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低カロリー食品に対する女子大学生の意識

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最終更新日:2020年5月11日

低カロリー食品に対する女子大学生の意識

2020年5月

京都女子大学家政学部教授 門間 敬子

【要約】

 健康志向を反映して多くの低カロリー食品が市販されている。女子大学生は、低カロリー食品に対して約60%が「おいしい」「ダイエットに効果的」といったイメージを持っており、約30%が「好んで」「購入」していた。官能評価においては清涼飲料水では糖類の有無でおいしさおよび甘さに有意差はなかった。チョコレートでは甘味の少ないものを低カロリーと感じ、おいしさの数値が低かった。成分表示はあまり確認していないことも明らかになった。

はじめに

 肥満は生活習慣病との関連が大きく、中高年においては肥満の割合が増加している1)。肥満の原因として、運動不足とエネルギーの過剰摂取が考えられるが、食品のエネルギーを意識する人が多く、近年「カロリーオフ」「カロリーゼロ」などエネルギーの少なさを表示した食品(以下「低カロリー食品」という)が身近に市販されている。エネルギーおよび糖類を低減するために、加工食品では砂糖に代替してマルチトールやラクチトールなどの糖アルコールや甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなど)が用いられる。

 生活習慣病では肥満が問題となるのに対し、20歳代女性ではむしろ痩せの割合が高いことが問題となっているが、これまでの調査においても女子学生は男子学生に比べて食品のエネルギー量を意識している2)3)

 本稿では、市販されている低カロリー食品に対する女子大学生の意識調査および官能評価についての結果4)を紹介する。

1.低カロリー食品として認識されているのは、ゼリー、マヨネーズ、清涼飲料水およびチョコレート

 「カロリーゼロ」「カロリーオフ」「カロリー控えめ」の表示のある食品として思い浮かぶものを自由回答で答えてもらったところ、ゼリー、マヨネーズ、清涼飲料水、チョコレートおよびドレッシングが多かった(図1)。低カロリーや低糖類である旨がパッケージに明示されており、実際に店舗で見かけたり、テレビや雑誌で広告されているためであると考えられる。「低カロリー表示があるから食べる」食品としても同様の食品が挙げられた。

 チョコレートはカロリーが高いため食べるのを避ける食品として挙げられており、低カロリー表示があるから購入する対象となると考えられる。嗜好品であるゼリー、チョコレートおよび清涼飲料水と比較すると、マヨネーズおよびドレッシングは糖質よりも脂質が食品のエネルギー(カロリー)に大きく寄与すると考えられることから、本稿では菓子(飲料を含む)について述べる。
図1

2.低カロリーの菓子は脂質および糖質が少ないイメージおいしいと思う人約60%よく購入する人約25%

 女子大学生に低カロリーの菓子に対するイメージについて尋ね、「あてはまる」「ややあてはまる」「ややあてはまらない」「あてはまらない」から選んでもらった結果が図2である。

 低カロリーの菓子で「あてはまる」が最も多かったのは、「脂質が少ない」次に「糖質が少ない」で、「あてはまる」と「ややあてはまる」を合わせると約75%が脂質および糖質が少ないというイメージを持っていた。脂質は1グラム当たり9キロカロリーと糖質およびタンパク質(1グラム当たり4キロカロリー)よりもエネルギーが高いこと、また糖質は主にエネルギーになる栄養素であることが知られているためと考えられる。「ダイエットに効果的」と考える人も多かった。

 脂質、糖質は摂りすぎるとエネルギーが過多となり肥満につながるが、身体が必要とする栄養素であることから「おいしい」と感じることも知られている。それらの栄養素が少ないと考えられる低カロリーの菓子に対して「おいしい」と思う人(「あてはまる」と「ややあてはまる」)は60%以上であった。「満足感を感じる」「健康に良いと思う」人はやや減って50%以下となった。これは「安全性が高い」の数値が低くなることとも関連していると考えられる。低カロリー食品を「好んでいる」人は30%超、「よく購入する」人は25%程度であった。クロス分析の結果、「よく購入する」人は「おいしい」「好んでいる」という人が多かった。(低カロリーでないものより)「食べる量が増える」は30%超であり、また彼女らは「成分表示を確認する」ことが少なかった。「成分表示を確認する」人は全体でも半数以下であったが、後述のように、例えば糖類ゼロであっても必ずしもカロリーゼロではない。低カロリーと思ってたくさん食べてしまうと総エネルギー摂取量は変わらないか増えてしまう可能性もある。
図2

3.官能評価―おいしさには甘さが影響する 低糖類および低カロリーでもおいしさはあまり変わらない

 低カロリー菓子を「おいしい」とイメージする人は半数を超えていたが、実際に味をどのように認識しているのかを調べるため、チョコレート、清涼飲料水を試料として女子大学生16人により官能評価を行った。それぞれの原材料のうちの甘味成分とエネルギーを表に示す。

