む中、新たな税負担が加わり、二重の打撃となる」と訴え、適用時期の延期を求める署名活動を展開するなど猛反発している。

(注)具体的な税額などの内容は、「砂糖の国際需給−4.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年3月時点予測)−」『砂糖類・でん粉情報』2020年4月号を参照。https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002177.html
表6
(参考)EU
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272