 チョコレートはAおよびBがノーマルなミルクチョコレートで砂糖が原材料の中でも最も多い。Cはマルチトールの含有量が砂糖よりも多く、砂糖50%オフと表示されたものである。Dは甘味成分としてマルチトールのみが用いられ、Eは糖アルコールの他、甘味料(アスパルテーム、L-フェニルアラニン化合物、スクラロース)が添加された(食品表示法による)糖類ゼロのチョコレートである。

 パッケージを表示せず(糖類オフなどは分からない)に5段階で官能評価を行ったときの結果を図3に示す。チョコレートの官能評価においては、「甘い」が「おいしい」と「低カロリーと感じる」に影響を及ぼしていた。統計的にはDのみノーマルなミルクチョコレートA、Bよりも「おいしくない」という評価になった。またDは他の4つのチョコレートよりも「甘さ」が弱く、A、BおよびCよりも有意に「低カロリーと感じる」という結果になった。低糖類のチョコレートCおよびEは、ミルクチョコレートAおよびBとおいしさ、甘さに有意な差は見られなかった。またAおよびBでは「口どけの良さ」もおいしさの要因とするコメントがあった。

 清涼飲料水はFとGの2つの銘柄を用いた。F1およびG1は果糖ぶどう糖液糖および砂糖を含むノーマルな飲料である。F2は糖類の代わりに甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム)、G2は甘味料(アスパルテーム、L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムカリウム、スクラロース)を含み、どちらもエネルギーは0キロカロリーである。F1とF2ならびにG1とG2はそれぞれ見た目が同じであり、1または2のどちらかがカロリーが少ないということが官能評価の際にも推測できる試料であった。

 FおよびGはどちらも「おいしい」「甘い」「低カロリーと感じる」のいずれにおいても有意差は見られなかった。清涼飲料水は糖類あるいは甘味料と酸味料、香料が主な原材料であり、チョコレートよりも単純であるが、糖類と甘味料の差は示されない結果となった。さらにパッケージを表示して同様に官能評価を行った際にもゼロカロリーかどうかで有意な差は見られなかった。
表
図3

4.砂糖ゼロ、ノンシュガーなどの表示があってもゼロカロリーではない

 エネルギーや糖類の低減表示については、食品表示法による食品表示基準が定められている5)。食品表示法では糖類(糖、糖分およびシュガーも同じ意味で使われる)は、「甘味料に使われる炭水化物のうち、単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものに限る」と定められている。

 官能評価に用いたチョコレートはC:砂糖50%オフ、D:砂糖ゼロ、E:ノンシュガーとして糖類が少ないあるいは含まないことが商品名に示されている。パッケージを表示して官能評価を行ったところ、Dが他の4種よりも「おいしい」「甘い」の評価が低くなった。さらに「低カロリーと感じる」ではDがA、BおよびCに対して、またEがAおよびBに対して有意に大きな値を示した4)。Dでは砂糖ゼロ、Eではノンシュガーの文言が商品名にあることが影響していると考えられる。しかし、表に示すようにチョコレートの原材料には脂質も多く、実際のエネルギーは一般のミルクチョコレートよりも10%程度低いだけである。図2に示したように、成分表示を確認する人は半数以下であったが、今回の官能評価においては成分表示を確認した人はいなかった。甘みが少ないことで「低カロリー」と考えていたが、「砂糖ゼロ」は必ずしも「カロリーオフ」ではないことは認識されていなかった。これは女子大学生に限らず、多くの人が誤解しているのではないだろうか。

 本調査では、女子大学生は低カロリー食品に対して比較的好意的なイメージを持っており、官能評価においても低カロリー食品でおいしさの評価が下がったのは甘味の少ないチョコレートだけであった。清涼飲料水では差はなく、また糖類ゼロなどが表示されたパッケージを示しても変わらなかった。しかし、成分表示を見る人は少なく、清涼飲料水はエネルギーに大きな差があるが、チョコレートでは差は小さいことは認識されていなかった。

【参考文献】

1)「平成29年「国民健康・栄養調査」の結果」
〈https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html〉 (2020/4/10アクセス)
2)門間敬子(2011)「大学生・短大生の清涼飲料水に対する意識」『京都文教大学人間学部紀要 13』pp.1-11.
3)門間敬子(2013)「学生の菓子に対する意識」『京都女子大学生活福祉学科紀要 9』pp.19-26.
4)門間敬子、堂坂久瑠美、中西麻友(2019)「女子大学生の低カロリー食品に対する意識」『京都女子大学生活福祉学科紀要 14』pp.71-76.
5)「食品表示基準」
〈https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?openerCode=1&lawId=427M60000002010_20161001〉(2020/4/10アクセス)
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